ウイルス検査の選び方と結果の解釈・ウイルス感染症

※血清診断:ウイルスに対する抗体反応は特異的なB細胞反応でこれを診断
 に応用、信頼性が高く、retrospective ではあるが原因ウイルスの確認
 が出来る。
 通常急性期と回復期の二回採血を行い、抗体陽転を確認。
  (注意:ヘルペス群ウイルスでは再活性化による抗体上昇、多クローン性
  抗体上昇など現ウイルス感染が二次的に他のウイルスの抗体価を上昇さ
  せることがある)

※ウイルス特異的 IgM抗体を用いて最近の感染を調べる。
 補体結合反応 (CF)・中和試験 (NT)・赤血球凝集抑制反応 (HI)・蛍光抗
 体法 (FA)・酵素免疫法 (EIA)・免疫粘着血球凝集法 (IAHA)・放射免疫
 法 (RI) がある。

1). 風邪症候群・眼感染症
 ◇風邪症候群 (80 - 90% はウイルスによる。マイコプラズマ > クラミジ
  ア > 細菌)
 (1). 呼吸器ウイルス
    インフルエンザA (H1N1、H2N2、H3N2)、B、C・パラインフル
    エンザ 4型・RS ウイルス1型・アデノウイルス42型・ライノウイ
    ルス100型以上
    コクサッキーウイルスA群1-24型 (23 を除く:A23 = エコー9)
    、B群1-6型、エコーウイルス1-34型 (1 = 8、10 = レオ1、28 =
    ライノ1A、エンテロウイルス 68-72)
    コロナウイルス3型・レオウイルス3型

 (2). 風邪の臨床病型
  1. インフルエンザ:インフルエンザウイルス
            主に発熱・全身症状
  2. 普通感冒:ライノウイルス・コロナウイルス・パラインフルエンザ
         ウイルス (エコー・コクサッキー)
         主に鼻炎・咽頭炎
  3. 咽頭喉頭炎:アデノウイルス・パラインフルエンザウイルス (エコー
          ・コクサッキー (ヘルパンギーナ))
          主に咽頭炎・発熱・全身症状
  4. 咽頭結膜熱:アデノウイルス
          主に咽頭炎・発熱・全身症状・眼症状
  5. クループ:パラインフルエンザウイルス
         主に喉頭炎・発熱・全身症状
  6. 気管支炎:RS ウイルス・ (マイコプラズマ)
         主に咽頭喉頭炎・気管支炎・発熱・全身症状
  7. 異型肺炎:マイコプラズマ・アデノウイルス
         主に気管支炎・発熱・咽頭喉頭炎
  8. 肺炎:RS ウイルス
       主に気管支炎・発熱・咽頭喉頭炎・全身症状

 (3). インフルエンザ
  1. 血清診断:赤血球凝集抑制反応・補体結合反応
   a. 血清採取:急性期 (発病後なるべく早く、実際上 7日以内) と回復
          期 (2 〜 3週後) の二回採血、血清分離後凍結保存。
          二つの血清をペアにして同時に検査
   b. 結果の解釈:必ずペア血清について、 回復期のそれぞれの価が急
           性期の価の 4倍以上の有意の上昇を認める必要があ
           る。
   c. ウイルス分離・抗原証明
     急性期 (発病後 3日以内) に咽頭ぬぐい液を採取 (滅菌綿棒で咽頭
     を十分に擦過し粘液を吸い取る)、直ちに小試験管中のメディウム
     に浮遊させ、短時間なら4度Cに、長期間なら -70度C に保存、
     その後ふ化鶏卵培養あるいは MDCK 細胞を用いてウイルス分離を
     試みる。
   ※インフルエンザとインフルエンザ様疾患
    イ. インフルエンザ様疾患が真のインフルエンザか否かの断定は困
      難。
    ロ. ウイルス型:A香港・Aソ連・B・C
    ハ. 上気道感染症状、高熱、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、消化器
      症状。
       (殆ど冬に流行、但し C型は散発的に発生し、診断困難)
    ニ. 臨床検査では特異的なものはない。白血球減少、CRP や ESR
      の異常が細菌感染に比べ軽度 (通常のウイルス感染に共通)。

