出血性疾患の鑑別・出血性素因
                     ┏━ 減少 ━━━モ 産生障害 (再不貧・白血病)
                     ┃
                     ┃
           ┏ 減少 ━ 巨核球 ┫
           ┃         ┃       ┏モ 遺伝性 (May-Hegglin)
           ┃         ┃  正常 又は ┣モ 破壊亢進 (ITP,SLE)
           ┃         ┗━ 増加 ━━━╋モ 分布異常 (hypersplenism)
           ┃                 ┣モ 消費亢進 (DIC.TTP)
           ┃     出血 ┏モ 延長 ━┓  ┗モ 無効造血 (MDS)
出血傾向 ━ 血小板数 ╋ 正常 ━ 時間 ┫     ┃
           ┃       ┃     ┃
           ┃       ┃     ┃      ┏ 延長 ━モ von Willbrand
           ┃       ┃     ┗━━モ APTT ┫
           ┃       ┃            ┗ 正常 ━モ von Willbrand
           ┃       ┗ 正常 ━━┓             血小板機能異常
           ┃             ┃
           ┃          APTT  PT   TT
           ┗ 増加 ┓      ユ  〜  〜 ━モ 8・9・11・12 欠損症
               ┃      〜   ユ  〜 ━モ 7 欠損症
            血小板増加症    ユ  ユ  〜 ━モ 2・5・10・Vit K欠乏症
                      ユ  ユ  〜 ━モ Fibrinogen異常・DIC
                               ヘパリン投与
                       〜  〜  〜 ━モ 13欠損症
◇トロンボテスト
  VII・X・プロトロンビン (II因子) を反映

◇PT (プロトロンビン時間)
  VII・X・プロトロンビン・Vを反映

◇APTT (活性化部分トロンボプラスチン時間)
  IX を反映

◇出血傾向があればトロンボテスト (または PT) と APTT を併用する方が効
 率よく凝固因子の欠損を判別できる。

◇Ca (カルシウム) イオン (第IV 因子) は、たいていのトロンビン形成反応で
 必要。

◇γカルボキシグルタミン酸をもつ蛋白はビタミン K依存性凝固蛋白と言われ、
 ビタミンK なしに合成されると、Ca (カルシウム) と結合できず、正常に機
 能しない。
 ※ビタミン K依存性凝固蛋白
   II (プロトロンビン)・VII (プロコンバーチン)・IX (クリスマス因子)・
   X (スチュアート-プロワー因子)・プロテインC・プロテインS

◇出血時間
  Duke法:耳たぶに傷つけ 30秒毎に濾紙で血液を吸い取る (最初の血液斑
      が直径約 1cm になるよう切る)。止まるまでの時間を測定。
      正常では 1 〜 3分で止血。

◇凝固時間
  血液が体外に出て凝固するまでの時間が凝固時間。通常小試験管に採血し
  た血液 1ml を入れ、37.0度に静置、血液が流動性を失った時間が求める
  凝固 (凝血) 時間。正常は 5 〜 15分。凝固因子に高度障害があれば延長。








血液凝固機序
●内因性機序 (XII・XI・IX・IV・VIII・X・V・血小板第3 因子)
   │                ●外因性機序 (III・IV・VII・X・V)
   ↓                        ↓
 内因性プロトロンビン活性化物質     外因性プロトロンビン活性化物質
 (血液活性トロンボプラスチン (III因子))  (組織活性トロンボプラスチン (III因子))
   │                        │
    …………………………………………………………………
                ↓
   プロトロンビン (II因子) ――→ トロンビン
                   ↓
      フィブリノーゲン (I因子) ――→ 可溶性フィブリン
               第XIII因子 ―――→↓
                     不溶性フィブリン
※  I : フィブリノーゲン
II : プロトロンビン
III : トロンボプラスチン
IV : カルシウム (Ca)
V : labile factor,proaccelerin,Acglobulin
VI : (欠番)
VII : stable factor,SPCA (serum prothrombin conversion acceralator)
VIII : AHF-A (抗血友病因子ーA)
IX : AHF-B (抗血友病因子ーB、クリスマス)
X : スチュアート-プロワー因子
XI : PTA (pl. thromboplastic antecedent)
XII : Hageman factor
XIII : FSF (fibrin stabilizing factor)







線維素溶解系
  組織プロアクチベータ              血液プロアクチベータ
      ↓                       ↓
   組織アクチベータ    プラスミノーゲン    血液アクチベータ
      │           │           │
      └――――――――――→│←――――――――――┘
                  ↓
                プラスミン
                  ↓
            フィブリン ――→ フィブリン分解産物
※線維素溶解系が病的に亢進するとフィブリノーゲン・プロトロンビン・V・
 VII・VIII・IX 因子などを分解し血小板を破壊、一方血管内面の不溶性フィ
 ブリン薄膜を溶解し血管壁を脆弱にして出血傾向を来す。血中にフィブリン
 分解産物 (FDP) が増加。








血友病

  VIII・IX因子欠乏・伴性劣性・ 5-7/10万人
  紫斑・筋肉出血・関節出血・血尿・消化管出血
  抗ヒスタミン剤は安全 (特にタベジールは OK)
  パントテン酸カルシウムも OK
  ×アスピリン・○アセトアミノフェン・ポンタール・イブプロフェン








自己免疫性溶血性貧血

(1). "warm" form (IgG autoantibody)
  ◇30 〜 50歳代の女性に多い
  ◇脾腫あり
  ◇ステロイドが効く

(2). cold-agglutinin disease (IgM autoantibody)
  ◇60歳以上
  ◇脾腫をみることは少ない (B-cell lymphoma 又は CLL では脾腫をみ
   る)
   ※慢性寒冷凝集素症で脾腫がありその中に多発性に低吸収域があれば
    B細胞リンパ腫と確診して良い。
  ◇ステロイドが効かない








