無症候性脳血管障害の病型

1. ラクナ梗塞
 a. small vessel disease
   穿通枝の細動脈硬化

 b. large vessel disease
   主幹動脈壁のアテローム硬化性プラークによる穿通枝の分枝口の閉塞

 c. microembolism
   心源性塞栓源やartery to artery由来の塞栓子が関与

 d. hemodynamic lacunae
   血行力学的に発症、血圧変動が関与


2. 皮質梗塞
  非優位側の皮質枝の閉塞。血栓性、塞栓性のどちらでもありうる。

3. 境界領域 (分水嶺) 梗塞
  起始部の狭窄に血行力学的機序で発症

4. PVH (脳室周囲高信号域、periventricular hyperintensity area) を含む
  白質病変

5. その他
  脳内小出血、脳動静脈奇形、静脈奇形








無症候性脳梗塞 (穿通枝領域のラクナ様梗塞・lacunar infarction)

 ※脳梗塞
  ●脳血栓症 (細小動脈硬化による、高血圧と密接に関連)
   日本に多い
  ●アテローム血栓塞栓性脳梗塞 (主幹動脈硬化にともなう)
   欧米に多い
  ●心原性脳塞栓症 (心房細動・弁膜疾患等)

(1). 頻度
   70才以上 (30%) > 60 〜 69才 (20%) > 50 〜 59才 (10%) >
    40 〜 49才 (6%)
   内科的脳ドック (概ね 30才以上) の16% に存在 (947名中)

(2). 危険因子
   高血圧群 (25%) >> 正常血圧群 (6%)
 ※高脂血症・たばこ・アルコールとの関連なし、糖尿病でやや高率。
 ※無症候性脳梗塞の大半は細小動脈硬化による脳血栓症に起因する。
 ※ある脳ドックでの検討では、高年齢 (66 +- 10)、高血圧、フィブリノー
  ゲンの高値 (398 +- 73) が有意差をもっていた。Lp(a) や高リン脂質抗
  体には有意差がなかった。

(3). 無症候性脳梗塞とその後の脳卒中の発症 (やはり高血圧と密接に関連)
   MRI 上異常を認めなかった群   (467名中) : 0.8%
   MRI 上無症候性脳梗塞のあった群 ( 87名中) : 6.0%
 ※脳卒中の内訳は脳梗塞が 8例、脳出血が 2例で、必ずしも脳梗塞ばかりで
  なく脳出血も怒り得ることを示している。これは高血圧性脳出血もラクナ
  様梗塞も穿通枝の細小動脈硬化に起因することから考えると不思議ではな
  い。

(4). 無症候性脳梗塞は治療すべきか?
   結論を先に言えば、穿通枝領域の梗塞予防にアスピリンはさほど有効と
   されていないし、かえって脳出血を起こり易くするという報告もあり、
   抗血小板療法をすぐに、安易に行うのは問題が多い。
 ※アスピリン・パナルジンによる抗血小板療法は、内頚動脈のアテローム硬
  化性病変に形成された血小板血栓が剥離して一過性に塞栓を起こす場合
   (TIAと言う) に確立された治療法であり、決して無症候性脳梗塞の予防的
  治療法ではないことを再認識する必要あり。

(5). 将来の脳卒中の予防
 a. 高血圧の厳重な管理
 b. 糖尿病・高脂血症・心電図の虚血性性変化があれば抗血小板療法を試み
   る。(アスピリン・パナルジン・セロクラール)
 c. T2 強調画像で 2mm 以下のごく小さい高信号域 T2 だけの場合、本当の
   梗塞である可能性は少なく、etat crible といわれる血管周囲腔の拡大の
   可能性が高いので抗血小板療法をする必要はない。

 ※心房細動に伴う脳塞栓症の予防
  ○高齢者・弁膜疾患・心筋梗塞・心不全・脳塞栓症の既往歴があれば危険
   性が高い。
  ○心合併症のない60歳以下は危険性が低い。
  ○比較的低用量 (PT で1.5 〜 2.7倍) でもワーファリンが効果あり。
  ○アスピリンの効果はワーファリンに及ばぬがプラセボより優れている
  ○本邦ではアスピリンの至適用量は 70 〜 200mg とされているが、小児
   用バファリン (アスピリンで 81mg) が多様されている。しかし、アメ
   リカでの二重盲検はアスピリンを 325mg 投与しており、小児用バファ
   リン1錠で十分かどうか不明