 (4). その他
  ◇眼感染症:結膜炎:アデノウイルス (3. 4. 8. 11. 19. 37)・エンテロ
            ウイルス
   1. 咽頭結膜熱:アデノウイルス3型・80% の人は中和抗体を有す
   2. 流行性角結炎:アデノウイルス4型・8型・19型・37型
            ステロイドが奏功する
     (※単純ヘルペスウイルス結膜炎もよく似た病像を呈するのでステ
     ロイド使用の観点から区別する必要あり)
   3. 急性出血性結膜炎:アデノウイルス11型 (出血性膀胱炎も起こす)

2). 発疹性ウイルス感染症
 (1). 麻疹:パラミキソウイルス:IgM 抗体は近い過去の感染・IgG 抗体
    は免疫の有無をみる

 (2). 風疹:(発疹・リンパ節腫張・発熱) :初感染の診断は抗体陽転の確
    認と IgM 抗体の存在を証明、免疫の有無は HI か EIA

 (3). 突発性発疹:ヒトヘルペスウイルス6型:初感染の診断は抗体陽転の
    確認と IgM 抗体の存在を証明

 (4). 伝染性紅斑:ヒトパルボウイルス B19型、慢性溶血性貧血の患者で
    は aplastic crisis を起こすことがある。妊婦の罹患では胎児水腫
    をみることがある。

 (5). 伝染性単核球症 (リンパ節腫張・発熱・肝脾腫・扁桃炎・肝炎・発疹
    (3 - 19%))
    ヒトヘルペスウイルス:抗体検査:FA で IgM-VCA (viral capsid
    antigen) を証明、EA (early antigen) の証明、IgG-VCA 抗体存
    在下で EBNA (EB nuclear antigen) 抗体を認めない。EIA では
    EAIgM 抗体検出。

 (6). 水痘:ウイルス抗原の証明:水疱内容液の塗沫標本を VZV 単クロー
       ンを用いて FA で染色。迅速診断、HSV との鑑別に有用。
    抗体検査:CF・FA・EIA で IgM 特異抗体

 (7). 単純疱疹:HSV-1 (上半身の皮膚粘膜)・HSV-2 (陰部)

 (8). 手・足・口病:コクサッキーA16・エンテロ71 による

3) 中枢神経系感染症
 (1). HSV 脳炎:髄液中のウイルス DNA を PCR で検出

 (2). VZV 髄膜脳炎:同上

 (3). 麻疹脳炎・SSPE (髄液の麻疹抗体価が高い)

 (4). ムンプス髄膜炎:
     無菌性髄膜炎の鑑別診断の一つ。血清 IgM 抗体の証明は初期診
     断に有用

 (5). エンテロウイルス髄膜炎:
     夏に流行する無菌性髄膜炎の多数。髄液中からのウイルス分離と
     糞便からのウイルス分離を行う。

 (6). 日本脳炎:ペア血清からの CF あるいは HI 抗体価の上昇。

4) 消化器・循環器系感染症
 (1). ウイルス性胃腸炎:
     アデノウイルス・ロタウイルス:発症後一週間の検体採取

 (2). ウイルス性肝炎

 (3). 心筋炎・心嚢炎:
     コクサッキーB群ウイルスが主な病原、次いでコクサッキーA群
     やエコーウイルス (エンテロウイルスを含む) 等多種類

5) 母子感染と性感染症
 (1). 母子感染
  a. 胎内感染:流産・早産・子宮内胎児発育遅延・奇形・先天感染症
         異常児の出生は妊娠四カ月までにほぼ限られる
   *経胎盤感染:ウイルス血症となることが必要
   *上行性感染:子宮頚管や腟より上行性に感染
  b. 産道感染:新生児ヘルペス・B型慢性肝炎等
  c. 経母乳感染

