シアン中毒

◇治療
 亜硝酸アミル吸入 (三共・1管 0.25ml 、そのまま砕いて鼻にあて吸入させ
 る)、3% 亜硝酸ナトリウム10ml をゆっくり静注。
 次いで25% チオ硫酸ナ トリウム (デトキソール・ハイポ、2g/20ml) の
 50 - 120 - 250ml (5 - 12 - 25g) をゆっくり静注。
 人工呼吸、代謝性アシドーシスの治療








農薬中毒

(1). 有機リン系
 ◇症状
   副交感神経刺激症状・不穏状態・意識障害・胸部苦悶・喘鳴・呼吸困難
   ・縮瞳・頭痛・下痢 etc

 ◇硫酸アトロピン
   軽 症:0.5 - 1.0mg 皮下注射
   中等症:1.0 - 2.0mg を皮下または静脈注射
   重 症:2.0 - 4.0mg を静脈注射。その後 miosis が解除するまでアト
       ロピンを飽和させる

◇PAM (プラリドキシムヨウ化メチル)
   一回 1.0g を徐々に静脈注射








防水スプレー吸入による事故

 ◇症状
   咳・呼吸困難 (97%);発熱 (47%);nausea.vomiting (37%);胸痛
    (24%);頭痛 (19%);寒け (17%);頻脈 (10%);意識低下 (8%)
   重症例は肺水腫。
   間質性肺炎もある。
   フッソ樹脂関与の可能性あり。








アルコール多飲の対策・急性アルコール中毒

●脱水 (混合性脱水症 〜 低張性脱水症)・低血糖・電解質異常に対する治療が
 中心。
 程度により、生理食塩水 1000 〜1500ml (又はそのうち 500 〜1000ml
 をブドウ糖加乳酸リンゲル液でも良い、ショックがあれば生理食塩水のみ、
 体温が高い時はブドウ糖加乳酸リンゲル液のみ) を 4 〜 5時間で投与。
 カリウムを適宜加える。
 なお尿量は十分に保たれているが決して脱水状態が回復したわけではないと
 言う事を肝に銘じる。回復の指標は、倦怠感の消失、全身不快感の消失、渇
 き (元々、口渇感は少しだけ) の消失、食欲の亢進 (食欲低下があるうちは十
 分に回復していない) 等である。

※なお、自律神経症状 (不眠・頭痛・倦怠感・不安感・冷汗・嘔気・嘔吐等) は
 アルコール性脱水として危険な状態を示す (上記の如く嘔吐は重症の低張性
 脱水症で起こり得る) ので、速やかに治療をはじめる。精神安定剤が有効な
 こともある。








アルコールと薬物の相互作用

◇抗凝血薬
  クマリン系凝血薬の代謝を抑制するため作用増強(アルコール中毒患者では
  ワーファリンの半減期が短縮)。

◇抗痙攣薬
  多量のアルコール摂取でフェニトインの作用が減弱

◇MAO 阻害薬
  アルコール代謝を阻害する。
  ビール・ワインと同時に服用すると血圧上昇のことあり。

◇三環系抗鬱薬
  鎮静作用の増強または惹起

◇血糖降下薬
  低血糖 (SU 剤)・乳酸アシドーシス (ビグアナイド)・アンタビュース様作
  用 (クロルプロパマイド)

◇降圧薬
  降圧作用の増強

◇中枢抑制薬
  抗痙攣薬・抗ヒ薬・催眠薬・抗不安薬・麻薬・鎮痛薬の作用の増強

◇抗生剤
  アンタビュース様作用 (セフェム)

◇抗潰瘍薬
  シメチジンがアルコールの作用を増強 (吸収を高める)

◇ベータ・ブロッカー
  大きな問題はない (飲酒後入浴しない)








マムシ咬傷

 マムシ抗毒素血清を点滴静注・血清病に対しては同時にステロイド・抗ヒス
 タミン剤を使用する








セアカゴケグモ咬症

1). 症状
 (1). 初期症状
    最も軽い場合は咬まれた局部が少し痛いのみ、20 〜 40分後には鈍痛
    となる

 (2)局所症状
    咬傷部は発赤がないことが多い (時に紅斑と浮腫を伴う) 、その部分に
    は発汗あり。

 (3)全身中毒症状
    30 〜 120分で激しい筋肉痛・筋痙攣が始まる。胸痛や腹痛が表われ
    狭心症や急性腹症と間違われる。同時に悪心・嘔吐・頭痛・振戦・不
    安感・発汗・流涙・流涎などがみられ、知覚過敏・感覚異常・眼瞼浮
    腫・呼吸困難・開口障害等も出現する。中毒症状のピークは 3 〜 4時
    間で幼児や高齢者は重症に陥る可能性がある。

2). 治療
 (1). 初期症状・局所症状では対症療法
    冷却・抗ヒ剤・鎮静剤・鎮痛剤・筋弛緩剤 (ジアゼパム etc) 投与、切
    開は無意味。

 (2). 全身中毒症状:抗血清療法 (大阪市立病院・三重県立病院に保管)
  a. 始めに抗ヒ剤を静注または筋注。

  b. その 15分後に抗毒素血清を筋注。初回は 1A (500U) で 1時間以内に
    症状が改善しなければ同量を繰り返し筋注。それでも効果なければ、少
    量のボスミンを筋注しておき生理食塩水に混ぜて静注または点滴する。

  c. 抗血清はウマ血清なので、アナフィラキシーへの対応を忘れないこと。
    予めテストが必要で、オーストラリアでのアナフィラキシー・ショック
    の発生率は 0.54% 。

  d. 極めて重症な例が 0.5% にみられる。








蜂刺傷
(アナフィラキシーの第一選択はエピネフリン、0.2 〜 0.3ml を数回)

※蜂は毒を袋ごと皮膚に注入する。従って刺された部位を絞ってはならない。

※一度に 10箇所以上刺されたら中毒症状が出る。
  嘔吐・下痢・意識障害・痙攣。

※低血圧が持続するなら、ノルエピネフリンやラニチジン (H2 ブロッカー) も
 考慮する。








キッチンハイター粉末酸素系

※http://130.69.92.40:80/chudoku/chudokuinfo/a/a121.txt

※ニオイが気にならず、色・柄物のふきんも漂白できる酸素系の台所用漂白剤
 です。
 食器などにも使えます。洗浄成分も入っているので、「洗い」と「漂白」が
 同時にできる。

●除菌成分:過炭酸ナトリウム

 【番号】 0011
 大分類 洗剤関係
 タイトル 酸素系漂白剤 (過炭酸ナトリウム)
 分類番号 A121
 小分類 エーコープ酸素系漂白剤、エーコープ漂白剤、カネヨブリーチ、カラーブライト、酸素系キッチンブライト、ミヨシカラーブリーチ、ラブ漂白剤、ワイドハイター、キッチンワイドハイター、ホワイトブリーチ
製品は粉末で、水溶液は弱アルカリ性 (3% 水溶液:pH10 〜 11)
 性状・成分 成分:
過炭酸ナトリウム 30 〜 75% 、炭酸塩 25 〜 50% 、酵素、界面活性剤


【作用の概要】
 薬理作用  *
 毒作用 1. 原体のアルカリ性 (3% 過炭酸ナトリウム液で pH10 〜 11) による皮膚粘膜刺激作用と分解による過酸化水素の発生

2. 粉末を大量服用した場合:過酸化水素分解により酸素ガスを発生し、胃や腸を膨満。
 体内動態
吸 収  *
分 布  *
代謝・排泄 過炭酸ナトリウムの分解により生じた過酸化水素は、体内に存在するカタラーゼの作用で直ちに水と酸素に分解される。
半減期  *
蛋白結合  *
 中毒量  *
 致死量 過炭酸ナトリウム:マウス経口 LD50
          ♂ 2,023mg/kg
          ♀1,903mg/kg
 死 因  *
 その他  *