脳動脈瘤・クモ膜下出血・脳ドック

◇脳動脈瘤の発生頻度:0.2 〜 0.5% 、5mm 以上:5mm 未満 = 4:6
 ○脳動脈瘤数:200 〜 500人 (= 200 〜 250人/10万人位が妥当)
 ○脳動脈瘤破裂数:約40人 (= 10 〜 20人/10万人/年程度と推定)
 ○死亡数:約20人
  生存数:約20人 (後遺症あり:約10、なし:約10)
       ------------------------
 ○注意:脳血管造影による死亡:約0.2% 、後遺症あり (生存):0.65%

◇自然発症した脳動脈瘤破裂の転帰 (厚生省)
 死亡 (30%) 、後遺障害を残す (46%) 、完全社会復帰 (24%)

◇大田記念病院 (福山市、H8年) における脳ドックでの脳動脈瘤発見率
 ○脳動脈瘤数:26/2680人 (約1%)
 ○家族歴はあると思われる。特に polycystic kidney は要注意。








脳ドックにおける異常発見率の例

※脳血管障害等、山中湖ハイメディックでの 1077例 (41 〜 61歳)
1). 脳血管障害
 a. 脳梗塞 (82人、8%)
   ラクナ梗塞 :81人
   皮質枝梗塞 : 1人
 b. 大脳白質病変 :8人
 c. 脳血管狭窄・閉塞 : (48人、4.5%)
 d. 脳血管拡張 (脳動脈瘤の疑い) :(58人、5.4%)
 e. 陳旧性脳出血 :2人
 f. 脳動静脈奇形 :1人
 g. 慢性硬膜下血腫 :1人
 h. 海綿状血管種 :5人

2). 脳腫瘍 (3人、0.3%)
 a. 下垂体腺腫 :2人
 b. craniopharyngioma :1人

3). その他
 a. 透明中隔 cyst :38人
 b. 脳室拡大 :17人
 c. 松果体cyst :10人
 d. クモ膜cyst :5人
 e. その他のcyst :2人
 f. 脳萎縮 (中等度以上) :2人
 g. その他 (4人)
   小脳萎縮 :1人
   脳梁部分欠損 :1人
   外傷後遺症 :1人
   眼窩先端部腫瘍 :1人








末梢性顔面神経麻痺の治療
  
(小松正彦・長野県臼田町・佐久総合病院耳鼻咽喉科)

成人治療法 (1週間入院)
 (1). 入院1 〜 4日目。グリセオール1000ml にプレドニン200mg を混ぜて
    6時間で点滴

 (2). 入院 5 〜 6日目。グリセオール1000ml にプレドニン150mg を混ぜ
    て 6時間で点滴

 (3). 入院 7日目。グリセオール500ml にプレドニン100mg を混ぜて 6時
    間で点滴

 (4). 8日目以降。経口でプレドニンを 45mg → 30mg → 25mg → 20mg
    → ・・・と 5日単位でプレドニンを漸減しながら投与を終わる。

※日常出会う末梢性顔面神経麻痺はベル麻痺とハント症候群で全麻痺の 80%。

※Stennert.A:New concept in the treatment of Bell's palsy.Disorders
 of the Facial Nerve.Graham M.D,House WF(eds) ,pp.313-317,Raven
 Press,New York,1982.

※糖尿病患者や消化性潰瘍の患者でもステロイドの減量やインシュリン、抗潰
 瘍剤の投与で対処出来る。

※不全麻痺でも安心しない。完全麻痺でも多くは一か月以内に回復。








サルコイドーシス

※ACE (angiotensin-converting enzyme) の上昇疾患の鑑別
 ○若い人
 ○サルコイドーシス
 ○甲状腺機能亢進症
 ○糖尿病
 ○感染症
  イ. HIV 感染
  ロ. ライ病 (leprosy)・結核
  ハ. コクシジオイドマイコーシス (coccidioidomycosis)
    ヒストプラスモーシス (histoplasmosis)
 ○アミロイドーシス (amyloidosis)
 ○リンパ腫
 ○悪性組織球症
 ○PBC (primary biliary cirrhosis)
 ○その他
  ウイップル (Whipple's disease)・ゴーシェ (Gaucher's disease)

(1). 神経系の症状
 イ. aseptic meningitis
 ロ. single or multiple cranial neuropathies
 ハ. hydrochepalus
 ニ. hypothalamic lesions
 ホ. neuroendocrine abnormality
 ヘ. intraparenchymal mass lesions
 ト. multifocal changes in white matter
 チ. vasculopathy
 リ. spinal cord lesions
 ヌ. peripheral-nerve lesions
 ル. myopathy