 <妊娠中のウイルス感染による先天異常のランク付け>

ウイルス 先天異常との関連 関連がありそう 確 立 リスクが高い
  風 疹
  サイトメガロ ?
  パルボ
  HZV・VZV
  ヘルペス ○? 極稀
  コクサッキー ○?
  インフルエンザ ○?
  麻 疹
  ムンプス
  ワクシニア
  肝 炎
  風邪症候群
  ATL
  AIDS
---------------------------------------------------------------

  1. 風疹:不顕性感染が 20% ある。不顕性感染でも先天性風疹症候群児
       を出生する
    診断:IgM抗体と HI抗体を測定
    意義 #1:IgM抗体陽性なら 2 〜 3か月以内に感染あり
      #2:IgM抗体陰性かつ HI抗体が 16倍以上なら過去の感染
      #3:IgM抗体陰性かつ HI抗体が 8倍以下の時
        2週間後の HI抗体が 32倍以上なら感染あり
        2週間後の HI抗体が 8倍以下なら感染なし
  2. パルボウイルス:
     リンゴ病の原因、成人では不顕性感染・軽い疹・関節痛
     約10% に胎児異常を起こす。しかも妊娠 12 〜 28週が要注意
     胎児水腫を起こす。妊娠中絶を考慮する必要はない
  3. サイトメガロ:
     頻度は低いが重症心身障害が発症
  4. HB ウイルス:
     HBV キャリア妊婦の 20 〜 30% に母子感染が成立。
     HBeAg 陽性の場合は 95% に母子感染が成立しその大部分が
     キャリアになる
   ※予防:抗HBsヒト免疫グロブリンを出生時と生後 2か月に、HB ワ
       クチンを生後 2、3、5か月に投与
  5. 単純ヘルペス:
     産道感染し新生児ヘルペスを起こす。帝王切開の適応。
  6. HTLV-1 及び AIDS:

 (2). 性感染症
  1. HSV-1・2:HSV-2 が上半身に感染することは少ない。
  2. 尖圭コンジローマ:ヒト乳頭腫ウイルス 6型・11型による。

6). 血液感染症
 (1). EB ウイルス:
     IMN・CAEBVI・ウイルス関連赤血球貪食症 (VAHS)
     伴性劣性リンパ球増殖症候群 (XLP)
     顆粒リンパ球 (LGL) 増多症
     悪性腫瘍 (バーキットリンパ腫・上咽頭癌・胃癌等)
  a. 検査:
   イ. 蛍光抗体法にて VCA (ウイルスキャプシド抗原)、EBNA (特異的
     核内抗原)、EA-DR (早期抗原) に対する抗体を測定
   ロ. EBV リコンビナント蛋白を抗原とする EIA (酵素免疫抗体法) に
     よる EA・IgM 抗体と EBNA・IgG 抗体の測定。特異性、感度と
     もに優れる。
  b. 検体の採取:IMN の様に急性のものはできるだけ早期に血清を採取
          、慢性経過のものは定期的に経過を追う。末梢血中の
          EBNA 陽性細胞の検出目的にはヘパリン採血後の
          buffy coat を検体とする。
  c. 結果の解釈
   イ. VCA・IgG 抗体、VCA・IgM抗体、EA 抗体陽性で EBNA 抗体陰
     性は初感染パターン。但しVCA・IgM 抗体の陽性は IM で 37 〜
     86%
   ロ. 急性期 IgM 抗体が陰性でも EBNA 抗体が陰性で VCA・IgG 抗体
     陽性、EA-DR 抗体陽性の場合には初感染。
   ハ. 慢性感染では VCA・IgG 抗体価が高値、VCA・IgM 抗体陰性、
     EBNA 抗体陽性。EA-DR・IgG 抗体価も高値のことが多い。
   ニ. リンパ球増殖症候群等重症感染症の一部で抗体反応が不完全の場
     合は末梢血中の EBNA 陽性細胞や EBV 核酸の検出

 (2). HTLV-1

 (3). HIV








ウイルス感染症の復習

 #1. ウイルスの同定。

 #2. 飛沫感染といっておけば先ず良し。水痘で接触感染が例外的。

 #3. 潜伏期:風疹、水痘、流行性耳下腺炎が 2 〜 3 週間 (14 〜 21日)
       で、麻疹が10 〜 12日と幅が少ないのが例外的。

 #4. 症状

 #5. 合併症:教科書通りで覚えるだけ。#4 は熱型と発疹 (症状) の時間
       的な関係をチェック。








流行性耳下腺炎 (ムンプス)