血栓性静脈炎・深部静脈血栓症

※血栓性静脈炎
  静脈に生じた炎症が血栓形成の原因になったもの

※静脈血栓症
  形成された血栓を主体とした病態
   (病理学的には血栓形成により血管壁には必ず二次的炎症所見をみる)

◇症状
 ○急性期
   患肢の腫脹・緊満感・疼痛、二次的動脈攣縮による皮膚蒼白、高度の腫
   脹による動脈血行障害
 ○慢性期
   浮腫、下肢倦怠感、皮膚色素沈着、静脈瘤、鬱血性下腿潰瘍

◇原因
 (1). 血流障害、長期臥床による静脈還流異常、脱水による血液濃縮
 (2). 血管壁障害
 (3). 凝固系異常
    手術侵襲による凝固亢進・線溶低下、凝固阻止因子の先天的欠乏
    抗リン脂質抗体症候群

◇治療
 (1). 外科的療法
    発症後数日以内なら外科的に完全摘出できる可能性あり。
 (2). 薬物療法 (血栓溶解療法)
  ○ウロキナーゼ 48万単位を 1時間で静脈内投与、(ウロキナーゼによる一
   過性凝固亢進を防止するためヘパリン1万単位の併用投与)
  ○その他
   t-PA や pro-UK の治験あり

※脳出血・クモ膜下出血手術後に深部静脈血栓症を伴うことあり。しかし上記
 薬物療法 (血栓溶解療法) は行ってはならない。

※肺塞栓症に注意 (下腿を中心とした末梢型の閉塞に注意)
 症状:患肢の腫脹の急速な減少、胸痛、呼吸困難、チアノーゼ、ショック








免疫グロブリン異常症

(1). 多クローン性免疫グロブリン異常
  I. 増加症
  1. 感染症
    HBV・HCV・HIV・cytomegalovirus 等ウイルス、結核・ライ、梅
    毒、カンジダ・アスペルギルス・クリプトコッカス、カラアザール、
    リーシュマニア・トリパノソーマ etc

  2.ヒト・アジュバント病 (珪肺・乳房形成後)、サルコイドーシス等

  3. 膠原病、自己免疫疾患

  4. 肝疾患
    慢性活動性肝炎、自己免疫性肝炎、肝硬変等

  5. (類) 腫瘍性疾患
    IBL、AILD、Castleman リンパ腫、IPL、サルコイドーシス、リンパ
    腫、CLL、単球性白血病

  6. その他
    糖尿病、火傷の回復期、癌等


 II. 減少症
  1. 原発性免疫不全症
    X染色体性無γ-gl血症、高IgM症候群、IgH鎖遺伝子欠失症、κ鎖欠
    損症、IgA単独欠損症、IgGサブクラス欠損症、乳児一過性γーgl血症、
    重症複合免疫不全症、ADA欠損症、細網異形成症

  2. 続発性Ig減少症
   1). Ig 産生低下
      リンパ腫、CLL、骨髄腫における正常Ig成分、免疫抑制剤や抗癌
      剤によるもの
   2). Ig の喪失
      ネフローゼ症候群、蛋白漏出性胃腸症、火傷、腹水、失血等
   3). Ig の異化亢進
      家族性本態性低蛋白血症、筋緊張性ジストロフィー、甲状腺機能
      亢進症、ステロイド投与等


(2). 単クローン性免疫グロブリン異常
 I. B細胞の単クローン性増殖
   1. 骨髄腫 (各種:くすぶり型・非活動性・顕性他)
     G > A > D > E

   2. 原発性マクログロブリン血症
     IgM (κ > λ) + BJP

   3. 寒冷凝集素症
     IgM (κ)

   4. M 蛋白を伴うリンパ増殖性疾患 (CLL・B-cellリンパ腫)

   5. H 鎖病 (γ、α、μ-鎖病)
     α > γ > μ + BJP

   6. AL (AH) アミロイドーシス
     λ > κBJP + IgG、A、M、D

   7. L鎖・H鎖沈着症
     λ < κBJP

   8. 本態性 B-J蛋白尿 (骨髄腫・アミロイドーシスを除く)
     BJP が 1g/d 以上

   9. 成人発症 Fanconi症候群
     κBJP

  10. 末梢神経症を伴うM蛋白血症
     IgG、IgA、BJP、IgM

  11. 骨硬化性骨髄腫 (POEMS・Castleman)
     IgG > IgA ( < 3g/dl)

  12. 単クローン性クリオグロブリン血症-I (IgG、IgA、IgM)
     II (IgG、IgM + 多クローン性Ig)

  13. 粘液水腫性苔癬
     IgG (λ > κ)

  14. 壊疽性膿皮症
     IgA

  15. Gaucher病
     IgG

  16. systemic capillary leak syndrome
     IgG (κ)

  17. 後天性 C1 esterase inhibitor 欠損症
      (IgG、IgM)


 II. B 細胞の反応性増殖に伴うもの
   1. 感染症

   2. 感作症 (CH・肝硬変・癌等)
     IgG、IgM、IgA

   3. 膠原病、自己免疫疾患
     IgA、IgM、IgG

   4. 原発性免疫不全症


III. 意義不明の M蛋白血症 (MGUS)
   1. 良性 M蛋白血症 (といわれている) 状態
     IgG、IgM、IgA、IgD

   2. 高齢者、健常人








多発性骨髄腫の発見・診断

  典 型 例 非 典 型 例
 (1). 貧血 (+) (+)
 (2). 胸・腰・背部痛 (+) (+)
 (3). 病的骨折 (+) (+)
 (4). γ-gl 増加 減少
 (5). TTT×ZTT 700 以上 0.4 以下
 (6). TTT/ZTT 6 以上  
 (7). M蛋白 (+)・目立つ (-) か目立たない
 (8). 血沈 亢進 正常