老年期の精神障害

A. 病的でないが注意すべき症候群
 1. 老年期隠遁症候群 (ディオゲネス症候群)
   独り暮らし、身だしなみに無頓着、痴呆と間違えられる

 2. ガス灯症候群
   家族や周囲の人が患者の些細な異常を誇張して訴え、精神障害とされてし
   まう


B. 老年期の鬱病
 イ. 鬱気分、行動・思考抑制、不安・焦燥、後悔、悲観、自己評価の低下、
   罪責感、無価値感、希死念慮、(妄想)

 ロ. 頭重感、食欲不振、インポテンス、自律神経症状、睡眠障害

 ハ. 日内変動:朝気分が悪く、夕方回復。

※老年期鬱病の特徴
 1. 不安・焦燥、心気妄想、貧困妄想、虚無妄想
 2. 脳循環障害、パーキンソン病も原因となる
 3. 鬱病性仮性痴呆 (抗コリン作用の少ない抗鬱薬を用いる)
 4. 日内変動が少ないこともある


C. 老年期の幻覚・妄想状態 (※精神分裂病の再燃あり)
 1. 老年期の幻覚
   老年期の感覚遮断が原因で、白内障・緑内障・難聴等において体験され
   る幻覚、本来は健常老年者に起こる。

 2. 老年期の妄想
  イ. 皮膚寄生虫妄想

  ロ. コタール症候群
    否定妄想 (自分は死んで感覚を持った体はない、しかし苦痛は続くと
    思う、多くは退行期鬱病に伴う)

  ハ. カプグラ症候群
    身近な人物を他人の入れ替わりと考える。しばしば脳器質性障害に伴
    う。

  ニ. オセロ症候群
    配偶者が浮気していると考える。脳器質性障害、アルコール中毒が原
    因

 3. 遅発性パラフレニア ( 脳器質性障害によらない幻覚・妄想状態)
   60才以上の女性、単身生活、視覚・聴覚障害あり、隣人とのトラブル、
   1/3 に幻聴、人格障害は少ない、被害関係妄想、(接触欠乏性パラノイ
   ド)


D. 澹妄
  脳器質性障害・身体疾患に伴う急性・一過性の精神障害で意識混濁による
  注意力・集中力・思考力・見当識障害。知覚の変容・錯覚・幻視。精神運
  動興奮。睡眠と覚醒のリズムの変化。

 ※知覚の変容・錯覚・幻視:夕方から夜間に置物などが人の姿に見えたり、
  本来いるはずのない小動物が見える。

E. 痴呆:後天的な脳障害によって生ずる認知機能の持続的低下
 1. 診断基準
  a. ICD−10の診断基準
   (1). 記憶の障害
   (2). 判断能力、思考能力障害および一般情報処理障害を特徴とする認知
      能力障害
   (3). 意識障害を認めない
   (4). 情緒不安定、易刺激性、無関心、粗雑な社会行動、のうち一つ以上
      を認める
   (5). 症状が6か月以上続く

  b. DSM−IV の診断基準
   (1). 記憶の障害
   (2). 認知機能障害
      失語、失行、失認、高次機能 (計画、組織、順序立て、抽象思考)
      のうち一つ以上できぬ
   (3). 以上の認知機能障害のため社会生活や職業上の能力が明かに低下し
      た状態

 2. 痴呆性疾患 (65歳以上に占める痴呆患者の割合が 5 〜 6% で、(1). (2).
   はほぼ同数)
  (1). 脳血管性痴呆
   イ. 多発性梗塞性痴呆
   ロ. 大脳白質の広汎な変性 (ビンスワンガー・前頭葉白質ラクナ・低還
     流)

  (2). アルツハイマー型痴呆
   a. 診断基準
     痴呆、潜行性発症、緩徐に進行、脳局所症状なし、意識障害なし
     他の原因疾患を否定

   b. 臨床症状と病期
    1). 前駆期
      感情・意欲の変化、軽度人格変化、性格特徴の尖鋭化、自発性低
      下鬱気分、易刺激性 (これが年余にわたる)
     ※老年期の (生理的) 記憶減退がアルツハイマーの前駆症状である
      との根拠はない。