※耳下腺の腫脹:コクサッキー・パラインフルエンザ・化膿性耳下腺炎・唾
        液腺結石等
 ◇再感染率:約5%、軽症に経過、合併症・両側腫脹等少ない。
 ◇ワクチン有効率:90% 前後だろう。
  ムンプスの既往のある成人にムンプスワクチンを接種しても、局所の発
  赤を起こすことはあるが特に問題ない。追加免疫効果が得られる。

※症状と合併症 (頻度%)
 耳下腺炎 (100.0)、発熱 (81.1)、全身倦怠 (67.I)、嚥下困難 (66.2)、食
 思不振 (63.5)、頭痛 (61.8)、耳痛 (44.6)、咽頭痛 (41.1)、すっぱい食
 物摂取での痛み (33.3)、易刺激性 (31.9)、悪心 (22.7)、嘔吐 (8.0)、腹
 痛 (22.3)、下痢 (6.7)、全身の痛み (17.1)、関節痛 (16.2)
 睾丸炎・12歳以上の男児 (9.1)
 乳腺炎・12歳以上の女児 (7.7)
 卵巣炎・12歳以上の女児 (3.8)
 膵臓炎 (2.7)。

※睾丸炎は耳下腺腫脹が治まった頃に来る様ですがなぜか?

※睾丸炎時の治療法は?、ステロイドを使ってもいいのか?
 通常、感染後ウイルスは気道粘膜で増殖し、その後ウイルス血症を起こし
 全身に散布されると、教科書には書かれている。それで、唾液腺腫脹と他
 の合併症との時間的な関係はいろいろ。
 記載のあるのは、髄膜炎との関係です。二つの報告がある。
 唾液腺腫大前 19%、同時 23%、腫脹後 1 〜 4日 41%、7日以降 4.9%。
 唾液腺腫大前 7.7%、同時 6.5%、最多は腫脹後 3 〜 5日 59.8%。

Nelson (小児科の教科書) には、
Orchitis should be treated with local support and bed rest.
と書かれている。

※ウイルス学的・血清学的診断方法
 髄液中などのムンプスウイルス RNA を RT-PCR 法で検出できる。
 普通のウイルス分離 (唾液、尿、髄液)。
 酵素抗体法のムンプス IgM[EIA] は急性期にやることもある。
 ムンプス IgG[EIA]、HI をペア血清でやったりする。

※顎下腺腫脹と顎下リンパ節の腫脹を理学的に区別するいい方法わりあい、
 分かりにくい。
 耳下腺は耳介の延長線上で、前後および後方に 2等分されます。この 2等
 分は腫脹しても変わらないといわれている (リンパなら(後方に)偏る) 。
 さらに、両側性にくれば、リンパよりも耳下腺らしいということ。
 耳下腺の開孔部 (Stensen) の発赤、腫脹がどうか (膿が出れば化膿性)。
 酸っぱい物で疼痛が増強すれば、唾液腺がやられてる。

※ムンプス難聴診断基準
 1. 確実例
  (1). 耳下腺・顎下腺腫脹など臨床的に明らかなムンプス症例で、腫脹出
     現 4日前より出現後 18日以内に発症した急性高度難聴の症例 (こ
     の場合、必ずしも血清学的検査は必要ではない)
  (2). 臨床的にはムンプスが明らかでない症例で、急性高度難聴発症直後
     から 2 〜 3週間後にかけて血清ムンプス抗体価が有意の上昇を示
     した症例
  注1:(1) においては、はじめの腫脹側からの日をいう
  注2:(2) において有意とは、同時に、同一キットを用いて測定して
     4 倍以上になったものをいう
  注3:難聴の程度は必ずしも高度でない症例もある