※骨髄腫がある時の三つのパターン
 (1). TTT・ZTT供に高値 : TTT*ZTT ≧ 700
 (2). TTT・ZTT が解離 : TTT/ZTT ≧ 6
 (3). TTT・ZTT供に低値 : TTT*ZTT ≦ 0.4 (BJ型・非分泌型)

※高齢者で何らかの骨病変があって、腰痛等運動器の痛みを訴え、貧血を伴う
 患者で骨粗鬆症の診断のもとに放置されている人の中に骨髄腫の場合がかな
 りあるかも 知れない。








貧血と鉄代謝

◇鉄の体内存在様式・輸送・貯蔵・鉄量の維持
 (1). 鉄の体内存在様式
  1. 鉄輸送、貯蔵蛋白として存在、蛋白と鉄が可逆的に結合
    トランスフェリン、フェリチン、ヘモジデリン

  2. 鉄含有蛋白、鉄部分が酸素と可逆的に結合
    ヘモグロビン、ミオグロビン

  3. 鉄含有酵素蛋白類、主として酸化還元反応に関与
    チトクローム酵素系、ミトコンドリアの電子伝達系、リボヌクレオチ
    ド還元酵素等

  4. その他
    酸素の活性化、細胞内の鉄量シグナルに関与する (?) 低分子鉄化合物
    これらは鉄酸素複合体、活性酸素・フリーラジカル産生の触媒として
    鉄毒性の発現に意味をもつ。


 (2). 鉄の体内分布 (70Kg の成人は体内に約4g の鉄を持っている)
    RBC:2500mg 、 骨髄赤芽球:100mg 、 肝細胞:1000mg 、
    血清:3mg 、 マクロファージ系 (脾臓・骨髄・肝臓):75mg 、
    筋肉・全細胞:150mg 、 (腸管:0.5 - 1.5mg、これは排泄に関与)

  ※トランスフェリン (Tf) とトランスフェリン受容体 (TfR)
   赤芽球は TfR を介して血清 Tf から鉄を赤芽球内に取り込む。Tf は血
   清と組織間隙にほぼ等量存在、血清のものは肝臓で産生、血清における
   寿命は 8日。
   pH が 5.5 付近で鉄は Tf から離れる、つまり鉄は TfR-Tf 複合体がエ
   ンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれエンドゾームとなる。
   次いでプロトンポンプによりエンドゾームの pH が 5.5 付近に下がると
   鉄は細胞内に遊離・放出される。細胞内に入る鉄量は細胞表面の TfR の
   数でコントロールされている。

  ※フェリチン
   水溶性蛋白であらゆる細胞に存在、役割は、細胞内の鉄を無毒性のもの
   として長期の鉄貯蔵をしている。
   血清にも少量のフェリチンが存在し体内鉄貯蔵量を反映。

  ※ヘモジデリン
   水に不溶性の蛋白で鉄含量が高い。鉄過剰症では細胞内に増加、プルシ
   アンブルー陽性で蛋白部分はフェリチン抗体に反応。


 (3). 鉄の排泄 : 特別な排泄機構は存在しない
   鉄の排泄は受動的で胃腸管の粘膜細胞の脱落 (60%)、皮膚 (30%)、尿
    (10%) から 排泄される。胆汁からの排泄は鉄過剰症では意味を持つ。
   運動時の汗には鉄が多いという報告がある。
   この様にして失われる鉄量は成人男子で 1mg/日 である。


 (4). 鉄の吸収 : 十二指腸で行われる
  ※吸収に関わる外部因子
    食物中の鉄含量、食物中の鉄の形態

  ※吸収に関わる内部因子
    *胃酸の量 (産生の強い胃内で三価鉄は水溶性となり、ムチンと結合し
    て十二指腸に運ばれる)
       *体内鉄貯蔵状態
       *骨髄での造血状態


◇体内の鉄状態を知るための検査 (特に小 (正) 球性・低 (正) 色素性貧血)
 (1). 血清フェリチン
    組織の鉄貯蔵状況を反映、貧血が明かでない時点で既に低下
  ※但し血清フェリチンは急性期蛋白の一つなので炎症があれば増加、また
   肝臓疾患でも増加する。

 (2). 血清鉄
    機能的な鉄を意味する。鉄欠乏性貧血・慢性疾患に伴う貧血で低下。
    労働に応じて低くなる傾向 (午前中高く、午後からは低い)

 (3). TIBC
    血清 Tf の結合し得る鉄の総量を示す、2/3 は通常不飽和のまま。
    鉄欠乏性貧血でかなり特異的に上昇

 (4). 血清 TfR
    赤芽球の造血状態を測定する特異的な方法。
    鉄欠乏性貧血で TfR は 2 〜 3倍に増加。
    慢性・急性炎症・肝炎では TfR は正常。








鉄欠乏性貧血の診断

 (1). 小球性色素性貧血

 (2). Fe低下

 (3). フェリチン低下
    血清フェリチン 12ng/ml 以下。
    フェリチンは貯蔵鉄量減少を反映し鉄欠乏性貧血では低く、症候性貧
    血では高いと言われる。

 (4). トランスフェリン上昇
    トランスフェリン飽和率 (Fe/TIBC ×100) : 16% 以下

※consealed
  小球性色素性貧血 ; Fe → ;フェリチン低下 ; Fe/TIBC↓

※鉄投与量の計算
  [((16-Hb) × 2.72 + 17) × BW] mg








慢性疾患に伴う貧血

  RA・Tbc・肺感染症・SLE・AIDS・真菌症・癌腫・リンパ腫・白血病等
  血清鉄低値・血清フェリチン高値・TIBC 低下

◇骨粗鬆症と Hb
  正常対照 = 12.6 ± 1.15 (g/dl) 、骨粗鬆症 = 11.4 ± 1.2 (g/dl)