    2). 初期 (第一期)
      近時記憶の障害 (家族との会話の混乱、繰り返し尋ねる、起き場
      所を忘れる、日付を間違う。)
     ※特にアルツハイマー型痴呆では近時記憶の障害が目立つ
      海馬・側頭葉底面・嗅内皮質等近時記憶に関係の深い部位に変化

    3). 中期 (第二期)
      遠時記憶の障害が加わる
      ○被害妄想:大切な物を置き忘れ家族が盗んだと言う
      ○語健忘:日常品の名前が出て来ない
      ○錯記憶:間違えた記憶
      ○失語、失行、失認
      ○場所に関する見当識障害

    4). 後期 (第三期)
      高度の痴呆状態、歩行障害、自発性低下、失禁、寝たきり

   c. 病態
     側頭葉底面の萎縮 (嗅内皮質に最も早く変性が起こる)
      ○神経細胞の脱落
      ○老人斑 :アミロイド前駆体蛋白 (APP) の存在
      ○神経原線維変化
      ○アセチルコリン、コリンアセチルトランスフェラーゼが大脳皮
       質や海馬で低下 (マイネルト基底神経核等の脱落)

   d. 遺伝学的事項
      ○家族性アルツハイマー病 (早発性・遅発性)
      ○アミロイド前駆体蛋白 (APP) における点突然変異
      ○アポリポ蛋白E がアルツハイマー病の発病を早める

  (3). ピック病と前頭葉型痴呆
     初老期発症、人格障害、言語解体、滞続言語、精神荒廃、前頭葉萎縮

  (4). 皮質下痴呆
     記憶障害は目立たぬ、忘れやすい、思考遅延、情動・人格変化、知識
     を利用する能力の障害

  (5). その他








GDS (Global Deterioration Scale、ライスバーグ) について
  (面接と介護者の両方の立場から、痴呆の程度を測定)

 (1). 正常。

 (2). ごく軽度の記憶低下
    置き忘れ、名前を忘れるなど主観的な忘れっぽさ。

 (3). 軽度の認知障害
    慣れない場所で迷う、喚語障害、能率低下など。

 (4). 中等度の認知障害
    最近の出来事について知識不足、計算障害、家計管理は出来ないが時
    間と人に関する見当識は保たれる。

 (5). やや高度の認知障害
    時間や場所に関する失見当、電話番号を忘れるなど生活上の介助が必
    要。

 (6). 高度の認知障害
    配偶者の名前を忘れる、全ての生活の出来事を忘れる、失見当、昼夜
    のリズム障害、尿失禁など。

 (7). 非常に高度の認知障害
    言語能力の消失、食事と排泄の介護を要す。

※改定長谷川式簡易知能スケール (HDS-R) との関連性
 (1). 20点以下 15点以上 : 軽度 〜 中程度の痴呆の疑い。
 (2). 10 〜 14点 : 中程度の痴呆。
 (3). 9点以下 : 高度の痴呆。
  (注意:経時的にみて 4 〜 5点の変化があれば明かな改善あるいは悪化とみ
     る)








澹妄と痴呆の比較

  < 澹妄 > < 痴呆 >
 ○発症 急性 慢性
 ○経過 変動する 変動しない
 ○意識レベル 障害される 正常
 ○睡眠・覚醒のサイクル 障害される 正常
 ○精神状態 興奮・恐怖・幻覚 無関心・無抑制
 ○不随意運動 多い 少ない
 ○脳波 瀰満性徐波化 正常 〜 軽度徐波化
 ○原因 殆どがCNS以外にある CNS disorder









老人性痴呆の異常行動の類型・症状・介護・治療法

1. 多動型 (脳の障害を直接反映)
  徘徊・過食・性的異常行動・反抗・暴力。
  介護の効果は低い。
  精神病院へ入院の必要。
  スルピリド・コントミン・ハロペリドール。
  アルツハイマー病・ピック病等

2. 失見当識に伴う多動型
  徘徊・道に迷う・仮性作業・異常行動・夜間起床。
  介護は効果的・身体拘束は絶対禁忌。
  精神病院へ入院は状況による。
  スルピリド・チオリダジンの少量投与。
  アルツハイマー病・脳血管性痴呆。

3. 状況反応型
  周囲の不適切な対応に起因した異常行動。
  昼夜逆転・徘徊・汚れた下着を隠す。
  丁寧な対応や環境の整備が効果的 (福祉サービスの利用)
  精神病院へ入院は一時的な避難として利用。
  薬物は不要。
  アルツハイマー病・脳血管性痴呆。