【症状の概要】 高濃度の場合:悪心、嘔吐、口腔・咽頭・食道・胃の炎症
大量服用の時:胃、腸の膨満などが現れる可能性あり
 中枢神経  *
 瞳 孔  *
 呼吸器  *
 循環器  *
 消化器 悪心、嘔吐、口腔・咽頭・食道・胃の炎症、胃・腸の膨満
 電解質・代謝  *
 肝  *
 腎・泌尿器  *
 体 温  *
 皮 膚  *
 神経・筋  *
 血 液  *
 その他  *


【治療の概要】 経口:
牛乳 (120 〜 240ml 、幼児 15ml/kg 以下)、卵白などを与える。
高濃度液を大量に服用した場合:胃洗浄 (穿孔に注意) 、粘膜保護剤 (マーロックス、アルロイドG など) の投与。
眼に接触:流水で15分以上洗眼。
 全身管理  *
 催 吐  *
 胃洗浄 穿孔に注意して行う
 吸着剤  *
 下 剤  *
 強制利尿  *
 血液浄化法  *
拮抗剤・解毒剤  *
 その他 対症療法:
ガス膨満 (ジメチルポリシロキサン (ガスコンなど)の消化管内ガス排除剤の投与または、導管によるガス排除)







シアン中毒への対処([Cyanide Antidose Package]の使い方)

 ※注意:このキットは現在は販売中止になっている。あくまでも参考にして
     同じ薬物を用意しなければならない。

 A.シアン化合物解毒剤キット[Cyanide Antidose Package]の内容
  1).[SODIUM NITRITE] (NaNO2)  注射液 300mg/10ml 2A
    (亜硝酸ナトリウム)
  2).[SODIUM THIOSULFATE] (Na2S2O3)  注射液 12.5g/50ml 2A
    (チオ硫酸ナトリウム)
    (いずれもpH調整のためホウ酸・KCl・NaOHが加えてある。)
  3).[Aspirol](亜硝酸アミル吸入液) 0.3ml(5分間)  12A
  4).注射器
    10ml ディスポ注射器 22G 針付 1本
    50ml ディスポ注射器 針なし 1本
    20G 注射針 1本
  5).胃チュ-ブ 1本
  6).胃洗浄用 60ml 注射器 1本

 B.シアン化合物中毒解毒剤の薬理作用
  亜硝酸ナトリウム(NaNO2)はヘモグロビンをメトヘモグロビンに変え
  る。
  メトヘモグロビンはシアン・イオンをあらゆる組織から外し結合してシア
  ンメトヘモグロビンとなる。これは比較的毒性が低い。チオ硫酸ナトリウ
  ム(Na2S2O3)の作用はロダナ-ゼとして知られる酵素によってシアンを
  チオシアンに変換することにある。これを化学式で示すと次の如くである。

  NaNO2 + Hemoglobine (Hb) = Methemoglobine (Met-Hb)

  HCN + Met-Hb = Cyanmethemoglobin (CNMet-Hb)

  Na2S2O3 + HCN = HSCN

  NaNO2とNa2S2O3はシアン化合物や青酸中毒の治療に最適の組み合わせ
  である。この2剤をNaNO2・Na2S2O3の順に静脈内投与することによって
  致死量の約20倍のシアンソ-ダを投与した犬の解毒が可能であり、これは
  呼吸が停止してからでも有効である。心臓が拍動している限りこの方法に
  よる回復のチャンスは大変高い。NaNO2とNa2S2O3の同時投与は相加的
  な効果ばかりでなく明らかな相乗的効果がある。

 C.適応
  シアン化合物中毒の治療に用いる。

 D.注意
  NaNO と亜硝酸アミルの過剰投与は危険なメトヘモグロビン血症を招き致
  死的となることがある。[Cyanide Antidose Package]の1セットに含
  まれる量は成人の致死量は越えない。小児投与量は、体表面積(BSA)か
  体重より計算し過剰投与によりメトヘモグロビン血症を起こさないように
  しなければならない。
  もしも過剰のメトヘモグロビン血症の徴候(青い皮膚や粘膜、おう吐、
  ショック、昏睡)が進行するようならば、1%メチレンブルー溶液を静注す
  べきである。全投与量2mg/kgを5〜10分間かけて投与し、更に必要であ
  れば1時間後に繰り返すべきである。
  更に、酸素吸入と全血輸血を考慮しなければならない。

 E.投与量と投与方法
  緊急事態に先駆けてこのパッケ-ジの正しい使用法に馴れておくべきであ
  る。シアン中毒は急速に死の機転をとり何時間も生存することは稀であ
  る。死亡なせない為には迅速な診断と特異的な解毒剤を投与することであ
  る。貴重な時間を失ってはならない。診断が疑わしい場合でも治療は直ち
  に行われるべきである。最良の結果を得るためには、医師は予め次の手順
  について精通しているべきである。

  1.助手に亜硝酸アミルのアンプル[Aspirol]の割り方を指導する。
   1度に1個をハンカチの中で割り患者の口の前に15秒間当て、15秒間休
   む。これをNaNO2が投与出来るまで続ける。持続的な亜硝酸アミルの投
   与は適切な酸素化を妨げるため、間欠的に投与することが重要である。

  2.亜硝酸アミルの投与を中止し、亜硝酸ナトリウム(NaNO2)300mg
   [3%溶液10ml]を2.5-5ml/分の速度で静注する。小児投与量は6-
   8ml/BSA(約0.2ml/kg体重)であり10mlを越えてはならない。

  3.その直後にチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)12.5g[25%溶液50ml]
   を注入する。小児投与量は7g/BSAであり12.5gを越えてはならない。
   これにはおなじ静脈と針を用いて良い。

  4.もしも経口的に毒物が入ったものなら、できるだけ速やかに胃洗浄を行
   わなければならないが、そのために上記の治療が遅れてはならない。
   胃洗浄は可能であれば医師か看護婦の第三者が行う。正確な診断を待つ
   ことなく迅速な処置を行わなければならない。
   患者は最低24〜48時間の監視が必要である。もしも中毒症状が再燃し
   たら、亜硝酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムの両者を初回の1/2量づ
   つを繰り返し投与すべきである。たとえ患者が完全によくなったように
   見えても初回投与から2時間後に予防的に投与しなければならない。
   もしも呼吸が停止しても脈が触れるならば直ちに人工呼吸を行わなけれ
   ばならない。蘇生そのものが目的ではなく心拍を維持することである。
   亜硝酸アミルを含ませたスポンジ・ガ-ゼかハンカチを患者の鼻の上に
   置いておくべきであり、これによって呼吸が再開するのを促すことが期
   待できる。呼吸再開の徴候が現われたなら速やかに上記の液を注入すべ
   きである。