◇胃粘膜萎縮と Hb
  正常対照 = 13.5 ± 0.3 (g/dl) 、胃粘膜萎縮 = 12.6 ± 0.2 (g/dl)

◇BUN・Cr と Hb は負の相関、T4 と Hb は正の相関をする。

◇老年者貧血の基礎疾患
    (東京都老人医療センター改変・悪性腫瘍は 1/4 〜 1/3 に存在)
  悪性腫瘍(25%) > 感染症(15%) > 骨折(10%) > 消化管出血 (悪性腫瘍を除
  く)(5%) > 血液疾患(5%) > 感染症以外の炎症性疾患(5%) > 腎疾患(5%) >
  肝硬変症(2%) > 甲状腺機能低下症(2%) > 消化管ポリープ(1%) > 痔(1%)
   > その他(24.0%:抗生剤・鎮痛剤・H2ブロッカー・アルドメット等)








溶血性貧血の診断

◇溶血性貧血とは赤血球が 平均120日の寿命より短期間で破壊し赤血球の産生
 がこれに追いつかず赤血球が不足した状態
 (1). 正球性正色素性貧血 (大球性のこともある)
 (2). 網赤血球の増加
 (3). 間接ビリルビン上昇 ( 但し肝臓のビリルビン処理が速やかであれば、間
    接ビリルビンが正常のこともある。)
 (4). 血清ハプトグロビンの低下・消失
 (5). 血清LDH 上昇 (アイソザイム I・II の上昇)

◇溶血性貧血の診断のフローチャート

        正球性正色素性貧血 (大球性のこともある)
                ヨ
            網赤血球の増加あり
                ヨ
             急性出血の有無
          ┏━━━━━┻━━━━━┓
          ヨ           ヨ
          なし           あり
          ┃           ┃
        溶血性貧血       出血後貧血
          ┃
        クームス試験
    ┏━━━━━┻━━━━━┓
    陽性          陰性
    ┃           ┃
  自己免疫性    HAM/sugar-water試験
  溶血性貧血   ┏━━━━━┻━━━━━┓
          陽性          陰性
          ┃           ┃
          ┃        遺伝性溶血性貧血
      発作性夜間血色素尿症   赤血球破砕性貧血







自己免疫性溶血性貧血

(1). "warm" form (IgG autoantibody)
 1. 30-50歳代の女性に多い

 2. 脾腫あり

 3. ステロイドが効く


(2). cold-agglutinin disease (IgM autoantibody)
 1. 60歳以上

 2. 脾腫をみることは少ない (B-cell lymphoma 又は CLL では脾腫をみる)
  ※慢性寒冷凝集素症で脾腫がありその中に多発性に低吸収域があれば B細
   胞リンパ腫と確診して良い。

 3. ステロイドが効かない








遺伝性球状赤血球症 (G6PD 異常症) に溶血を起こし得る薬剤

   確   実 可能性あり 疑わしい
 抗マラリア剤  primaquin
 pamaquine
 pentaquine
 chloroquine

 quinacrine
 quinidine
 サルファ剤  sulfanilamide
 sulfacetamide
 sulfapyridine
 sulfamethoxazole
 sulfametoxypyridazine
 sulfamidine

 sulfoxone
 sulfadiazine
 sulfameridine
 sulfisoxazole
 スルフォン剤  thiazolesulfone
 diaminodiaphenylsulphone
   
 ニトロフラゾン  nitrofurantoin    
 解熱剤  acetanilide    aminopyrine
 acetaminophen
 phenasetine
 aspirin
 その他  nalidixic acid
 naphthalene
 niridazole
 phenylhydrazine
 toluidine blue
 trinitritoluene
 methylene blue
 phenazopyridine
 chloramphenicol
 Vitamin K analogues





 PAS
 L-dopa
 Vitamin C
 dimercaprol
 doxorubicin
 probenecid









傍悪性腫瘍症候群

◇Paraneoplastic Pemphigus (1990、Anhalt)
 2/3 : 非ホジキンリンパ腫・白血病







骨髄異形成症候群 (MDS)

(1). 診断の手がかり
 1. 汎血球減少と多彩な血球形態異常を特徴とする慢性進行性の造血障害、
   30 〜 40% が経過中白血病に移行。

 2. 50才以降で原因不明の正球性または大球性の貧血あり、血小板減少や
   白血球減少を伴う場合 MDS を念頭におく。

 3. 末梢血
   汎血球減少・顆粒球の核奇形・顆粒球形成不全・巨大血小板

 4. 骨髄
   正 〜 過形成、特に赤芽球系過形成。鉄染色で環状鉄芽球を認める。
   小型巨核球の出現は特徴的

 5. 血液生化学
   LDH・間接ビリルビン上昇 (無効造血を反映)、鉄・フェリチンは正常 〜
   増加。VB12 や葉酸は低下しない。


(2). 鑑別診断
   再不貧・PNH・巨赤芽球正貧血 (悪性貧血等)・ITP・膠原病・脾機能亢
   進症・白血病・骨髄線維症・癌の骨転移。


(3). 病型分類
 1. 不応性貧血 (RA:refractory anemia)
   MDS の 30 〜 40%、血球減少が主体。
   血球形態異常が顕著でなければ再不貧との鑑別が難しい
   白血病への移行は 20%

 2. 環状鉄芽球を伴う不応性貧血 (RARS:RA with ring sideroblast)
   MDSの 10 〜 20%、原発性後天性鉄芽球性貧血にほぼ一致。
   骨髄に環状鉄芽球を認める。 (RA では認めない)
   白血病への移行は少ない、MDS では予後が一番良好。