 2. 準確実例
   急性高度難聴発症後 3か月以内にムンプス IgM 抗体が検出された症例

 3. 参考例
   臨床的にムンプスによる難聴と考えられた症例
   注1:家族・友人にムンプス罹患があった症例など
   注2:確実例 (1) における日数と差のあった症例

※ムンプス難聴は、流行性耳下腺炎の合併症のひとつで、一側性のものが多
 いそうです。症状は難聴ですが、電話が聞こえない、ささやき遊びのとき
 に見つかったなど。耳鳴、めまいも関連の症状のようです。
 髄膜炎がおこってからというわけではなく、必ずしも関係はない。
 発症時期は「確実例」にあるように、「腫脹出現 4日前より出現後 18日
 以内に発症」と。「参考例」の注2:は、難聴の発症時期なのか、発見時
 期なのか。つまり、乳幼児などで、見落としの可能性がある。








ロタウイルス (ウイルス性胃腸炎の主原因)

(1). 感染様式:
    新生児では母親の抗体により不顕性感染、通常 6か月から 2 才の
    間に主に冬季にみられる。年長児や青年では嘔気・嘔吐が主症状、
    下痢は少ない。
    老人では下痢を伴う。 (経口感染といわれるが気道感染も否定出来
    ない)

(2). 非定型症状:
    1/2 に呼吸器症状、1/20 〜 1/30 に発疹ありさらに無熱性痙
    攣・脳症、肝炎を呈することもある。








ヒト・パルボウイルス (PV-B19) 感染症

◇症状は多彩である。潜伏期は約 7 〜10日で、顕性感染ではその後上気道
 症状と様々な程度の発熱で発症、数日現れる。発疹はその後出現する。
 感染して発疹を認めるまでの期間は 12 〜18日。

◇発疹が初発と考えられることが多いが、その前に、発熱 (27%)・咽頭痛
 (32%)・咳 (20%以下)・鼻水 (20%以下) が見られるとの報告あり。

◇熱の高さで PV-B19 感染を否定出来ない。インフルエンザ様症状もあり
 うる。咽頭発赤は発疹期に出現する。

◇発疹はバラエティーに富んでおり、紅斑が普通。時に斑丘疹様、蕁麻疹様
 になり出血性水膿疱を呈した (この例は基礎疾患あり) 症例もある。
 持続期間は10日くらいだが、いったん消えて再発現する症例や、30日以
 上続く症例もある。

◇PV-B19 の検査:ゲノム DNA と抗体 (IgG・IgM) を調べる。0.5ml の
 血液があればいい。急性期は網赤血球減少が参考になる。

◇病態・臨床症状は多彩:伝染性紅斑、不定発疹症、高熱・筋肉痛、関節炎
 、紫斑病 (血小板減少や血管性)、溶血性貧血、bone marrow aplasia、
 血球貪食、持続性貧血、脳炎・脳症、横断性脊髄炎、急性小脳失調、末梢
 神経炎、心筋炎、肝障害、腎炎、Still病、胎児感染 (流産、死産、胎内
 発育遅延、胎児水腫、貧血、心筋障害、脳障害、出生時の赤芽球勞、髄膜
 炎)

◇PV-B19 の免疫持続は顕性感染でも不顕性でも基礎に免疫異常がなけれ
 ば生涯続く。従って二度なし病である。








破傷風

◇動物による咬傷時の破傷風予防対策
 (1). 動物による咬傷は汚い傷で常に破傷風の予防を考慮すべきである。
    外傷部位の 3% から破傷風菌が分離される。日本では 20 〜 30人が
    年間に死亡。

 (2). いかなる外傷でも少なくとも破傷風トキソイドを注射する。

 (3). 破傷風予防注射回数が皆無か一回しか受けてない者を非免疫者という
    が、非免疫者に対しては通常テタノブリンを 250単位注射、その後
    同日でも数日後でもいいから破傷風トキソイドを注射して活動免疫
    を開始する。