 F.シアン中毒の原因
  ある種の植物は遊離青酸や青酸グリコシドを作り、人や動物の中毒の原因
  となる。
  この青酸は、これらの植物ではすべてのアミノ酸を完全に蛋白に変換でき
  ないためであると云われている。即ちこれは蛋白代謝の副産物である。ビ
  タ-ア-モンド・桜んぼ・プラム・モモ・アプリコット・りんご・ナシ等の
  種やカサバ・ある種の竹の芽等はある量を摂取すれば人にシアン中毒の症
  状を起こし得る。ウワミズザクラ(Chokecherry)・矢草(arrow gra-
  ss)・スダン草(Sudan grass)やある種のモロコシは青酸を含んでいる
  ため家畜類の死亡を起こし得る。ウワミズザクラによる人の中毒も報告さ
  れている。
  青酸ソ-ダや青酸カリは治金の分野で広く使われており、金や銀の鉱石か
  らの抽出や電気メッキ、金属の洗浄、有機物の合成、ハゲ隠しや土壌の消
  毒に利用される。
  青酸は家ネズミ・ドブネズミ・蛾・南京虫・ゴキブリやヒメマルカツブシ
  虫に汚染された船舶・兵舎・海軍基地・大きなビル・製粉所や一般家屋の
  薫蒸消毒にもっとも有効である。また柑橘類につく尺取虫の殺虫にも使わ
  れる。また各種の商品、果肉・豆・エンドウ豆・各種の種や梱包された綿
  などは真空室で青酸ガスで薫蒸される。

 G.診断
  死亡する前にシアン中毒の診断をするためには、体液のシアン化合物を化
  学的検査によって証明することが必須であるが、迅速かつ暫定的な診断と
  しては状況証拠で充分である。もしシアン化合物を扱う人や薫蒸施設の近
  くで働いている人が突然病気になったらシアン中毒と考えるのが妥当であ
  るし、もしも意識不明で発見されシアン化合物の入れ物が近くにあれば自
  殺企図が考えられる。臨床的には、呼気にビタ-・ア-モンド油の臭がすれ
  ばシアン中毒の可能性が高いが、なくても否定はできない。他の非特異的
  な症状として頻呼吸(後に遅くなりあえぎ呼吸となる)・頻脈・おう吐・
  ケイレンがあり、昏睡やチアノ-ゼに至る。シアンの毒性は、酸素利用を
  促がす触媒の働きを障害することによって細胞呼吸を抑制することにあ
  る。毛細血管で酸素は吸収されないため静脈血は鮮紅色である。したがっ
  てチアノ-ゼは末期の症状であり、循環不全が進行することによって現わ
  れる。もしも経口的に服毒したと疑われる場合、胃内は空にし、内容物を
  分析しなければならない。もし青酸ガスによる中毒が疑われる場合は、
  20mlの静脈血を採取し同様に分析しなければならない。

 H.緊急時の準備
  緊急時に先駆けこのバッケ-ジの内容の正しい投与法が指導されなければ
  ならない。シアン中毒の治療を成功させるには、次のキットを救急室・救
  急車・実験室・薫蒸施設に設置すべきである。
  亜硝酸アミル12アンプル・亜硝酸ナトリウム(滅菌水10mlに300mg)2
  アンプル・チオ硫酸ナトリウム(滅菌水50mlに12.5g)2アンプル・22G
  針付の10ml注射器1本・50mlの滅菌ディスポ注射器1本・20Gの滅菌
  ディスポ針1本・胃チュ-ブ1本(薫蒸施設では必要ない)・60mlの非滅
  菌注射器1本・駆血帯1本である。
  防腐剤の付加によりこれらの溶液は数年間安定である。しかし、注射時に
  滅菌蒸溜水で溶解するように乾燥結晶のアンプルとすることも可能であ
  る。もしアンプルが無理であれば亜硝酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウム
  を別々に分包しておき、滅菌水かそれも無理な場合は水道水で溶解する。
  そしてその溶液を速やかに注射する。緊急でシアン中毒の治療に用いる場
  合、消毒操作は省略しても許される。動物実験では薬剤の溶液が滅菌され
  ていなくても静注によって感染を起こすことは極めて稀である。もし筋肉
  内や皮下に注射されると膿よう形成の頻度は上昇する。
  亜硝酸ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムの組み合わせはシアン合成植物の
  摂取による羊や牛の中毒の治療にも使える。

 I.シアン中毒治療の知識
  適切な治療が行われないと、シアン中毒は急速に死の機転を取る。シアン
  の被爆にともなう循環虚脱、呼吸困難、皮膚のチアノ-ゼ等の症状は早急
  な処置を必要とする。

 J.初期治療(現場での処置)
  1.患者を毒物で汚染した場所から移動する。

  2.医師を直ちに呼ぶ

  3.もしも患者の呼吸が止まっていたなら、呼吸が回復するまで人工呼吸を
   行う。
   呼吸が回復してからも必要があれば更に人工呼吸を続ける。これは
   100%酸素で人工呼吸器か手押しバックによって行う。もしもそのどち
   らもなければ背臥位圧迫法か口対口人工呼吸を行う。
  ※注意:十分な気道を確保することが任務である。

  4.助手は[Amyl Nitrite Inhalant,USP:Aspirol(亜硝酸アミル)]の
   アンプルを壊し、ハンカチ-フの中に入れて患者の口の前に15秒毎に15
   秒間あてる。これを繰り返す。

  5.皮膚に付いたシアンをすべて洗い流す。シアンで汚染した衣服はすべて
   取りのぞく。

  6.患者の保温を保て。

 K.特異的治療 (医師または看護婦によって使用する)
  1.静脈注入の準備ができるまで直ちに酸素を投与する。

  2.酸素同様に[Amyl Nitrite Inhalant]を2〜3分毎に15-30秒間投与
   する。

  3.[Aspirol Amyl Nitrite]の投与を中断し、[SODIUM NITRITE]
   300mg/10ml を2.5-5ml/分の速度で静注する。小児投与量は、6-
   8ml/BSA(およそ0.2ml/kg)であり10mlを越えてはならない。

  4.その直後に成人では[SODIUM THIOSULFATE]12.5g/50mlを投与す
   る。
   小児投与量は7g/BSAであり12.5gを越えてはならない。
   おなじ静脈と針を用いてよい。

  5.もしも経口したものであればできるだけ速やかに胃洗浄を行わなければ
   ならないが、そのために上記の治療が遅れてはならない。胃洗浄は可能
   であれば医師か看護婦の第三者が行う。正確な診断を待つことなく迅速
   な処置を行わなければならない。
   患者は最低24-48時間の観察が必要である。もしも中毒症状が再燃した
   ら、[SODIUM NITRITE]と[SODIUM THIOSULFATE]の両者を初回
   の1/2量づつ投与しなければならない。たとえ患者が完壁によくなった
   ように見えても初回投与から2時間後に予防的に投与しなければならな
   い。

 L.注意
  [SODIUM NITRITE]も[Amyl Nitrite]も過剰投与は危険なメトヘモ
  グロビン血症を招き致死的となることがある。[Cyanide Antidose
  Package]の1セット含まれる量は成人の致死量は越えない。小児投与量
  は、体表面積か体重より計算し過剰投与によりメトヘモグロビンを起こさ
  ないようにしなければならない。
  もしも過剰のメトヘモグロビン血症(青い皮膚や粘膜、おう吐、ショッ
  ク、昏睡)になったら、1%メチレンブル-溶液を静注する。全投与量
  2mg/kgを5-10分で投与し、更に必要であれば1時間後に繰り返す。更
  に、酸素吸入と全血輸血を考慮しなければならない。








Clinical Institute Narcotic Assessment(CINA) withdrawal scale
                  (鳥越訳、誤訳注意、Anesthesiology,V91,No6,Dec,1999、P1639-)