 3. 芽球増加を伴う不応性貧血 (RAEB:RA with exess of blastblast)
   MDS の 20 〜 30%、MDS の中核。血球形態異常あり、芽球軽度増加。
   環状鉄芽球を認めることがある。
   白血病への移行は 40 〜 50%

 4. 慢性骨髄単球性白血病 (CMML:chronic myelomonocytic leukemia)
   MDSの 10 〜 20%、血球形態異常に加えて単球増加を伴う
   高齢の男性に多く肝脾腫を伴う。

5. 白血病への移行期にあるRAEB (RAEB-T:RAEB in transformation)
   RAEB と急性白血病の移行期に位置する。
   骨髄の芽球は 30% 未満でアウエル小体を認めることがある。
   男女差なく 50% 以上が白血病へ移行


(4). MDSの病態
 1. クローン性造血異常
   造血幹細胞のクローン性異常

 2. 無効造血
   骨髄での造血は活発だが血球分化の過程で異常

 3. 前白血病状態
   多段階発癌の過程をとる?








肺血栓塞栓症 (PTE・pulmonary thromboembolism)

(1). 症状
   呼吸困難・胸痛・頻脈・頻呼吸 (多呼吸)・・・ほぼ 90% に出現
   失神・発熱・咳・悪心・嘔吐・食欲不振
   深部静脈血栓症の合併 (腓腹筋の圧痛・下肢痛 (特に背屈時))


(2). 基礎疾患
   血液疾患を含む悪性腫瘍 (35%)、心弁膜症や心筋梗塞 (15%)、
   脳血管疾患 (10%) (基礎疾患不明:14%)

 A. 血栓傾向を呈する疾患と誘因
  1. 血流停滞
    長期臥床・妊娠・肥満・鬱血性心不全・右室梗塞・Kasabach-
    Meritt・各種カテーテル検査

  2. 血管壁の変化
    血栓性静脈炎・外傷・火傷・外科的処置・各種カテーテル検査
    膠原病 (ベーチェット・SLE 等)・Kasabach-Meritt・ホモチスチン
    尿症・血管壁プラスミノーゲンアクチベータ (t-PA) 放出障害

  3. 血液凝固線溶系異常
    悪性腫瘍・妊娠・薬物 (経口避妊薬・エストロゲン・L-asparaginase等)
   ○凝固抑制因子欠乏症
    アンチトロンビンIII (ATIII) 欠乏症
    ヘパリンコファクターII 欠乏症
    プロテインC (PC) 欠乏症
    プロテインS (PS) 欠乏症
    低プラスミノーゲン血症
    異常プラスミノーゲン血症
    プラスミンインヒビター増加症
    異常フィブリノーゲン血症
    鎌状貧血

  4. 原因不明
    原発性右房右室血栓症


 B.その他の塞栓子
  1. 脂肪塞栓

  2. 腫瘍塞栓

  3. 羊水塞栓

  4. 空気塞栓

  5. 敗血性塞栓
    三尖弁心内膜炎・骨盤静脈炎・二次性頚静脈炎・二次的深部静脈炎・
    下大静脈炎・痔静脈炎・ペースメーカーリード感染・透析シャント・
    長期 IVH

  6. 異物
    リンパ管造影様油性造影剤・砂糖・タルク・線糸注入・カテーテル断
    片・小銃弾・血栓性右心人工弁・シリコン注入・骨髄片・フィラリア
    ・ 外傷時脳組織片・包虫・虫卵・水銀


(3). 診断
  1. 胸部レ線
    あてにしない方がいい。肺野の透過性亢進に注意

  2. 血液
    hypoxemia を伴う hypocapnia (A-aDO2 の上昇)
    ビリルビン上昇・LDH 増加・WBC 増加、GOT 正常

  3. 心電図
    洞頻脈・V1 〜 3の T陰性化・V1 〜 2 の ST上昇が重要
    他 : RVH・RAD・右脚ブロック・肺性 P


(4). 治療
  1. 血栓溶解療法

  2. 抗凝固療法
   a. ヘパリン
     急性期には必ず 初回 5000単位を静注。
     以後維持量で 1 〜 2万単位/日 を 24時間で点滴。
     APTT が対照の 1.5 〜 2倍 になる様にする。10 〜 14 間投与
    ※ヘパリン自身は抗凝固活性は示さず、AT-III 存在下でのみ抗凝固
     活性を示す。 (AT-III が正常の 70% 以下となれば補充する)
   b. ワーファリン
     初回量は 10mg/日、トロンボテストを 10% 前後に保つ
     少なくとも 2 〜 3日はヘパリンと併用、維持量は 1 〜 5mg/日

  3. その他
     低分子ヘパリン、抗血小板療法等
   ※低分子ヘパリン
     抗Xa 阻害、半減期が長い。
     血小板機能の亢進作用が少ない。出血傾向を増悪させない。
     等の特徴あり。








播種性血管内凝固症候群 (DIC)

(1). DIC の診断基準 (厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究会.1988年)
   (※劇症肝炎の DIC の診断のは適用できない事に注意)
  I. 基礎疾患 あり
なし
(1点)
(0点)
 II. 臨床症状
 1). 出血症状 (注1) あり
なし
(1点)
(0点)
 2). 臓器症状 あり
なし
(1点)
(0点)
III. 検査成績
 1). 血清 FDP値 (μg/ml) 40 以上
20 以上 40未満
10 以上 20未満
10 未満
(3点)
(2点)
(1点)
(0点)
 2). 血小板数 (注2) 50000 以下
5万 より多く 8万以下
8万 より多く 12万以下
12万 より多い
(3点)
(2点)
(1点)
(0点)
 3). 血漿フィブリノーゲン (mg/dl) 100以下
100 より多く 150以下
150 より多い
(2点)
(1点)
(0点)
 4). PT時間、時間比 (測定値/正常対照値) 1.67 以上
1.25 以上 1.67 以下
1.25 を越える
(2点)
(1点)
(0点)