 (4). 破傷風トキソイドは 0.5ml ずつを 4 〜 8W 間隔で合計 2回行い、
    6 〜12か月後に 3回目を注射する。

 (5). 非免疫者の外傷にたいしてはこれを機会に少なくとも 3回の予防注射
    計画をたてる。

 (6). 免疫者では追加免疫を一回のみ行う。








寄生虫感染症

1. Creeping disease:進行性線状疹を呈する疾患の総称
 (1). 皮膚顎口虫症
    ドジョウ・ライギョ・フナ・コイ・ボラ・ニワトリ・マムシの生食
    による

 (2). その他:旋尾線虫亜目 type X幼虫、ウマバエ幼虫、ウシバエ幼虫、
        鉤虫等








深在性真菌症

※深在性真菌症は日和見感染として増加傾向

※カンジダ属・クリプトコックス属 (酵母状真菌)、アスペルギルス属 (糸状
 菌)が主な原因。

※輸入真菌症:コクシジオイデス (アメリカより)、プラストミセス (アフリ
       カより)

A. 病態
 1. カンジダ症
   外因性感染 (IVHカテーテル、尿道留置カテーテルより)
   内因性感染 (日和見感染等、生体防御能低下に伴う)

  a. 口腔食道カンジダ症
   イ. 口腔粘膜や舌表面に白色の偽膜を形成
   ロ. 食道に内視鏡的に斑状の白苔を認める
   ハ. AIDS 患者や長期吸入ステロイド投与中の患者

  b. 尿路カンジダ症・カンジダ腟炎
   イ. 尿路カンジダ症は尿道留置カテーテル患者に抗生剤を使用してい
     る時菌交代現象として真菌が定着、但し感染との鑑別は困難
   ロ. カンジダ腟炎は腟粘膜に真菌が定着し侵入する。帯下や掻痒感あ
     り

  c. カンジダ肺炎
   イ. 免疫不全患者の終末期感染。多くは播種性カンジダ症の部分症状
   ロ. カンジダ属は口腔や気道内の常在真菌のため臨床的診断は極めて
     困難 (喀啖より分離されても診断に意味を持たない)
   ハ. 血行性感染は剖検時に確定診断される

  d. カンジダ血症
   イ. 意味あるカンジダ症として最も一般的な深在性真菌症
   ロ. 広域抗生剤投与中の患者で IVH カテーテル留置症例に多い
   ハ. 発熱・炎症反応あり、血液培養でカンジダ属を分離して確定
   ニ. 同時にカンジダ眼内炎を併発することも多く、眼症状で眼科的に
     発見される場合も多い

  e. 肝脾カンジダ症 (慢性播種性カンジダ症)
   イ. 白血病など血液悪性疾患の化学療法中に白血球減少を呈した患者
   ロ. 消化管内で増殖したカンジダ属が障害された消化管粘膜より血行
     性に肝臓や脾臓に播種して、多発性の小膿瘍を形成
   ハ. 診断:発熱・炎症反応、ALP 増加、エコーや CT で膿瘍の確認

  f. 急性播種性カンジダ症
   イ. 著明顆粒球減少患者や強力な免疫抑制療法中の患者
   ロ. 重篤な全身性カンジダ症
   ハ. 消化管内で増殖したカンジダ属が障害された消化管粘膜より血行
     性に侵入
   ニ. 合併症:
      中枢神経性カンジダ症、カンジダ心筋炎、カンジダ骨髄炎、
      炎症反応の他、神経症状、不整脈、骨痛などを呈する

 2. クリプトコックス症
   やはり酵母状真菌である、Cryptcoccus neoformans の感染による
   深在性真菌症。
   土壌や古い鳩の糞中で生息しそれを経気道的に吸入して、肺に感染巣
   を形成。
   髄膜に親和性をもっており髄膜炎を発症。
   compromised host では全身性クリプトコックス症を起こす。

  a. 肺クリプトコックス症
   イ. 原発性:多くは無症状、健診や他疾患で偶然発見、胸膜の比較的
     近傍に孤立性、あるいは多発性結節影を認め、約半数例は空洞あ
     り
   ロ. 続発性:原発性と比べて発熱・咳・喀啖が比較的多い
         胸部レ線陰影は浸潤影や小粒状影や間質影等多彩

  b. クリプトコックス髄膜炎
   イ. 急性又は亜急性発症。発熱・頭痛・嘔吐・意識障害
   ロ. 病巣は大脳皮質・脳幹・小脳にも及んで巣症状や局所神経症状を
     呈することもある
   ハ. CSF:初圧上昇、細胞 (リンパ球) 増加、糖低下、蛋白上昇
   ニ. 墨汁染色で厚い莢膜を有する菌体を認める

