肺癌:気管支上皮より発生

◇危険因子:タバコ (女性は関係なし) ・喘息

◇症状から:風邪症状・嗄声・ネフローゼ・四肢シビレ感、脱力感・肩こ
      り・胸痛・背部痛

◇客観的所見:喀痰細胞診・高コレステロール + 低蛋白

◇検査・血液データ・確診:ヘリカル CT・BF
 ※男:1/2500 女:1/7000 - 8000 (53/10万)
 ※集団検診における癌発見率:肺癌は増加しておりこの数字は変化する。
  また対象年齢によっても異なるので、下記肺癌集団検診例で見当を付け
  る。
 ☆東京葛飾区における 40歳以上の肺癌集団検診では肺癌発見率は 0.086
  〜 0.116% (86 〜 116/100000万人) だった。 (要精検率は 2%前後)
  a. 検診初年度 (1985 〜 1988) の癌発見率は 283 〜 187 〜 142 〜
    147/100000 だった。その後は大体 100/100000 前後と安定し
    た癌発見率であり前年度の積み残しを10%としても、新肺癌発症患
    者は 90/100000 (0.09%) 位と考えられる。
    (○初年度 4年間の平均肺癌発見率は 190/100000 で、最近 4年間
     (1991〜1994) の平均肺癌発見率は100/100000であった。)
  b. 40歳以上では男性:女性 = 2:1 であった。
  c. 喀啖細胞診では、要精検・癌確定とされた者は 65歳以上の対象者に
    有意に多かった。過去 5年間の合計の癌発見率は 257/100000
    (0.26%) であった。
    (○喀啖細胞診での肺癌発見は 21(男17・女4)/8170 で a. の中に
    含まれる)
 ★ 平塚市肺癌検診について
  ○延べ受診者数 81215人 (男性:23695、女性:57520)
  ○癌発見率:91.1/100000 (発見肺癌 74例)
  ○分類:腺癌 (34例)・SCC (29例)・小細胞癌 (7例)・大細胞癌 (1例)
      カルチノイド (1例)
  ○累積生存率:49% (5年生存率)、32% (10年生存率)
   (付録(1)) 国立癌センターの検診ルート発見群 1297例にて
        32.4% (5年生存率)、22.5% (10年生存率)
   (付録(2)) 国立癌センターの症状による発見群では
        13.7% (5年生存率) 、9.9% (10年生存率)
 ※受診者の精密検査後の結果 (精密検査率 = 1910/81215 = 2.35%)
  異常なし (1051例・55%)・陳旧性肺結核 (325例・17%)・肺炎 (156
  例・8.2%)
 ●原発性肺癌 (74例・3.9%)・無気肺 (69例・3.6%)・慢性気管支炎 (55
  例・2.9%)・心臓大血管異常 (28例・1.5%)・肺線維症 (25例・1.3%)
  ・活動性結核 (21例・1.1%)
 ●その他の悪性腫瘍 (17例・0.9%)・ 肺嚢胞症 (15例・0.8%)
 ●縦隔腫瘍 (13例・0.7%)・塵肺 (6例・0.3%)・石綿肺 (3例・0.2%)
 その他 (52例・2.7%)

◇肺癌の分類
 SCC:40%・男・肺門・無機肺・空洞・予後比較的良・喀啖検査・90日
    (2倍)
 AdC:35%・女・末梢・コイン・早期転移・予後不良・180日
 SmC:20%・男・肺門・リンパ節転移・ホルモン産生・E-Lsynd・30日
 LCC:5%・末梢・結節影・予後不良
*注意:ChE ↑↓・CPK ↑↓