   ------------------------------------------------------------
 IV. 判定
  1). 7点 以上:DIC
    6点   :DIC の疑い (注3)
    5点 以下:DIC の可能性少ない
  2). 白血病その他 注1 に該当する疾患
    4点 以上:DIC
    3点   :DIC の疑い (注3)
    2点 以下:DIC の可能性少ない
   ------------------------------------------------------------


  V. 診断のための補助的検査成績、所見
  1). 可溶性フィブリンモノマー陽性
  2). D-D ダイマーの高値
  3). トロンビン・アンチトロンビンIII 複合体の高値
  4). プラスミン・αプラスミンインヒビター複合体の高値
  5). 病態の進展に伴う得点の増加傾向、特に血小板・フィブリノーゲンの
    減少、FDPの急激な増加。
  6). 抗凝固療法による改善


 VI. 注1:白血病及び類縁疾患、再不貧、抗腫瘍剤投与後など骨髄巨核球減少
      著明で高度の血小板減少を見る場合は、血小板数・出血症状の項を
      0点として判定は【IV-2). 】に従う

   注2:基礎疾患が肝疾患の場合は以下の通り
     a. 肝硬変及びそれに近い慢性肝炎では総得点から 3点減点した上で
       【IV-1). 】を適用。
     b. 劇症肝炎と上記肝疾患を除く肝疾患では本診断基準をそのまま適用。

   注3:DIC の疑われる患者で V (診断のための補助的検査成績、所見) の
      うち2項目以上満たせば DIC と診断


VII. 除外規定
  1). 本診断基準は新生児、産科領域の DIC の診断のは適用しない。
  2). 本診断基準は劇症肝炎の DIC の診断のは適用しない。


(2). DIC 準備状態の診断基準 (厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究会.1988年)
 ※DIC と推測される状態ながら点数不足のため診断出来ない症例でも、下記
  の診断項目のうち 3項目以上を満足すれば DIC 準備状態と確診する。

 1). 組織因子 (TF) 活性陽性

 2). フィブリンモノマーテスト陽性

 3). フィブリノペプチドA 高値 (2.0pmol/ml 以上)

 4). トロンビン・アンチトロンビンIII 複合体の高値 (4.0μg/ml 以上)

 5). Bβ15-42 高値 (1.0pmol/ml 以上)

 6). プラスミン・αプラスミンインヒビター複合体の高値 (1.0μg/ml 以上)

 7). D-D ダイマーの高値 (1倍希釈以上) (3.0μg/ml 以上)

 8). アンチトロンビンIII が 60% 以下 (但し VII. 除外規定を適用)

 9). 病態の進展に伴う得点の増加傾向、特に血小板・フィブリノーゲンの急
   な減少、FDP の急激な増加。

10). ヘパリン投与によるスコアの改善、ないし 1). 〜 9). 項目の改善や正常化。

11). TEG の変化 (詳細は略す)

12). プラスチック試験管による PTT の短縮


(3). DIC の治療の概略
  I. 基礎疾患の治療

 II. 抗凝固療法
  (1). ヘパリン
   ・通常のヘパリン (未分画ヘパリン)
     10-15U/Kg/時 で持続点滴。
   ・低分子ヘパリン (ダルテパリン・フラグミン)
     75IU/Kg/日 で持続点滴。
   ※ヘパリン自身は抗凝固活性は示さず、AT-III 存在下でのみ抗凝固活
    性を示す。 (AT-III が正常の 70% 以下となれば補充する。アンスロ
    ビンP)

  (2). 合成蛋白分解酵素阻害剤
   a. FOY (メシル酸ガベキサート)
     抗プラスミン作用あり線溶亢進の著しい DIC に有効、血管炎を起こ
     し易く中心静脈カテから、20-30mg/Kg/日 持続投与。
   b. FUT (メシル酸ナファモスタット)
     抗IIa 作用が FOY の 10倍。
     高K 血症に注意。0.06-0.2mg/Kg/時 で持続点滴。

III. 補充療法
   先ずは抗凝固療法に徹し、各種マーカーを測定。改善の兆しがあれば、
   不足している諸因子を積極的に補充する。








深部静脈血栓症の臨床的診断 (試案)

1. 大症状 (Major points)
 a. active cancer (治療中、治療後 6か月以内、緩和治療中)。

 b. 下腿 (leg) または足 (foot) の麻痺・不全麻痺及び石膏で糊付けした様な
   動きにくさの存在。

 c. 最近 3日以上仰臥位、又は 4週間以内に行われた大手術。及びその両方。

 d. 深部静脈系の経路にあたる部分の限局性の圧痛。

 e. 太腿 (thigh) やふくらはぎ (calf) の腫大 (測定の必要あり)。

 f. ふくらはぎの腫大は症状のないときと比べて 3cm 以上腫大 (脛骨突出部
   より10cm 下部周囲径とする。)

 g. 深部静脈血栓症の強い家族歴あり。 (一親等以内に二人以上存在)


2. 小症状 (Minor points)
 a. 症状のある下腿 (leg) に生じた 60日以内の外傷の既往。

 b. 症状のある下腿 (leg) の一側性の pitting edema 。

 c. 症状のある下腿 (leg) に一側性に生じた、拡張した表在静脈の存在。

 d. 症状発現前 6か月以内の入院治療の既往歴。

 e. 紅斑。


※診断基準
(1). 可能性が大きい
 a. 大症状 (Major points) が 3つ以上で他に適当な診断ができない時。

 b. 大症状 (Major points) が 2つ以上かつ小症状 (Minor points) が 2つ以
   上で他に適当な病名がない時。


(2). 可能性が少ない
 a. 大症状 (Major points) が 1つ、かつ小症状 (Minor points) が 2つ以上
   でも、他に適当な確定診断ができている時。

 b. 大症状 (Major points) が 1つ、かつ小症状 (Minor points) が 1つ以上
   で他に適当な病名がない時。

 c. 大症状 (Major points) は 0 で、かつ小症状 (Minor points) が 3つ以上
   でも、他に適当な確定診断ができている時。

 d. 大症状 (Major points) は 0 で、かつ小症状 (Minor points) が 2つ以上
   で他に適当な病名がない時。


(3). 上記以外の criteria に入る場合はやや可能性 (intermediate probability) あり。








先天性血小板機能異常症の分類

A.分類 (1):機能レベルでの分類
 1. 粘着障害
  1). von Willbrand 病
  2). Bernard-Soulier 症候群
  3). コラーゲン粘着異常症