  1. 腹部症状(質問:「おなかに痛みがありますか」)
     0点=腹部症状なし、正常グル音。
     1点=波状にくる腹部の痙攣性疼痛あり。
     2点=腹部の痙攣性疼痛、下痢便・テネスムス、腹鳴あり。
  2. 鳥肌が立っているか?(体毛が逆立っているか?)
     0点=なし
     1点=時々鳥肌が立っている。触ると消失し、いつもではない。
     2点=触ると消えるが、いつも波状に鳥肌が立っている。
  3. 体温の変化(質問:「寒気や熱感を感じますか」)
     0点=なし
     1点=冷感や、手足の冷えがある。さわるとしっとりと冷えてねばつく。
     2点=自分で抑えることのできないふるえがある。
  4. 鼻づまりの有無
     0点=鼻づまりはない。くんくん嗅ぐような動作もない。
     1点=しばしば、くんくん嗅ぐような動作がある。
     2点=つねにくんくん嗅ぐ動作をする。鼻水が垂れる。
  5. 落ち着きがあるかどうか
     0点=正常に落ち着いている。
     1点=すこしいらいらして落ち着きがない。足をばたばたつかせて、体の位置
       をごそごそと変える。
     2点=相当程度そわそわして落ち着きがない。体の位置を頻繁に変える。
     3点=全く落ち着かない。手足を激しくばたつかせ、のたうち回る。
  6. ふるえの有無(腕を伸ばした状態で、指も完全に開いて)
     0点=なし
     1点=ふるえは見えないが、指先にふれるとふるえを感じる。
     2点=腕を伸ばした状態で多少ふるえがある。
     3点=腕が屈曲した状態でもふるえがある。
  7. 吐き気と嘔吐の有無
     0点=なし
     2点=吐き気はあるがむかつき(retching)はない。嘔吐もない。
     4点=吐き気と空嘔吐(dry heave)がある。
     6点=常に吐き気あり。空嘔吐や嘔吐も頻繁。
  8. 流涙について
     0点=なし
     1点=涙目、目尻に涙。
     2点=ひどい顔面を濡らす流涙。
  9. 筋肉痛について
     0点=筋肉痛なし。腕や頚部の筋肉は軟らかく凝りはない。
     1点=弱い筋肉痛あり。
     3点=ひどい筋肉痛あり。下肢や腕や頚部の筋肉は常に硬く凝っている。
  10. 発汗について
     0点=なし
     1点=かすかに発汗を認める。手のひらにはかなりの発汗あり。
     2点=額に玉のような汗を認める。
     3点=顔面や前胸部にしたたりおちる発汗あり。
  11. あくびの有無
     0点=なし
     1点=しばしば、あくびを認める。
     2点=頻繁な、止めることのできないあくびがある。

    (診断基準:7点以下の場合は離脱成功と判断)。








貝毒中毒について(http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/SODAN/faq/kaidoku.html
  貝毒は症状により 1. 麻痺性貝毒、 2. 下痢性貝毒、3. 神経性貝毒、4. 記憶
 喪失性貝毒の4種類とアサリ毒が主な貝毒と思われる。
 1. 麻痺性貝毒(PSP:Paralytic shellfish poison)
    北海道で生産量の多い養殖ホタテが毎年夏頃になると毒化して漁業者を悩ま
   せている。また、広島のカキも毒化し、その範囲は日本全土に広がっている。
   毒成分はサキシトシンであり、その毒力はフグ毒に匹敵する。
  1) 中毒症状
     食後30分で口唇、舌、顔面のシビレ、手足にも広がる。軽症の場合は、
     24〜48時間で回復する。重症の場合は、運動障害、頭痛、嘔吐、言語障害、
    流涎等の症状が現れる。麻痺が進行すると呼吸困難で死亡することがある。
  2) 治療
     治療薬なし。対症療法として、胃洗浄、人工呼吸。
  3) 毒化機構
     二枚貝が有毒プランクトン(渦鞭毛藻Alexandrium属)を摂取、中腸線
    に蓄積される。
  4) 毒化貝
     二枚貝のホタテガイ、ムラサキガイ、アカザラ、アサリ、ヒラオウギ、
  マガキ等。
  5) その他
     北海道で生産量の多い養殖ホタテが夏頃になると毒化して、業者を悩ま
    しています。また、広島のカキも毒化し、その範囲が広がっています。
    毒性分はサキシトシンであり、その毒力はフグ毒に匹敵します。
 2. 下痢性貝毒(DSP:Diarrhetic shellfish poison)
    麻痺性貝毒と同様に北海道では毎年のようにホタテガイが毒化する。毒力は
   フグ毒の1/16程度。1976年、宮城県でムラサキイガイ喫食による集団食中毒事件。
  1) 中毒症状
     激しい下痢が主な症状で、吐き気、嘔吐、腹痛を伴うこともある。
    死亡例なし。
  2) 毒化機構
     二枚貝が有毒プランクトン(渦鞭毛藻Dinophysis属)を摂取、中腸線に
    蓄積される。
  3) 毒化貝
     ムラサキイガイ、ホタテガイ、コマタガイ等。
  4) その他
     上記1. 麻痺性貝毒と同様に北海道では毎年のようにホタテガイが毒化
    する。毒力はフグ毒の16分の1程度。
 3. 神経性毒貝(NSP:neurotoxic shellfish poison)
  1) 中毒症状
     食後数時間して、飲み物飲んだときに口内にヒリヒリ感がある。やがて
    顔、のど、身体全体に広がり、酔った状態になる。瞳孔散大、運動失調、
    下痢の症状が現れる。2〜3日で回復。
  2) 毒化機構
     渦鞭毛藻Gymnodinium breveの赤潮が頻繁に発生し、それによってカキ
    が毒化する。
  3) その他
     日本での発症例はなく、毒成分はブレベトキシン brevetoxin 。米フロリ
    ダで、渦鞭毛藻Gymnodinium breveの赤潮が頻繁に発生し、それによって毒
    化したカキをヒトが食べて中毒した。
 4. 記憶喪失性貝毒
  1) 中毒症状
     主症状は胃腸、神経症状である。
  2) 原因物質
     ドウモイ酸(脳神経系における主要な伝達物質、興奮性アミノ酸)。
  3) その他
     日本での発症例は無いが、ドウモイ酸を産生すると言われている赤潮は
    見られる。南西諸島や鹿児島における紅藻類のハナヤナギはドウモイ酸を
    持っている。
    1987年11〜12月、カナダ東岸でムラサキガイによる中毒で、患者107名中
    死亡4名、記憶喪失12名の事例がある。
 5. アサリ毒
    春先、特定の地域で毒化。浜名湖で大規模食中毒、185名死亡。1950年以降、
   同地産の毒化も中毒発生も見られない。
  1) 中毒症状
     食後24〜48時間で、悪寒、食欲不振、倦怠感、悪心、嘔吐、便秘等
    があり、皮下出血班が必ず見られる。2〜3日後に、口、歯茎、鼻等の粘膜
    に出血、口臭が特徴、黄疸も見られる。重傷の場合は、神経錯乱を起こし
    1週間以内に死亡する。
  2) 毒化機構
     原因は、渦鞭毛藻説や酵素説があるが不明である。中腸線に蓄積される。
  3) 毒化貝
     アサリ、カキ、カガミガイ等。
  4) その他
     春先に特定の地域で毒化する。過去には大規模な食中毒で、185名の死亡
    を出したこともある。