★気管支腫瘍・気管支癌
※全気管支腫瘍の 86% は下記の (太字*) 印で占められる。
 ◇Epithelial neoplasms
  ○良性:SQUAMOUS CELL PAPILLOMA* ; Papillomatosis ;
      Pleomorphic adenoma
  ○悪性:SCC* ; ADENOID CYSTIC CARCINOMA* ; CARCINOID* ;
      MUCOEPIDERMOID CARCINOMA* ; Adenocarcinoma ;
      Squamous-cell undifferentiated carcinoma
  ○Secondary malignancies:Invasions by adjacent malignancy
      ; Metastases
  ○Non-neoplastic tumors:Tracheobronchopathia osteochon-
      droplastica ; Amyloidosis ; Inflamatory pseudotumor
 ◇Mesenchymal neoplasms
  ○良性:Fibroma ; Hemangioma;Granular cell tumor ;
      Schwannoma ; Neurofibroma ; Fibrous histiocytoma ;
      Pseudosarcoma ; Hemangioendothelioma ; Leiomyoma
      Chondroma ; Chondroblastoma ; Lipoma
  ○悪性:Leiomyosarcoma ; Chondrosarcoma ; Paraganglioma ;
      Spindle cell sarcoma ; Lymphoma ; Malignant fibrous
      histiocytoma (MFH) ; Rhabdomyosarcoma
 ◇症状:3/4 stenosis まで症状は少ない。
     dyspnea, cough, stridor, wheezing, hemoptysis
     喘息や慢性気管支炎と間違うことが多い。








乳癌

◇危険因子:未婚者・未産婦・高年出産・家族歴 (遺伝)・初潮の早かった
      人・閉経の遅かった人・閉経後の肥満

◇症状から:自己検診でしこりを認める・腰背頚部痛

◇検査・血液データ・確診:エコー・バイオプシー

※集団検診における癌発見率:0.049%
※視診・触診による標準検診での発見率 (厚生省・富永班)
   :0.9人/1000人 (早期癌 40 〜 50%)








乳癌の危険因子 (重要!!)

 未婚者・未産婦
 高年出産 (初産年齢 30歳以上も)
 家族歴
 初潮の早かった人 (11歳以下)
 閉経の遅かった人 (55歳以上)
 閉経後の肥満
<乳癌検診:生理後 5 - 7 日後・服薬状況も考慮>
*注意:ChE ↑・Tch ↑
*要注意:高脂肪・高栄養・アルコール・良性乳腺疾患の既往・放射線多量
     または頻回被爆。 (たばこ・エストロゲンの影響は inconclu-
     sive)








口腔癌

◇危険因子:アルコール・タバコ

◇症状から:無症状 (アフタ様潰瘍が時に痛む)

◇客観的所見:白斑、紅斑、白斑紅斑混在、浅い潰瘍・びらん、肥厚、小腫
       瘤形成
       上記病変が軟膏貼付等の処置で 2週間後でも消失・縮小が見
       られない。

◇検査・血液データ・確診:生検

※全癌の 1 - 3%、舌・下顎に多い、50才以降、男に多い








食道癌

◇危険因子:アルコール・タバコ

◇症状から:嚥下障害・嚥下痛・狭心痛・胸痛・嗄声・腰部痛

◇客観的所見:貧血・低蛋白

◇検査・血液データ・確診:GFS








胃癌

◇危険因子:遺伝する場合あり

◇症状から:腹部の症状全て・タール便・卵巣腫瘍・(妊娠)・腰背頚部痛・
      胸痛・頑固な湿疹・すぐ満腹になる・下肢浮腫

◇客観的所見:貧血・低蛋白

◇検査・血液データ・確診:GFS

※ペプシノーゲン法は集団検診における胃癌の従来の発見率の約3倍位
 (1/300 --> 1/100) の効果があるがもちろん不十分。
 (私見では1/20 ないし1/30 の発見率にまでもってゆかぬと意味がない)
※罹患率:120 - 160(150)/10万 (40 - 69才:160、全年齢:140)
※死亡率:50 - 60% (55%)
※集団検診における癌発見率:0.15% (40才以上の 1/300 ともいわれる)
 (スクリーニングから精検へ 3 - 5% をもってゆくのが理想)
※日本全国集計 (1992年度・40才以上):検診数:5813644人
 要精検者数 : 770784人 (13.3%):精検受験者数 : 558783人
       (558783/770784 = 72.5%)
 発見癌数 : 6086人(6086/5813644 = 0.10%):早期癌はこの内 53.6%