 2. 凝集障害
  1). 血小板無力症 (Glanzmann 病)
  2). 無フィブリノーゲン血症

 3. 放出障害
  1). Storage pool 病 (SPD):
   a). δ-SPD
   b). α-SPD (gray platelet 症候群)
   c). α, δ-SPD

  2)放出機能異常症:
   a). アラキドン酸代謝異常症
   b). 原発性放出異常症

 4. 血小板凝固活性障害
  1). Scott 症候群
  2). 血小板第V因子異常症


B.分類 (2). :分子レベルでの解析
 1. 糖蛋白 (GP)異常症
  1). GPIIb/IIIa (αIIb/β3;CD41/CD61)
     血小板無力症 (Glanzmann 病)
  2). GPIb (CD42b,c)、IX (CD42a)、V
     Bernard-Soulier 症候群 (BSS)
  3). GPIb (CD42b,c)
     血小板型 von Willbrand 病
  4). GPIa/IIa (α2β1;VLA-2;CD49b/CD29)
     コラーゲン粘着異常症
  5). GPIV (CD36)
  6). GPVI
     コラーゲン粘着・凝集異常症

 2. 顆粒異常症 (Storage pool病 (SPD))
  a). δ-SPD
  b). α-SPD (gray platelet 症候群)
  c). α,δ-SPD

 3. 刺激伝達/放出機構異常症
  1). アラキドン酸代謝異常症 (PLA2 異常症、COX 欠損症、TXS 欠損症)
  2). TXA2 受容体異常症
  3). その他
    Ca2 + 移動・利用障害、PLC 欠損症、機能蛋白 (20kD、47kD) 燐酸化障害等

 4. 血小板凝固活性障害
  1). Scott 症候群
  2). 血小板 第V因子分子異常症 (Quebec)


 (注釈)
   PLA2 : phosphlipase A2
   COX : cyclo-oxygenase
   TXS : thromboxane synthetase
   PLC : phosphlipase C






再生不良性貧血の診断基準

 1.再生不良性貧血では一般臨床所見として貧血、出血傾向、時に発熱をみ
  る。

 2.末梢血において汎血球減少症を認める。
  注1.汎血球減少症とは成人でRBC、男400×10000/μl未満、女350×
    10000/μl未満、WBC4000/μl未満、血小板数10×10000/μl未
    満の状態を指している。
  注2.小児の場合は成人女性に準じる、

 3.汎血球減少の原因となる他の疾患を認めない。他の原因疾患とはleukem-
  ia、MDS、myelofibrosis、癌の骨転移、myeloma、Banti症候群、
  lymphoma、感染症をいう。

 4.汎血球減少症に下記のような検査成績が加われば診断の確実性が増加す
  る。
  1).末梢血相対的リンパ球の増加
  2).末梢血の網赤血球絶対数が正常より増加していない(絶対数=赤血球数
    ×%)
  3).骨髄穿刺所見で、細胞数が原則として減少するが、減少がみられない場
    合でも巨核球の減少とリンパ球比率の増加を認める。
  4).骨髄生検所見で、造血細胞の減少
  5).血清鉄値の上昇と不飽和鉄結合能の低下
  6).放射性鉄の血漿中からの消失時間 (PID) の延長と赤血球交替率 (RIT)
    の低下

 5.診断に際しては、先ず 1. 2. によって再生不良性貧血を疑い、3. によって
  他の疾患を除外し、4. によってさらに診断が確実なものとなる。しかしな
  がら 4. の所見がすべてそろっていなければ診断ができないことはなく、
  治療に対する反応を含めた経過の観察によって確定診断に到達する。






骨髄異形成症候(myelodysplastic syndrome (MDS) 、不応性貧血)の診断基準

 1.慢性の貧血を主とするが、時に出血傾向や発熱あり。

 2.末梢血の2〜3血球減少、原則として正〜過形成の骨髄。末梢血や骨髄の
  血球異形成的形態異常*を呈す。
  * 赤血球系:巨赤芽球様変化、多核の巨大赤芽球
   顆粒球系:過分葉核の大型好中球、好中球核の低分葉、好中球顆粒の減
        少など
   血小板系:円形分離多核の巨核球、微小巨核球、巨大血小板など

 3.血小板減少の原因となる他疾患を認めない
  再生不良性貧血、ITP、myelofibrosis、悪性貧血、膠原病、肝硬変(脾
  機能亢進症)、癌の骨髄転移、myeloma、lymphoma、感染症など。骨
  髄損傷を伴う放射線治療や抗腫瘍剤投与歴を有する場合は原発症例とは取
  り扱わない。

 4.下記の検査成績が加われば診断の補助となる。
  1).骨髄細胞の染色体異常
  2).骨髄細胞の細胞化学的異常
    PAS陽性赤芽球、ペルオキシダーゼ陰性好中球好中球ALP活性低下
  3).血清鉄値の上昇とUIBCの低下、血清フェリチンの増加
  4).放射性鉄の血漿中からの消失時間 (PID) 短縮と赤血球鉄利用率 (RCU)
    の低下