 3. アスペルギルス症
   自然界に広く生息する Aspergillus 属の空気中に浮遊する胞子を吸入
   することによって副鼻腔・気管支・肺に定着感染する

  a. アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA)
   イ. Rosenberg の診断基準:
      喘息発作、末梢血好酸球増多、アスペルギルス抗原に対する即
      時型皮内反応陽性、アスペルギルス抗体に対する沈降抗体陽性
      、血清 IgE 高値、繰り返す肺浸潤影、中枢性気管支拡張症
   ロ. 発症機序:
      アトピー型喘息患者がアスペルギルス抗原を吸入し、IgE 抗体
      が産生され、I 型アレルギーが成立。次いで喘息の粘稠な喀啖
      により菌が停滞増殖し、これが抗原となって沈降抗体が産生さ
      れ III型反応が惹起される。さらに IV型反応が加わり肺の浸潤
      影と気道破壊を生じる

  b. 肺アスペルギローマ
   イ. 一般的には肺結核の遺残空洞に腐生的にアスペルギルスが定着
   ロ. 長い年月で次第に進行。殆ど無症状。発熱・喀血・喀啖を時々み
     る。呼吸不全や肺病変は進行して予後はそれほど良くない。
   ハ. 典型的な症例は空洞内に菌球を形成。
   ニ. 壁在増殖型肺アスペルギローマでは菌球を認めないで空洞壁の肥
     厚や空洞近傍の胸膜の肥厚が進行 (後に菌球形成のこともある)

  c. 慢性壊死性肺アスペルギルス症
   イ. 糖尿病や、軽い免疫抑制状態の患者において、明かな先行空洞病
     変がなく数か月から数年の経過で空洞や菌球を形成
   ロ. 肺アスペルギローマと侵襲性肺アスペルギルス症の中間的病態で
     、この状態の独立性を疑問視する者もある

  d. 侵襲性肺アスペルギルス症
   イ. 好中球減少、臓器移植後、ステロイド大量長期投与中に発症、予
     後不良。
   ロ. 胸部レ線で浸潤影から急に空洞形成。または胸膜側に底辺を有す
     る如き梗塞様陰影または浸潤陰影が出現し急速に悪化。

B. 診断
 ※分離培養
  サブロー寒天培地:カンジダ属、アスペルギルス属
  バーシード寒天培地:クリプトコックス属
  血液培養:増菌のための液体培地 (カルチャーボトル) や溶血遠心法え
       を用いる

 1. 血清学的診断法
  a. カンジダ症
   イ. ファンギテック Gテスト (定量法)
    ・感度が高い。種特異性なし (汚染に注意)。
    ・定量性があり治療効果判定や予後判定にある程度役立つ。
    ・侵襲性肺アスペルギルス症の補助診断法としても有用。
    ・測定法がやや煩雑だが広く利用されている。
   ロ. パストレックスカンジダ (ラテックス凝集反応、半定量)
    ・陽性ならカンジダ症の可能性が高い。
   ハ. カンジテック (ラテックス凝集反応、半定量)
    ・スクリーニングにはいいが特異性が低い。

  b. クリプトコックス症
   イ. セロダイレクト栄研クリプトコックス:極めてすぐれた血清学的
     診断法
    ・ラテックス凝集反応
    ・トリコスポロン症の原因である Trichosporon beigelli と交差
     反応し偽陽性となることに注意
    ・肺クリプトコックス症では 80 〜 90% に陽性。
     クリプトコックス髄膜炎では 95% 以上の髄液で陽性。

  c. アスペルギルス症
   イ. パストレックスアスペルギルス (ラテックス凝集反応、半定量)
    ・最もよく用いられる。
    ・特異性に優れるが感度は不十分。
    ・早期診断には有効でないので侵襲性肺アスペルギルス症には補助
     診断の意味がない。
   ロ. プラテリアアスペルギルス (ELISA、定量)
    ・開発研究段階、臨床検討段階。
    ・感度はラテックス凝集法の約 5倍に向上。侵襲性肺アスペルギル
     ス症で威力を発揮するかも知れない。