4. 妄想型
  被害的感情・記憶障害・認知障害・判断障害・物盗まれ妄想・嫉妬妄想
  精神病院へ入院は、特に人間関係がこじれた時。
  ハロペリドールの少量
  アルツハイマー病に多い

5. 情動不安定型
  情動失禁。
  少しの刺激で大声・騒ぐ・物を強く掴む。
  介護の効果はあがらない。
  精神病院へ入院は状況による。
  チオリダジン
  脳血管性痴呆 (特に仮性球麻痺) 。

6. 澹妄型
  澹妄状態での異常行動・夜間澹妄・興奮・多動。
  精神病院へ入院は状況による。
  少量のハロペリドール。
  脳血管性痴呆。

7. 急性脳症型
  身体疾患や薬剤の影響。
  多動・怒り易い・焦燥・困惑状態。

8. 病前障害型
  機能性精神病。
  性格の偏りが軽度の痴呆で顕在化。
  幻覚・妄想・性格の先鋭化。
  精神病院へ入院は無効かかえって悪い。
  脳血管性痴呆・アルツハイマー病。








アルツハイマー病 (AD・Alzheimer)

 ※SDAT : アルツハイマー型老年痴呆
 ※FAD : 若年性家族性アルツハイマー病
 ※VD : 脳血管性痴呆・多発梗塞性痴呆

1. 疫学
 (1). FAD は AD の全体に対し欧米では 5%、日本では 2% 程度。
 (2). 女子にやや多く加齢とともに激増。有病率は 2.5/10万人程度。


2. 症状
 (1). 0 病期
    不安・抑鬱・パラノイア・心気症

 (2). 第1期 (初期)
    記銘力障害・記憶再生障害・見当識障害 (時、場所、人) ・構成能力の
    低下・徘徊・自発性低下・抑鬱・言語想起の障害・失名詞・無意味な
    言葉・時に易怒性

 (3). 第2期 (中期)
    記憶の著名な障害・流暢性失語・言語理解困難・換語障害・失行 (着
    衣、観念運動、観念、構成) ・計算障害・徘徊・多動・失認 (嗅覚、視
    覚、視空間、相貌、同時) ・鏡現象・Kluver-Bucy・無関心・無頓着
    ・無欲・多幸・痙攣・ミオクローヌス

 (4). 第3期 (末期)
    高度知能低下・akinesia・mutism・四肢の固縮・屈曲肢位・寝たき
    り・失外套症候群


3. アルツハイマー病の危険因子 (相関が強い因子)
 A. 危険要因
  (1). 痴呆の家族歴
  (2). パーキンソン病の家族歴
  (3). ダウン症候群、精神遅滞の家族歴
  (4). 意識障害を伴う頭部外傷の既往
  (5). 甲状腺機能低下症
  (6). 鬱病
  (7). 喫煙

 B. ライフスタイルとアルツハイマー病の危険因子
  (1). 意識消失を伴う頭部外傷の既往
  (2). 趣味がない
  (3). あまり運動しない
  (4). 休日に運動しない
  (5). 歯がない
  ※総入れ歯・低血圧・たばこ・高血圧・飲酒・肥満は有意差なし。


4. 治療
 A. 薬物療法
  ・処方例
    (1). コメリアン (100) 3T・オイナール3T
    (2). シンメトレル (50) 3T・セロクラール (20) 3T
    (3). ドラガノン3T・サーミオン3T: (ドラガノン:aniracetam製剤)
    (4). オイナール3T・アバン3T

  ・グラマリール
    幻覚・妄想・攻撃性に対して屯服 〜 3T まで使う

  ・セレネース
    グラマリールが効かない例に投与、1T (0.75mg) を屯服を原則

  ・その他
    メレリル : 感情興奮を抑制
    ニューレプチ ル: 幻覚・妄想
    ピレチア : 錐体外路症状出現の抑制
    ドグマチール : 幻覚・妄想
    抗鬱剤 : 抗コリン作用の弱い四環系抗鬱剤がいい

 B. ケアの実際
  (1). 老年者は環境の変化にきわめて敏感であることを念頭におく。
     知的機能低下を感情面の敏感さで補っている。
  (2). 心ない発言に敏感であることを念頭におく。
  (3). 顔なじみになる。
  (4). 痴呆の症状としての幻覚・妄想に反論しない。
  (5). 理屈で説得しても意味がない。
  (6). 孤独にしない。無視しない。
  (7). 多様な刺激を与える。適切な質問をして刺激を与える。
  (8). 人格を尊重し、暖かい言葉で接する。
  (9). 基本的には余り手を出さず、自分で何でもさせ、介助はできるだけ控
     えめに。