魚類の毒(http://www.ikagaku.co.jp/bac/sakana.html
  魚類の中には毒を持つものが多数存在している。一般的にはフグの卵巣や内臓
 の毒が有名。フグ以外にもフグ毒を持つツムギハゼ、オニダルマオコゼのように
 体表のトゲに毒を持つ魚、ウツボのように歯に毒を持つ魚、アオブダイのように
 毒を持つ餌を摂取し内臓に毒が蓄積する魚、熱帯のサンゴ礁の周囲にいるシガテ
 ラ毒魚など、さまざまな形で毒を持つ魚がいる。
 1. フグとテトロドトキシン
    フグは世界中に約118種おり、日本近海にはこのうち約40種が生息していま
   す。昔からフグは食用されてきましたが、漁獲海域が広がり、これまで知られ
   ていなかった有毒なフグが市場に流通したことで、食中毒事件が多発したこと
   から、厚生省は食用できるフグの種類、部位、漁獲海域などを規定しました。
    日本で食用できるフグはトラフグ、マフグ、ショウサイフグなど22種類で、
   種類によって食用部位も限られています。また、料理店では各都道府県が発行
   するフグ調理師免許を持つ者のみが調理を許されています。
    フグ毒による食中毒事件は、毎年20件前後発生しており、死者も毎年数名で
   ています。フグ毒のテトロドトキシンは、青酸カリの1000倍以上の毒力を持つ
   神経毒で、熱や酸に強く、煮炊きした程度では分解しません。フグの種類によ
   って毒のある部位や量が異なり、同一種でも産卵期(3月頃)の毒力がもっと
   も強く、個体差もあります。フグ中毒の潜伏期間は1時間以内と短く、症状は、
   くちびるや手の感覚麻痺、運動神経麻痺、呼吸麻痺で、摂取量にもよりますが
   発症後8時間以内で死に至ります。
    フグ中毒のほとんどは素人料理で発生しています。専門店以外では絶対に食
   べないことが予防のポイントです。
  1) 特徴
     毒性は、臓器・季節などによって異なるが、卵巣と肝臓の毒性が強い。
    種によって、皮や精巣にも毒性あり。フグ毒は水に不溶で熱に比較的安定。
  2) 中毒症状
     食後、20分〜3時間で口唇、舌端にシビレ発生。頭痛、腹痛、腕痛を伴う
    ことも。千鳥足状態になり、嘔吐も。運動機能が低下、知覚麻痺、言語障害 、
    呼吸麻痺。血圧の著しい低下、チアノーゼ、呑み込み不能、反射反応消失、
    意識混濁。意識不明、呼吸停止。心停止。
  3) 対応
     特効薬なし。応急措置として、強制的に嘔吐させる。胃洗浄。
  4) 毒化機構
     ・網いけすで養殖すると、毒性は全く認められない。
     ・養殖でも、湾を仕切ってフグが自由に低棲生物を食べることができる
      なら毒化する。
     ・無毒の養殖フグにフグ毒を混ぜた餌を与えると毒化する。
     ・他の魚に死なない程度のフグ毒を混ぜた餌を与えても、毒化しない。
      以上により、フグはフグ毒を有する餌を選択的に摂取し、食物連鎖によ
      ってフグ毒を蓄積する。フグはフグ毒に強い抵抗力がある。 食物連鎖の
      根元にいるのは、TTX産生海洋細菌といわれている。
  5) フグ毒を検出したその他の生物
     イモリ(カリフォルニア産),ツムギハゼ(南西諸島),Atelopus属の
    カエル(中米コスタリカ、パナマ)、ヒョウモンダコ(オーストラリア産
    :ダイバーが咬まれて死亡する例あり。咬む際に唾液腺からフグ毒を注入)
    バイの中腸腺(巻貝:1957年、新潟県で死亡例あり)、ボウシュウボラの
    中腸腺(静岡などで中毒例あり)、エラコ(宮崎県)、スベスベマンジュ
    ウガニ(腸内にTTX産生酸性の細菌)、カブトガニの卵巣(タイ)
 2. アオブダイとパリトキシン
    最近ではアオブダイの切り身による食中毒事例が、1997年10月に報告されて
   います。アオブダイが餌とするスナギンチャク類の持つパリトキシンという
   猛毒がアオブダイの内臓に蓄積されているのが原因だと考えられています。
   同様の事例はハギやフィリピン産のサバでも報告されています。
    パリトキシンによる中毒の症状は筋肉痛といわれており、腰や四肢のしびれ
   感、筋力低下や痙攣、重症例では呼吸困難、不整脈、ショックや腎障害が報告
   されています。
    患者の特徴として、ミオグロビン尿(黒褐色の尿)、血清GPT,GOT,LDHが異
   常に高い。
 3. イシナギ中毒
    イシナギ、メヌケ、カンパチなどの肝臓摂取により、嘔吐などの症状と皮膚
   の落屑を伴う中毒で、過剰のビタミンAによるものと言われています。
 4. シガテラ中毒
    世界中で毎年約2万人もの中毒を起こすシガテラ中毒は、熱帯及び亜熱帯の
   主としてサンゴ礁の周囲に生息するシガテラ毒魚を摂取することによって起こ
   る致命率の低い食中毒の総称です。サンゴ礁が破壊される時に発生する藻類を
   摂取することで毒化すると考えられ、シガテラ毒を蓄積する魚はオニカマスな
   ど数百種類にのぼると言われています。
   1) 中毒例
      1949年以降、29件330名死者0。バラフェダイ7件、バラハタ7件、その他
     のハタ6件、オニ(ドク)カマス3件。他にも毒性の高いドクウツボ、マダ
     ラハタ、サザナミハギなど。
   2) 中毒症状
      消化器障害(下痢、嘔吐)、循環器障害(血圧降下、心拍数減少)
     神経障害(知覚異常、縮瞳)、その他(脱力感、関節痛)
 5. タコの毒
    大阪湾にも生息しているヒョウモンダコは体長10cmほどの小型のタコで、興
   奮すると美しく光る青い斑紋が現われます。つい手を伸ばして咬まれると、神
   経毒のテトロドトキシンを持っており、重症の場合には死亡することもあります。