★胃癌 (gastric cancer) (gastric carcinoma)
 ◇胃癌の危険因子
  ○前癌病変・状態
   (1). 慢性萎縮性胃炎・化生性胃炎
   (2). 悪性貧血 (pernicious anemia)
   (3). 良性胃病変に対して部分的胃切除をしたもの
   (4). Helicobacter pylori の感染
   (5). メネトリエ病
   (6). gastric adenomatous polyp (ATP も含む)
   (7). バレット食道
  ○遺伝因子・環境因子
   (1). 胃癌の濃厚な家族歴がある時
   (2). 血液型の A型
   (3). 遺伝性非ポリポージス性大腸癌症候群 (hered. nonpolyposis
      colon ca. synd.)
   (4). 社会的・経済的低階級
   (5). 果物や野菜を余り食べない。
   (6). 塩漬けした食物、薫製食品、十分に作成されてない (poorly
      preserved) 保存食品
   (7). タバコ (葉巻ではない、シガレット)

 ◇胃癌診断時の症状
  体重減少 (61.6%)・腹痛 (51.6%)・嘔気 (34.3%)・食欲不振 (32.0%)
  ・嚥下困難 (26.1%)・下血 (20.2%)・すぐに満腹 (17.5%)・胃潰瘍の
  様な痛み (17.1%)・下肢の浮腫 (5.9%)








大腸癌
 (50% は直腸癌・40才以上の 1/600 〜 1/800・50 〜 60% が早期癌)

◇危険因子:遺伝性濃厚

◇症状から:便秘・圧痛のない心窩部痛 (不快感)・血便・しぶり腹・便通
      異常

◇客観的所見:肛門指診・検便 (潜血陽性)・貧血 (大腸癌の約10%に存在)
       ・低蛋白

◇検査・血液データ・確診:CF

※肛門出血 (血便・顕出血) の 3%に癌がある。
※大腸癌の 73% は無症状 (集団検診の発見率は 0.18%、うち早期癌は
  31.2%)
※何らかの症状を訴えた者の癌患者のうち早期癌は 14.1%
※集団検診における癌発見率:例 (1). 0.17 % 〜 0.18% (40才以上の
  1/800 ともいわれる)
 (要精検率は 2.5 〜 3.0% 程度) (2). 0.09% (257/295678・うち早期癌
  = 50%)
※S状結腸癌はアルコールと関係あり (3 〜 5倍)
※人間ドックでの発見率 (秋田赤十字病院、1984/5 〜 1995/4:10622
 人の無症状例)
 ・癌:1.13% (進行癌 : 0.06%、早期癌 : 1.07%(早期癌の内、便潜血陽性
    は25%))
 ・カルチノイド:0.12%、腺腫:10.34%、粘膜下腫瘍:0.27%
※日本全国集計 (1992年度・40才以上)
 ・検診数 : 1851107人
 ・要精検者数 : 121338人 (6.6%)
 ・精検受験者数 : 75269人 (75269/121338 = 62.0%)
 ・発見癌数 : 2793人 (2793/1851107 = 0.15%)
       早期癌はこの内 58.9%

◇予防
 (1). NSAID (アスピリン・スリンダク・インドメタシン等) が有力。
 (2). 低脂肪・高線維食 (30g/日 程度。穀類・有色野菜・果実)
 (3). リノール酸 (ω-6 系脂肪酸) を少なくする。








肝癌

◇危険因子:HB・HC キャリア (かつ血小板数低下)

◇症状から:特に無症状

◇客観的所見:HB・HC キャリア・血小板数低下・コリンエステラーゼ低下

◇検査・血液データ・確診:CT・エコー・血管造影

※約 70% が C型肝炎ウイルス感染者で約 20% が B型肝炎ウイルス感染者
※27/12万 (0.23%) の発生率
※1993年度肝癌による死亡者数:27765人 (男 : 20060、女 : 3793) 。
                この 20年で約 2.6倍。
※B・C型肝炎よりの肝癌発症率