 2. 遺伝子診断法
   感染症における遺伝子診断法は PCR 法の登場で目覚ましい発展をとげ
   ている。真菌症においては PCR 法は血液等無菌的な検体でないと意味
   がないが、侵襲性肺アスペルギルス症の診断には迅速診断・迅速治療
   が必要で、今後の発展に期待されている。

C. 治療
 1. カンジダ症
  a. 口腔・食道カンジダ症
   イ. FLCZ (トリアゾール系) 100 〜 200mg/日 を一日一回経口投
     与。または
   ロ. MCZ (イミダゾール系) ゲル剤 10 〜 20g/日 を一日四回口腔内
     塗布。
   ハ. 耐性菌感染:AMPHシロップ 4 〜 7g/日 を一日数回に分けて投
     与。

  b. カンジダ血症・播種性カンジダ症
   イ. FLCZ 200 〜 400mg/日 を一日一回点滴静注。または
   ロ. MCZ 800 〜 2000mg/日 を一日2〜3回に分けて点滴静注。
   ハ. 重症例・好中球減少例:AMPH 0.5 〜 1.0mg/kg/日 を 5%ブド
     ウ糖液に溶解して 6 〜12時間で点滴静注。

 ※投与期間・治療期間は症状等より判断するが一般的には 4 〜 6週間で
  ある。
 ※予防的投与は骨髄移植では確認されているが一般的には耐性出現などか
  ら考えて、行わない。

 2. クリプトコックス症
  a. 原発性肺クリプトコックス症
   イ. FLCZ (トリアゾール系) 200 〜 400mg/日 を一日一回経口投与

  b. 続発性肺クリプトコックス症
   イ. 軽症例:FLCZ (トリアゾール系) 200 〜 400mg/日 を一日一回
         経口投与。
   ロ. 中等症以上例:FLCZ と 5-FC (経口) の併用投与。
   ハ. 以上の無効例や髄膜炎例:AMPH と 5-FC (経口) の併用投与。

 ※投与期間・治療期間は症状等より判断するが困難なことが多い。
 ※血清中の莢膜抗原は長期治療した症例でも陽性が持続することあり。
  髄膜炎では CSF の抗原価が重症度や治療期間の目安となっている。

 3. アスペルギルス症
  a. 肺アスペルギローマ
   イ. 原則は外科手術。
   ロ. 高齢・低肺機能 (外科手術不能)
     ITCZ (トリアゾール系) を 100 〜 200mg/日を経口投与。
   ハ. 以上の無効例では AMPH 5 〜 10mg を局所投与 (気管支鏡や経
     皮カテ)

  b. 侵襲性肺アスペルギルス症
   イ. 早期から十分な AMPH 0.5 〜 1.0mg/kg/日 を 5%ブドウ糖液に
     溶解して 6〜12時間で点滴静注。(副作用対策のため初回は
     0.2mg/kg/日)

  c. アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA)
   イ. ステロイドを投与。
     初回プレドニゾロン 40mg/日 を 2 〜 3回に分けて投与、その
     後 1 〜 2週間毎に 5mg ずつ漸減し症状等見計らって中止。
   ロ. ITCZ を併用してステロイド量を少なくするという報告あり。








全身性炎症性反応症候群 (SIRS)・全身性炎症性反応性症候群

◇fetures of the Systemic Inflammatory Response Syndrome

 (1). A temperature above 38℃ or below 36℃

 (2). A heart rate above 90 per minutes

 (3). More than 20 respirations per minutes

 (4). A partial pressure of carbon dioxide under 32mmHg

 (5). A white cell count over 12000 or under 4000 per cubic
    millimeter more than 10% band forms