魚貝類の毒(その他)(http://www8.plala.or.jp/mi/umiyama/sk/poison.html
 1. ビタミンAによる食中毒
    イシナギ、サメ、マグロなどの肝臓には、多量のビタミンAが含まれ、摂取
   するとビタミンA過剰症を起こす。1960年厚生省通達で、イシナギ肝臓の食用
   禁止措置がとられた。
   1) 中毒症状
      激しい頭痛、嘔吐、発熱、顔面の浮腫、特徴的な皮膚の剥離。
      一般に魚は老齢になると肝臓中のビタミンAの蓄積量が増加するので、
     他の魚でも注意が必要である。
 2. テトラミン
    北海道でツブと呼ばれている肉食性巻き貝のヒメエゾボラ,エゾボラモドキ
   の唾液腺に局在、常在する。道内では常識であり、中毒例はあまり聞かない。
   1) 中毒症状
      食後30分で、頭痛、めまい、船酔い感、足のふらつき、眼のちらつき、
     吐き気など。2〜3時間で回復。中毒は軽く死亡例なし。
   2) 予防
      外套膜をめくると、その下に1対のアズキ大の淡黄色のものがある。これ
     が唾液腺でこれを取り除いて食べる。
 3. バイの毒
    毒成分:neosurugatoxin, prosurugatoxin
    中腸腺に局在。
    1957年新潟県5名中3名死亡。
   1) 中毒症状
      口渇、視力減退、瞳孔散大、言語障害。重症の場合、激しい腹痛、嘔吐 、
     下痢、四肢の痙攣、意識混濁。
   2) 毒化機構
      バイの生息地周辺の泥土中の細菌とみられている。
 4. アワビ中腸腺による光過敏症
   1) 中毒症状
      アワビの中腸腺を摂取後、日光に照射されると発症。顔面と四肢の灼痛 。
     顔面套の腫れ、火傷状の水泡。
   2) 有毒種
      メガイ、トコブシ、エゾアワビが原因となりうる。有毒期間は春先2〜5
     月。その時の中腸腺の色は濃緑黒色。無毒は灰緑色または緑褐色。餌の海
     藻のクロロフィルに由来すると思われる。
 5. コイ毒
   1) コイ科魚類の胆のうに薬効があると信じ、中毒する。
      中毒症状:腹痛、嘔吐、激しい下痢、黄疸、乏尿、浮腫。中国では、
     フグに次ぐ死亡率。
   2) 胆のうにかかわらず、コイあらい、コイこくで中毒。
      中毒症状:嘔吐、めまい、歩行困難、言語障害、痙攣、麻痺などの神経
     障害。発生地域は九州に限定。外国での例もない。原因不明。
 5. ナガズカ卵巣の毒
    北海道が主産地、あまりなじみがない魚。肉は主に練り製品として利用。丸
   のままの販売はほとんどなく、釣りの外道として、時々見かける。嘔吐、下痢 、
   腹痛が主症状。
 6. モズク中毒
    多食すると中毒するらしい。中毒症状はしびれ、全身のかゆみ、吐気、腹痛
   など。食糧難の時代、地域によって大量にたべるひとがおり それ故中毒者が
   でたのだろう。原因不明。(フグなどの有毒魚種が産み付けた卵という説もある)。
 7. オゴノリ中毒
    刺身のツマに使われる海藻。日本での中毒例は3件。死者あり。
   1) 特徴
      ・新鮮な生のオゴノリを食べている。
      ・死の引き金は低血圧。
      ・死者は女性のみ。
     生のオゴノリの酵素により、一緒に食べた食品からPGE2など生成。その薬
    理作用から低血圧が引き起こされたと推定。PGE2は分娩促進剤として用いら
    れ、女性には微量に作用。市販のオゴノリは石灰で処理されているので問題
    なし。
     1996.8.24の新聞によると、東北大でアプリシアトキシンという毒による
   ものと断定。これは、単細胞藻類のラン藻が細胞内で生産する猛毒成分。
   オゴノリに突き刺さるようにラン藻が付着していたらしい。
     ***************   ***************   ***************
      ◇魚介類の毒2(以下は、刺したり咬んだりする危険な魚介類)
 8. カツオノエボシ
    非常に恐れられている暖海性のクラゲ。日本近海にも生息。成体では触手が
   30mに達するものも。
   1) 症状
      刺されると激しい痛み。みみずばれ。ひどいときは、頭痛、嘔気、呼吸
     困難、脈拍変化、最後にひきつけをおこし死亡。
 9. Chironex fleckeri(クラゲ)
    非常に危険。南太平洋〜インド洋に分布。英名で、box jellyfish or sea
   wasp。北オーストラリアでは多数の遊泳者が数分以内に死亡。
10. カサゴ科
    オニオコゼ、ヒメオコゼ、ハチ、ミノカサゴ、特にダルマオコゼは刺される
   と、傷口から始まる極端な痛みが手足全体に広がる。ひどいときは、全身衰弱 、
   発汗、呼吸困難、けいれん、昏睡、2〜3週間以内に死亡。
11. エイ(アカエイ科、トビエイ科)
   尾部に鋭い1本の刺棘。攻撃的に使うことはほとんどない。気づかずに踏んだ
  場合が多い。激しい痛みが長時間続く。死亡するときもある。
12. イモガイ科
    沖縄、奄美大島に生息。種類によって毒作用が異なる。アンボイナガイ、
   シロアンボイナガイが特に危険。吻から槍のような矢舌を突き刺し、魚や貝な
   どのエサを麻痺させ補食。
   1) 症状
      刺されると激しい痛み。嘔吐、めまい、流涙、流延、胸痛。ひどいとき
     は、呼吸・嚥下(飲み込み)・発声困難。目のかすみ、運動失調、全身の
     痒み。呼吸麻痺、死亡。






◎マムシ咬傷(pit viper bite)について(H18.10.23、Webより、新潟県立六日町病院 渡辺順氏著、一部筆者改変)
 1. 概要
   マムシは、琉球列島を除く日本の全土に分布しており、春から秋とくに7〜9月
  に多くみられる。体長45〜60cm、胴が太く尾が短い。体色はさまざまだが、典型
  的なものは灰褐色〜暗褐色で背に銭型の斑紋が並んでいる。頭部は吻端を頂点と
  する三角形のものが多く、その後方の両側に毒腺を持っている。ハブと同様、上
  顎の先端に2本の長い毒牙があり、この牙で咬むことにより毒が注入される。
 2. 症状
   激しい疼痛、出血、腫脹(20〜30分)、皮下出血、水泡形成、リンパ節の腫張
  と圧痛(1〜2時間)
   1) 循環器系:重症では、体液減少性ショック、血圧低下
   2) 神経系:発熱、めまい、意識混濁
   3) 消化器系:まれに悪心、嘔吐、腹痛、下痢
   4) 腎系:急性腎不全による乏尿、無尿、蛋白尿、血尿(3〜9日後)
   5) その他: DICの報告あり
     腫脹部に筋壊死を生じることあり
     重症例では、眼筋麻痺による霧視・複視・視力低下
   (通常は、1〜2週間前後で回復し、予後はよい)
 3. 処置
   1) 現場で可能な処置
    a. 咬傷部より中枢側で軽く緊縛
    b. 毒素の吸引(口で吸うか(口付近に傷があるときは禁忌)あるいは吸
    引器を使用)水があれば血を絞り出しながら洗浄
   2) 医療機関での処置
    a. 吸収阻止:咬傷部より中枢側で軽く緊縛(脈が触れることを確認。わ
      ざとうっ血させる。
    b. 洗浄(水道水でよい)
    c. 切開・吸引(30~40分以内であればとくに効果的)
    d. 輸液路の確保、輸液療法(乳酸リンゲル使用)
    e. マムシ抗毒素血清の投与(6時間以内であれば有効性は高いといわれ
    ているが、6時間を過ぎても投与する価値はある。ウマ血清である)。
    ・1回1バイアル点滴静注(小児も同量)
    ・マムシ抗毒素血清1A(6000U) + 生食100mlを30分以上かけて静注。
    ・前もってソルメドロール500mg + 5%ブドウ糖液500mlを点滴静注す
     る。
    ※ショック対策をした上で投与する。One shotは、禁忌!
     筋注・皮下注では、効果が期待できない。
    f. セファランチンCepharanthin(5・10mg/1・2ml/A)の投与(単独での投
    与は効果がなく、世界的にはエビデンスはない。血清投与をしない場
    合は、ソルメドロール500mg+ 5%ブドウ糖液500mlの点滴静注を併用す
    る)。セファランチン1A(10mg) + 20%ブドウ糖液20mlを静注
   3) 感染予防(傷の具合で必要性がある場合は考慮する)
    a. 抗菌剤の投与
    b. 破傷風の予防
    ・破傷風トキソイドの投与1A(0.5ml) 筋注
    ・破傷風ヒト免疫グロブリン(テタノブリン-IH)250国際単位/3.4ml
     筋注
    ※トキソイドとグロブリンは別の場所(左右の殿筋など)に筋注
   4) 減張切開(ときに筋膜切開を要す)
   腫脹が著しく、排膿があり、知覚、運動障害や末梢循環障害(末梢の脈
   が触れにくい)が現れた場合は、筋壊死防止のために行うと有効。
   5) 呼吸循環管理、対症療法
 4. 診察時の要点
   1) 咬まれたらすぐに可能な応急処置をし、できるだけ安静にしながら医療機
   関を受診。走ったりすると急速に毒素が全身に回るので注意。受診の際に
   は、咬まれた時間や状況を説明するように指示。
   2) 牙痕の存在、疼痛あるいは腫脹の有無の3点が重要な所見となる。
   牙痕は1〜4箇所(通常は2箇所)で、それ以上のときはマムシではない。
   また、1時間以上経過しても疼痛・腫脹が出現しない場合は、毒素が注入さ
   れなかったか(約50〜70%は毒液注入に失敗している)、無毒蛇による咬
   傷と考えられる。
   3) 疼痛・腫脹が局所に限局している軽症例以外は、少なくとも24時間は経過
   観察が必要。
 5. 体内動態
   リンパ節を介して吸収。
 6. 治療上の注意点
   1) 検査所見
   腫脹:ヘモグロビン値・ヘマトクリット値・BUN値の上昇、尿比重の増加 、
    白血球の増加
   筋壊死:GOT・GPT・LDH・CPKの上昇
   2) マムシ抗毒素血清は、重症例では24時間または48時間経過していても投与
   すべきであるとの報告もある。また、血清を投与しても腫脹はしばらく進
   行するので、停止するまで追加投与する必要はないが、重症例では1〜2本
   の追加が必要な場合がある。
   3) 減張切開については、ほとんど必要なくマムシ咬傷で治療日数がのびるの
   で、できる限りすべきでないとの意見もある。
   4) 腎不全を防げれば予後良好。腎不全を起こした場合でも透析等による救命
   例もある。
   5) 主な病態が浮腫で、相当量の脱水が考えられるため、輸液は重要な治療と
   なる(尿量が保たれるようになるまで)。
   6) マムシ抗毒素血清投与について
    a. 投与前に皮内反応を行い、強陽性の場合は投与しない。
    b. 血清病
    点滴中に発疹など即時型アレルギーあるはアナフィラキシーショッ
    クに対して、血清投与前または同時にステロイドと抗ヒスタミン剤を
    投与する。また、7〜10日後に遅延型アレルギーが10〜20%みられるが
    通常は、ステロイドと抗ヒスタミン剤投与にて2〜3日で軽快する。
   7) 予後:大部分は数日で腫脹や疼痛がひき始め、回復へ向かう。
   死亡例の原因として、急性腎不全あるいはDIC、多臓器不全、ショック
   が考えられる。
   8) 減張切開が必要な例で施行されずCompartment 症候群をおこすと後遺症と
   して筋腱・関節の強直、屈曲障害をおこす。
 7. その他(毒液の経口、眼・皮膚に対する影響)
   傷がない限り、吸収されて全身症状にいたることはない。眼に対しては局所
  刺激があり、結膜炎・角膜炎を起こす(流水で15分以上洗浄、対症療法)
 8. 種類
   クサリヘビ科マムシ亜科マムシ属:ニホンマムシ
 9. 中毒学的薬理作用:出血毒
   出血作用、浮腫作用、血圧降下作用、急性腎不全
  2つの出血をきたす因子が関与。酵素は、プロテアーゼ、ホスホリパーゼ、
  ヒアルロニダーゼ、レシチナーゼなどでとくにプロテアーゼが多く、血管透
  過性亢進、局所壊死、出血、DICの原因と考えられる。
   腎不全は、酵素による直接作用か、腎の毛細血管における透過性亢進による
  ものか、DICの結果生じるものかは不明。脱水は重要な因子となる。