 5.まず 1. 2. によって骨髄異形成症候群(不応性貧血)を疑い、3. によって
  さらに診断を確実なものとする。しかし 4. の所見がすべて揃っていなけ
  れば診断できないことはなく慢性かつ治療難反応性の経過の観察によって
  確定診断に適する。







骨髄異形成症候(myelodysplastic syndrome(MDS))の国際予後判定スコアリング

・骨髄芽球比率 評 価
 5% 以下
 5〜10%
 11〜20%
 21〜30%
0.0
0.5
1.5
2.0
・細胞遺伝検査(染色体)
 良い(正常核型、-Y、5q-、20q-)
 中間(良いと悪いを除く他の染色体異常)
 悪い(複雑型(3個以上の染色体異常)、
 第7染色体の異常)
0.0
0.5
1.0
・血球減少(好中球数<1800、Hb濃度<10g/dl、血小板数<10万)
 0 または 1系統血球減少
 2 または 3系統血球減少
0.0
0.5
・危険度 合計点
 low
 intermediate-1
 intermediate-2
 high
0
0.5〜1.0
1.5〜2.0
2.0






慢性骨髄性白血病のインターフェロン療法時の予後スコア(Euroスコア)

●予後スコア
   ={06666 × 年齢* + 0.0420 × 脾臓サイズ(cm)
     +0.0584 × 芽球(%)十 0.0413 × 好酸球(%)
     +0.2039 × 好塩基球** + 1.0956 × 血小板数***} × 1000
    
     *年 齢 :50歳未満=0  50歳以上=1
    **好塩基球:末梢血好塩基球3%未満=0  3%以上=1
   ***血小板数:150万未満=0  150万以上=1

●判定 予後スコア 5年生存率
----------------------------------------------------
low risk 780以下  76%
intermediate risk 780〜1480  55%
high risk 1481以上  25%
----------------------------------------------------






新生児の血小板増加の病態

  1. 急性炎症(例えば感染による)
  2. 急性失血
  3. 栄養に関連した状態
    ・鉄欠乏
    ・ビタミンE欠乏
    ・脂肪輸注にともなう高栄養状態
  4. 無脾症
  5. 一過性骨髄増殖性疾患
  6. 神経芽細胞腫
  7. 母親の妊娠中の物質(薬剤など)への耽溺(substance abuse)






新生児の血小板減少症の原因

  1. 母親の抗血小板抗体
    ・同種免疫性血小板減少症(ヒト抗血小板抗体)
    ・ITP
    ・SLE
    ・薬剤誘発性抗血小板抗体
  2. 先天性異常
    ・檮骨欠損にともなう血小板減少症
    ・カサバッハ・メリット症候群(巨大血管腫)
    ・先天性白血病
  3. 代謝性疾患
    ・メチルマロン酸血症
    ・Ketotic glycinemia
    ・イソヴァレリン酸血症(Isovalericasidemia)
    ・Holocarboxylase synthetase deficiency
  4. その他遺伝性疾患(一部選択)
    ・ファンコニー貧血
    ・Wiskott-ALdrich syndrome
    ・Trisomy 13、18 or 21
  5. 感染症
    ・細菌性敗血症
    ・子宮内ウイルス感染症またはトキソプラスマ感染症
    ・先天性梅毒

       




溶血性貧血の原因

  1. 内因性(Intracorpuscular=red cell abnormalities)
    1)酵素欠損(G-6-PD 欠損や他の多くの疾患)
    2)Hb異常(鎌状赤血球症、サラセミア、Hb-H病など)
    3)赤血球の膜異常
     ・遺伝性楕円赤血球症
     ・発作性夜間血色素尿症
     ・刺細胞(Spur-cell)性貧血
  2. 外因性(Extracorpuscular)
    1)脾機能亢進症
    2)抗体関連疾患
     ・免疫関連
     ・不適合輸血
     ・母胎血液型不適合
     ・温熱抗体
     ・寒冷反応抗体
    3)感染症
     ・細菌性(バルトネラ、クロストリジウム、チフス、コレラなど)
     ・原虫(マラリア、トキソプラスマ、リーシュマニア、
      トリパノソーマなど)
  3. 薬物
  4. 微小血管性疾患
    1)播種性血管内凝固症候群
    2)溶血性尿毒症性症候群
    3)血栓性血小板減少性紫斑病
  5. 毒物






Wright-Giemsa染色で赤血球内に認められる好塩基性封入体

  1. 核遺残組織:Howell-Jolly body
  2. 含鉄凝集素:Pappenheimer bodies
  3. リボ核酸:好塩基性物質の点在
  4. 紡錘体(mitotic spindle)遺残物:Cabot's ring
  5. 細菌
  6. Bartonella bacilliformis
  7. Tropheryma whippelii
  8. Grahamella species
  9. Intracellular parasites
  10. Plasmodium species
  11. Babesia species






静脈血栓塞栓症の危険因子

  1. 40歳を越える年齢
  2. 静脈血栓塞栓症の既往あり
  3. 30分を越える麻酔を必要とする手術
  4. 長期間の動きのない拘束(immobilization、寝たきりなど)
  5. 脳血管の事故(accident)
  6. うっ血性心不全
  7. 骨盤、大腿骨、脛骨骨折
  8. 肥満
  9. 妊娠あるいは最近の分娩
  10. エストロゲン治療
  11. 炎症性腸疾患
  12. 遺伝的あるいは後天性の血栓増加症(thrombophilia)
    ・アンチトロンビン-III 欠乏症
    ・蛋白-C 欠乏症
    ・蛋白-S 欠乏症
    ・プロトロンビン G20210A 変異(mutation)
    ・第V因子Leiden
    ・抗カルディオリピン抗体症候群
    ・ループス抗凝集素(lupus anticoaglant)