眩暈・めまい・平衡機能異常

※眩暈の引金
  ストレス・寝不足・薬物・感冒・高血圧・低血圧・貧血・糖尿病・高脂血
  症・心疾患・消化器疾患・内分泌疾患・肺気腫・代謝異常等あり

1. 分類と発生頻度
 1). 眩暈症 (原因不明の眩暈)
   80% (眩暈を主とした眩暈外来でも 40% 位ある)

 2). 耳性眩暈症
  (1). 耳性眩暈症
  (2). メニエール病
     (1). (2). 合わせて 11% 位、純粋なメニエールは 2 〜 3%
  (3). 頭位性眩暈症 : 6.1%
  (4). 眩暈を伴う突発性難聴 : 1.4%

 3). 中枢性眩暈症
  (1). 中枢性眩暈症 : 0.8%
  (2). 聴神経鞘腫等 : 0.7%


2. 耳性眩暈症の特徴 (激しい眩暈なら耳性でも中枢性でも悪心・嘔吐を伴う)
 (1). 回転性眩暈
 (2). 閉眼で重心動揺増大
 (3). 頭振後眼振で眼振発現
  ※頭振後眼振:頭を 30度前屈し左右に 45度 20 〜 30回他動的に首を
         振った時に 4回以上眼振が発現
 (4). 蝸牛症状 (難聴・耳鳴り・耳閉等) があり、眩暈と同時に起こる。


3. 中枢性眩暈の特徴 (激しい眩暈なら耳性でも中枢性でも悪心・嘔吐を伴う)
 (1). 眩暈が消失せず一週間以上続く
 (2). CNS 症状を伴う (頭痛・手足のしびれ・嚥下障害・言語障害・複視・意
    識障害・運動失調等)
 (3). 開眼時でも重心動揺が激しい
 (4). 視運動系の検査に異常あり


4. 平衡機能検査
 (1). 眼振検査
    眼球がグッと動く方向が眼振の方向でその反対が患側
   ※頭位変換眼振検査や頭位眼振検査で下眼瞼に向かう垂直性眼振を認め
    たら、特に小脳や脳幹の障害を考え MRI・CT 等積極的に検査

 (2). 開眼・閉眼起立検査
    通常閉眼で若干の重心動揺増加

 (3). 足踏み検査
    手を前に上げ閉眼で足踏みを 50回、悪い方に回転する。通常 90度以
    上回転すれば異常。

 (4). カロリック検査
    仰臥位で頭を枕等で少し高くして、頭を少し横にむけて、体温前後の
    水を 50ml を 20秒位で外耳道に流し込む、その後頭を正面向きに戻
    して眼振の有無をみる。水平半規管又は前庭神経の機能があれば反対
    側に向かう眼振が認められる。

 (5). 目の運動

 (6). 聴力検査

 (7). シェロンテスト
    自律神経の安定度をみる。寝かせて 10分位安静を保った後、急に起
    立させ、その直後、5・10・15分後の血圧変化をみる。20以上血圧
    が低下すれば陽性。自律神経失調の可能性を考える。リズミック・グ
    ランダキシン等が効果あり。(低血圧症が以外に多い)


5. 頭位眩暈症
 (1). 頭の位置がある一定の位置で眩暈、または頭位の変化で眩暈 (回転性)
    を生ず。
 (2). 原因は耳石器、または後半規管の障害
 (3). 性別・頻度 : 1/1万人といわれる (もう少し多いか?)
          女性に多い・高齢者に多い
 (4). 眩暈は持続しない、保存的療法で自然に治る。


6. その他の眩暈
 (1). 頚椎変形 (老化現象、事故等) でも回転性眩暈を起こすことがある。
 (2). 騒音下での仕事・結核の既往歴 (ストマイ難聴)・慢性中耳炎・乗り物酔
    い


7. 眩暈の治療
 1). 保存的治療
  (1). 発作時
   a. 悪心・嘔吐がある時
     メイロン200 〜 250ml + プリンペラン静注。
     トラベルミン1ml の筋注
   b. 悪心・嘔吐がない時
     トラベルミン内服、マイナートランキライザー、自律神経安定剤、
     血行改善剤
   c. 難聴があれば
     副腎皮質ステロイドの適応
   d. 内リンパ水腫
     利尿剤

 2). 手術療法
   主としてメニエール病に対して適用される。