慢性関節リウマチ

(1). 一般的な知識の抜粋

◇メソトレキセートが効かないか効果が薄い患者にサイクロスポリン (2.5 〜
 5.0mg/Kg) を併用して効果があった。副作用はメソトレキセート単独の場
 合の副作用より増加する事はなかった。

◇初期の活動性慢性関節リウマチに一般的治療の他にプレドニゾロン(7.5mg/日) を
 2年間投与した。その結果レ線的変化を押さえる事ができた。

◇メトトレキセート間欠投与法
 メトトレキセート:葉酸拮抗剤、DNA 合成期の細胞増殖抑制
 ※投与法:低用量パルス療法
  ・MTT (1T = 2.5mg) を週1回、最初は12時間おきに 2回経口投与。
  ・無効例では 1T/週 ずつ増量。
  ・最大の効果は 3か月で現れる、但し数週で関節炎の軽減が見られる。
  ・副作用:胃腸障害 (30%)・口内炎・頭痛・眩暈・血液障害・間質性肺
       炎・肝障害
  ・妊娠には禁忌

※Larsen による慢性関節リウマチのレ線学的評価
 Grade0 : 正常
 Grade1 : 軽度異常;軟部腫脹・関節周囲骨粗鬆化・軽度関節裂隙狭小
 Grade2 : 明確な早期病変;小びらんまたは明かな関節裂隙狭小
 Grade3 : 中等度破壊性病変;びらん及び関節裂隙狭小
 Grade4 : 高度破壊性病変;骨変形
 Grade5 : ムチランス型病変;関節面の消失


(2). 慢性関節リウマチ患者の生命予後に関する合併症。
 1. 関節病変
   環軸関節亜脱臼・輪状披裂関節病変

 2. 関節外病変
   肺線維症・間質性肺炎
   収縮性心膜炎
   アミロイドーシス

 3. 慢性関節リウマチに多い一般的病変
   感染症・心筋梗塞・脳梗塞・胃潰瘍・十二指腸潰瘍

 4. 薬剤の関与?
   造血器疾患・間質性肺炎・胃潰瘍


(3). 早期 RA診断基準
 1. 1W 以上続く朝のこわばり (15分以上)
 2. 1W 以上続く3つ以上の関節域の腫脹
 3. 1W 以上続く手関節・MCP・PIP、足関節または MCT の腫脹
 4. 対称性腫脹
 5. RA因子陽性
 6. 手または足のX線変化。軟部組織紡錘状腫脹と骨粗鬆症または骨びらん
   (以上の 6項目中 4項目以上あてはまれば RA と診断してよい)
 ※除外項目:SLE・MCTD・AS・Behcet・乾癬性関節炎


(4). 抗リウマチ薬 (DMARD) の副作用
 1. シオゾール
   皮疹・口内炎・ネフローゼ症候群・間質性肺炎・再生不良性貧血・肝障
   害

 2. オーラノフィン (リドーラ)
   皮疹・口内炎・胃腸障害・肝障害・腎障害・血液障害

 3. D-ペニシラミン (メタルカプターゼ)
   過敏症状・ネフローゼ症候群・白血球減少・肝障害・視神経炎・自己免
   疫疾患の合併 (SLE・多発性筋炎・MG)

 4. ブシラミン (リマチル)
   過敏症状・ネフローゼ症候群・白血球減少・肝障害

 5. ロベンザリット (カルフェニール)
   肝障害・腎障害

 6. アクタリット (オークル・モーバー)
   胃腸障害・肝障害・腎障害

 7. salazosulfapyridine (アザルフィジン)
   皮疹 (光線過敏症)・胃腸障害・肝障害・白血球減少

 8. ミゾリビン
   肝障害・腎障害・血液障害・代謝異常 (高血糖・高尿酸)

 9. MTT
   胃腸障害・肝障害 (肝繊維症)・間質性肺炎・骨髄抑制

※a. 3関節以上の腫脹
 b. 対称性関節腫脹
 c. PIP・MCP または手関節の腫脹
 d. 血沈 40mm/h 以上かつ CRP 1.0mm/dl 以上
 の 4項目のうち 3項目以上を 4W 以上にわたり満たせば DMARD を使用する








ベーチェット病について

(1). ユーラシア大陸を東西に伸びる北緯 30 〜 45度の帯状地域に多発

(2). 男:女 = 1:1.36 、寒冷地方に多い

(3). 罹病率は減少、不全型の相対的増加、女性患者の増加、症状の軽症化の傾
   向

(4). 全国患者数は約16750人、有病率は増加

(5). 罹病率は著しく低下して 0.75/10万 (年間1000人未満)

(6). 完全型は漸減し不全型が漸増、眼症状のないものが増えている。

(7). 女性は眼症状のない不全型が多く、眼症状のある不全型は男性に多い。

(8). 特殊型:腸管ベーチェット病 = 3.5%
      血管ベーチェット病 = 4.5%
      神経ベーチェット病 = 5.0% で従来と変わらない。

(9). 30% は症状安定、40% は活動性、眼症状をもつものは経過不良

(10). HLA-B51 の保有率は完全型 58.3% 、不全型 51.3% (若年発症男子は
   65.5%) 、ただし同一家系内発症は 2% 未満、発症の環境因子は不明、
   HLA-B51 は発症や経過に対し免疫系を介して特異な増幅効果を与えて
   いると考えられる。