◎毒草について(植松黎『毒草を食べてみた』文春新書より)
 1. ドクウツギ(Coriaria japonica ; Coriaria):coriamyrtin(0.5mg/kg)
             tutin
   めまい、傾眠、ふらつき、口内しびれ感、嘔吐、腹部激痛、ショック、発汗
  全身痙攣、全身硬直、意識障害
 2. バイケイソウ(Veratrum spp. ; Hellebore):jervine、veratramine
            cyclopamine
   眼がチカチカ、顔面痙攣、流涎、心窩部激痛、嘔吐、咳、動悸、ショック。
   cyclopamineは一つ目の不気味な奇形の原因。
 3. キョウチクトウ(Nerium spp. ; Oleander):oleandrin、adynelin(強心配
             糖体、0.3mg/kg)
   心臓毒
 4. トリカブト(Aconitum spp. ; Monkshood):aconitine(0.31mg/kg)、
            mesaconitine、hypaconitine
   舌にピリッとした衝撃、口内熱感・口内痛・口内しびれ感、腹痛、痙攣
  ショック、(解毒剤はない)
 5. フクジュソウ(Adonis amurensis ; Pheasant's-eye):adonitoxin(心臓毒)
   心窩部激痛、嘔吐、不整脈など
 6. キナ (cinchona spp. ; Quinine Tree):quinine抗マラリア薬(効果最大限
   なのは赤血球感染時)
   精神障害、溶血
 7. バッカク(Claviceps purpurea ; Ergot):ergotamine、ergotoxin、
            ergocristine --> LSD
   精神錯乱、意識障害、頭痛、灼熱痛、血管収縮-->壊疽
 8. シキミ(Illicium anisaturm ; Japanese Anise-Tree):anisatine(痙攣性
   神経毒)
   痙攣、全身硬直、嘔気・嘔吐、意識混濁
 9. ドクゼリ(Cicuta virosa ; Water Hemlock):cicutoxin(痙攣性神経毒)
   痙攣、全身硬直、嘔気・嘔吐、意識障害、ショック、窒息
10. アサ(Cannabis sativa ; Hemp/Marihuana):THC(テトラヒドロカンアビ
   ノール)
   大麻(マリファナ(葉)+花穂--->ハシシ(バング・チャラ・ガンジャ))
   麻薬、精神錯乱、譫妄
11. スイートピー(Lathyrus spp. ; Sweet Pea)
         :β-N-<γ-l-glutamyl>aminopropionitrile
   骨性ラチリスム、神経性ラチリスム(痙性麻痺、硬直)
12. ヒガンバナ(Lycoris radiata ; Red Spider Lily):lycorine
   嘔吐、皮膚炎、口内ヒリヒリ感、吐気・嘔吐、心窩部痛、皮膚炎
13. スズラン(Convallaria majalis ; Lily of the Valley):convallatoxin、
             convalltoxol、convalloside
   心臓毒、心窩部痛、嘔気・嘔吐、流涎、頭痛、不整脈、厳格、皮膚炎
14. タバコ(Nicotiana tobacum ; Tobacco):nicotine
   神経障害、嘔吐、呼吸麻痺、不整脈
15. コカ(Erythroxyrum coca ; Coca):cocaine
   麻薬作用(興奮性)、局所麻酔、陶酔感、幻覚、妄想、精神病、paresthesia
16. ジギタリス(Digitalis purpurea ; Foxglove):digitoxin、digitalin
                (強心配糖体)
   不整脈、嘔気、視覚異常
17. イヌサフラン(Colchicum autumnale ; Autumn Crocus):colchicine
   免疫機能低下、脱毛、下痢、腎障害、流涎、口内灼熱痛・胸やけ、口渇、腹痛
   ショック(注意:コルヒチンによる障害は12時間〜48時間あとに発現)
18. インドジャボク(Rauwolfia serpentina ; Rauwolfia):reserpine、ajimaline
   神経遮断作用、鎮静作用、血圧降下、瞳孔縮小、
19. クラーレノキ(Strychnos toxifera ; Curare Poison Nut):curarine、
                toxiferine
   呼吸筋麻痺、筋弛緩、
20. マチン(Strychnos nux-vomica ; Strychnine Tree):strychnine、brucine
   痙攣、嘔吐、呼吸麻痺、血圧上昇
21. ストロファンツス(Strophanthus spp. ; Strophanthus):strophantin、
                ouabaine(心臓毒)
22. イラクサ(Urtica spp. ; Nettle):acetylcholine、histamine、serotonine
   皮膚炎、嘔吐、幻覚、鎮静、振戦、痙攣、流涎
23. ケシ(Papaversomniferum ; Opium Poppy):morphine、codeine、papaverine
   麻薬(静かな抑制)、鎮痛作用、鎮咳作用(codeine)
   抗痙攣作用(papaverine)
24. クサノオウ(Chelidonium majus ; Swallow wort):chelidonine、protopine、
              berberine
   吐血、流涎、意識障害、傾眠、失禁、皮膚炎、口内炎
25. スイセン(Narcissus tazetta ; Narcissus):lycorine
   湿疹、皮膚炎、嘔吐、蕁麻疹
26. オトギリソウ(Hypericum spp. ; St.-John's-wort):hypericin(色素毒)
   紫外線皮膚炎、光線過敏、(農場被害)
27. アセビ(Pieris japonica ; Japanese Andromeda):asebotoxin
   嘔気・嘔吐、下痢、下血、流涎、出血傾向、皮膚炎(蜂蜜経由)
28. マンドレーク(Mandragora officinarum ; Mandrake)
           :scopolamine、hyoscyamine、atropine
   幻覚、幻聴、もうろう状態、精神錯乱、譫妄、麻酔作用、鎮痛作用 
29. ヒヨス(Hyoscyamus niger ; Henbane):hyoscyamine、scopolamine、atropine
   幻覚、精神錯乱・興奮、譫妄、睡眠・鎮静作用、空を飛ぶような幻覚
30. ベラドンナ(Atropa velladona ; Deadly Nightshade):hyoscyamine 、
             atropine、scopolamine
   幻覚、精神錯乱、譫妄、散瞳(atropine)、
31. アイリス(Iris spp. ; Iris):irigenine、iridin
   喉のヒリヒリ、口内灼熱痛、胃炎、消化管出血、水疱性皮膚炎、肝障害、
   腎障害、下痢
32. イチイ(Taxus baccata ; Yew):taxine、taxol
   痙攣、硬直
33. ポインセチア(Euphorbia pulcherrima ; Christmas flower):phorbol
   水疱性皮膚炎 、(発癌のプロモーター?)
34. クリスマスローズ(Helleborus niger ; Christmas Rose): hellebrin
               (心臓毒)
   嘔吐、皮膚炎、強心作用
35. ビンロウ(Areca cathechu ; Betel Nut):arecoline
   覚醒作用
36. マオウ(Ephedr asinica ; Chinese Ephedra):ephedrine
   覚醒作用(覚醒剤ゼドリン、ヒロポンに繋がる)
37. トウワタ(Asclepias spp. ; Blood Flower):asclepin
   嘔吐、痙攣、高熱。呼吸困難、散瞳、強心作用
38. チョウセンアサガオ(Datura Metel ; Datura):hyoscyamine、scopolamine、
             atropine
  (薬用には曼陀羅華という)。幻覚、錯乱、譫妄
39. ペヨーテ(Lophophora williamsii ; Peyote):mescaline
   錯乱、幻覚(幸福感)、嘔吐、運動障害、、頭痛、めまい
40. ドクニンジン(Conium Maculatum ; Poison Hemlock):coniine
   (ソクラテスを殺した植物)。筋肉硬直-->呼吸麻痺。
   口内ネバネバ感、口渇、嘔気、流涎、腹痛、下痢、頭痛、発汗、めまい、
   散瞳
41. ニガヨモギ(Artemisia absinthium ; Aibsinthe):thujone
   (アブサンの主原料)。精神錯乱
42. エゴノキ(Styrax japonicus ; Japanese Snowbell):jegosaponin
   魚毒、溶血作用
43. ミトラガイナ(Mitragyna speciosa ; Mitragyna):mitragynine
   麻薬作用、幻覚、耽溺性、嘔気・気分不良
44. ゲルセミウム・エレガンス(Gelsemuim elegans ; Chinese Gelsemium)
           :gerusemine(0.05mg/kg)、koumine
   (速効性、史上最強の猛毒)。ベトナムでは「ランゴン」、本邦では「冶葛」
  としてすでに正倉院にあった。痙攣、呼吸困難







◎硫化水素中毒について(H20/5/20、Webより)
  1. 硫化水素の発生
  ムトーハップ(硫黄46%、生石灰15%)とサンポール(塩酸9.5%)の混合。
  ムトーハップ+温水+サンポール
    CaO + H2O → Ca(OH)2
    3S + 3Ca(OH)2 → 2CaS + CaS2O3 + 3H2O
    CaS + 2HCl → H2S + CaCl2
  http://www.umin.ac.jp/chudoku/chudokuinfo/e/e041.txt
  (なお実験室では硫化鉄に希塩酸または希硫酸を加えて発生させる)。
  2. 硫化水素(H2S)について
  卵が腐ったときに示す独特の臭いを持つ。腐った卵に似た特徴的な強い刺激
  臭があり、目、皮膚、粘膜を刺激する有毒な気体「硫黄の臭い」と形容される
  場合があるが、硫黄は無臭であり、これは硫化水素の臭いをさしている。可燃
  性ガスであり引火性がある。
  3. 治療
  急性中毒の治療は、まず外気に当てて衣服等に含まれる硫化水素を飛ばし、
  患者には100%酸素を吸入させる。その際再呼吸式の吸入具は有毒ガス呼出の妨
  げとなるため、絶対に使用してはならない。
  解毒剤として有効性が示されているのは亜硝酸アミルなどの亜硝酸塩のみで
  ある。硫化水素は血管壁の亜酸化窒素合成を阻害することが毒性の発現経路の
  ひとつであるためだが、曝露後数分以内に投与しなければ著効が期待できない。
  最初の数時間を乗り切った重症患者は、後に急性肺傷害を発病する危険性が
  高い。このため気管挿管と人工呼吸器管理が必要となるが、これらの処置を行
  う医療従事者は2次汚染を防ぐための万全の対策を以て臨まなければならない。
  <硫化水素中毒治療法>
    http://www.j-poison-ic.or.jp/ippan/ryugaiyou051230.pdf
    1) 基本的治療
     a. 新鮮な空気下に移送
     b. 呼吸不全を来していないかチェック
     c. 暴露された粘膜・皮膚表面は大量の水と石鹸で洗う。
     d. 保温し、安静を保つ。
     e. 救助者・医療者は二次災害を避けるために適切な呼吸保護具、
     保護衣等を使用する。
    2) 対症療法
     a. 酸素投与
     必要に応じて気道確保、100%酸素投与、人工呼吸等を行う。
     口うつし人工呼吸は避ける。
     b. 痙攣対策
     c. 低血圧対策
     d. 肺水腫対策
     e. 硫酸アトロピン投与
     副交感神経の過度の興奮による症状に有効。但し、チアノーゼ
     のある時は禁忌.
     f. その他の治療法
     ・交換輸血;全ての治療で改善がみられないなら、特に小児や幼児
        で有効
     ・チオペンタール投与および低体温療法:酸素代謝率を減少させ、
     低酸素症による中枢神経障害を防止。
    3) 特異的治療法・部位別治療法
     a. 亜硝酸塩療法
     亜硝酸アミルの吸入(亜硝酸ナトリウムがすぐ準備できる場合
     は省略してよい)に続いて、亜硝酸ナトリウムを静注する。
     b. 高圧酸素療法(HBO)
     c. 眼に入った場合
     ・基本的処置
      大量の微温湯(室温)で少なくとも15分以上洗浄
     ・対症療法
      洗浄後も刺激感や疼痛、腫脹、流涙、羞明などの症状が残る
     なら、眼科的診療必要
      その他、必要であれば、吸入の場合に準じて治療する。
     d. 経皮の場合
     ・基本的処置
      直ちに付着部分を石鹸と水で十分洗う。
     ・対症療法
      洗浄後も刺激感、疼痛が残るなら医師の診察必要