原発性硬化性胆管炎

(1). 最初は殆ど無症状、血清 ALP 軽度上昇、トランスアミナーゼ軽度上昇

(2). 血清アルブミンも正常、進行すれば低下する。これに伴う様に血清ビリル
  ビンが上昇

(3). r-Gl 上昇は 30% にみられる。IgM は 40 〜 50% に上昇

(4). perinuclear-ANCA と HLA-DRw52a は 65% に上昇

(5). 抗平滑筋抗体は 11% に上昇

(6). 抗核抗体は 6 〜 35% に上昇

(7). 抗ミトコンドリア抗体は陰性

(8). 体重減少・かゆみ・黄疸・全身倦怠は病気の進行をしめす。10 〜15%
  は、黄疸・発熱・寝汗・悪寒・かゆみ・右季肋部痛で発症し診断される。
  抗生剤は殆ど効果なし。








膠原病及び膠原病類縁疾患・RA (慢性関節リウマチ)

(1). RA
(2). SLE (平成6年度39000人)
(3). PSS
(4). PM・DM
(5). SS
(6). MCTD
 ◇SLE + PSS + PM・DM で血清中に抗 U1snRNP抗体が高力値

 ◇全国で 3242人 (1984年)、女性に圧倒的に多い (95%)
  ●共通所見
   レイノー現象 (97 〜 98%)、手指腫脹 (75 〜 92%)

  ●SLE様所見
   多発性関節炎 (80%)、白血球減少 (45%)、顔面紅斑 (30 〜 40%)、リ
   ンパ節腫脹 (30%)、血小板減少 (12 〜 14%)、心膜炎 (10 〜 15%)、
   胸膜炎 (11 〜 14%)

  ●PSS様所見
   手指硬化 (45 〜 60%)、肺拡張障害 (37%)、肺線維症 (27 〜 33%)、
   肺拘束障害 (25 〜 30%)、食道蠕動低下 (20 〜 25%)

  ●PM様所見
   筋力低下 (42%)、筋電図異常 (35%)、筋酵素異常 (35%)

  ●その他
   肺高血圧症 (4%)

 ※抗核抗体について
  (1). 一見正常に見える人に出現する確率は 5% 程度、将来膠原病になる人
     が含まれているのも確かだろう。

  (2). レーノー症状、乾燥症状、リウマチ性疾患、白血球数に注意
  (3). 対応抗体により疾患特異性が大きく変化。
    ●抗未変性DNA抗体 → SLE
    ●抗ヒストン抗体 (LE細胞) → SLE
    ●抗U1-RNP抗体 → MCTD、SLE、(強皮症)
    ●抗Scl-70抗体 → 強皮症
    ●抗セントロメア抗体 → 限局性皮膚硬化型強皮症、CREST症候群
    ●抗SS-B抗体 → シェーグレン症候群








膠原病の診断と病態把握に有用な検査所見

  RA SLE PSS DM・PM Sj MCTD PN WG AGA
 血沈亢進 ++ ++ ++ ++ ++ ++ ++ ++ ++
 CRP陽性 ++ +- +- + +- + ++ ++ ++
 溶血性貧血   +       +      
 白血球(リ)減少   ++     + ++      
 白血球増多 +           ++ ++ ++
 好酸球増多             +   ++
 血小板減少   +       +      
 血小板増多 +           ++ + +
 蛋白尿等   ++ +       ++ ++  
 CPK・GOT上昇     + ++   +      
   --------------------------------------------------------------------------------------
  RA SLE PSS DM・PM Sj MCTD PN WG AGA
自己抗体
 抗核抗体
                 
 蛍光抗体間接法 + ++ ++ + ++ ++      
 抗DNA抗体   ++ +-   +- +-      
 抗ヒ抗体(LE因子) +- ++ +- +- +- +      
 抗非ヒ核蛋白抗体                  
  抗U1-RNP抗体 +- + +- +- +- ++      
  抗Sm抗体   +              
  抗SS-A抗体   +     ++ +      
  抗SS-B抗体   +-     +        
  抗PCNA抗体   +              
  抗Ki抗体   +              
  抗scl-70抗体     +            
  抗セントロメア抗体     +   +-        
  抗Jo-1抗体       +          
  抗PL-7抗体       +          
  抗PL-12抗体       +          
  抗PM-1(Scl)抗体     + +          
  抗ku抗体     + +          
 抗核小体抗体   +- +            
リウマトイド因子(RA/RAPA) ++ + + + ++ +     +
Coombs抗体   +       +      
血小板抗体・PA-IgG   +       +      
ワ反応擬陽性   ++       +      
抗リン脂質抗体   ++       +      
抗好中球細胞質抗体                  
      cANCA               ++ +
      pANCA +-   +-       ++ + +
抗アシアロGM-1抗体   +              
抗リボゾーマルP抗体   +              
  RA SLE PSS DM・PM Sj MCTD PN WG AGA
   --------------------------------------------------------------------------------------
免疫血清       -       - -
 免疫複合体・Cryogl. + + +   + + +    
 血清低補体価 +- ++         +-