肝組織像 症例数 観察期間 癌発症数 発生率
(/10万)
 B-CPH 53 73.8 ヶ月  2 612 
 B-CAH2a 38 71.8 ヶ月  1 439 
 B-CAH2b 36 70.8 ヶ月  2 939 
 C-CPH 36 72.6 ヶ月  1 457 
 C-CAH2a 43 76.8 ヶ月  4 1450 
 C-CAH2b 45 70.8 ヶ月  8 3005 








胆嚢・胆道系癌

◇危険因子:結石症

◇症状から:心窩部痛 (不快感・圧痛)・黄疸・腰背頚部痛・食欲不振・下
      痢・胆道系・感染症・肩こり

◇客観的所見:検便 (潜血陽性)・貧血・低蛋白・高コレステロール

◇検査・血液データ・確診:ERCP・CT・エコー・血管造影








膵癌

◇症状から:糖尿・心窩部痛 (不快感・圧痛)・黄疸・腰背頚部痛・食欲不
      振・下痢

◇客観的所見:高血糖・低リン・高コレステロール・低コレステロール

◇検査・血液データ・確診:ERCP・CT








腎癌

◇症状から:特に無症状・膀胱炎、腎盂炎様症状・腰痛・発熱・高血圧・
      咳、風邪症状

◇客観的所見:無痛性血尿

◇検査・血液データ・確診:CT・エコー・血管造影

※腎細胞癌:2.5人/10万人・男:女 = 2.5:1・60歳以上・両側:3%








膀胱癌

◇危険因子:染料を扱う

◇症状から:繰り返す膀胱炎様症状・水腎症

◇客観的所見:無痛性血尿

◇検査・血液データ・確診:エコー・膀胱鏡








前立腺癌・尿道癌

◇症状から:尿閉・残尿感・膀胱炎様症状・腰痛・(不正性器出血)

◇客観的所見:肛門指診・水腎症

◇検査・血液データ・確診:PA (PSA)・尿道 (膀胱) 鏡

※前立腺癌の死亡率:4/10万人 (悪性腫瘍の11位、死亡数は 4000人/年
          程度)

※黒人(70) > 白人(40) > 日系ハワイ人(25) > 日本人(4/10万)
 ラテント癌 (剖検癌) は人種に関わらず同じ (25-35/10万)








子宮癌
 ※1990年子宮体癌/子宮癌は 26.7% と増加 (1975年は14.6% だった)

◇危険因子:既婚者・多産婦
 ※子宮体癌の危険因子:高血圧・糖尿病・肥満が指摘されている。

◇症状から:不正性器出血

◇客観的所見:貧血

◇検査・血液データ・確診:エコー・CT・膣鏡

※集団検診における癌発見率:0.067%
※子宮頚部癌の 69% に HPV (ヒトパピローマウイルス) 感染が認められ
 る。
※子宮頚部異形成の約 30% が癌化すると予想されている








卵巣癌

◇症状から:腹痛・便秘・腰痛・咳、風邪症状

◇客観的所見:生理異常

◇検査・血液データ・確診:エコー・CT・腫瘍マーカー








悪性腫瘍発生率・罹病率についての考察

その1). 癌の罹病率についての一考察 (H8/9/30・鳥越)
★★悪性腫瘍の新しい発症率は 380 〜 410人/10万人/年 である。
(考察)
 平成 7年において悪性腫瘍による死亡は約24.4万人、悪性腫瘍はその約
 半分が死亡原因になるという事から、悪性腫瘍の新しい発症を約50.0万
 人と計算する (この計算が合理的かどうかは分からないが)。つまりここ
 数年は約50.0万人が新たに悪性腫瘍と診断され、今迄に既に悪性腫瘍と
 された人のうち約半分が死亡していると仮定するのである (2倍より多め
 なのは、総人口の増加と癌年齢人口の増加を考慮)。
 ここでそれぞれの悪性腫瘍の発症率や、死亡率の変化は無視する。(ここ
 5年悪性腫瘍死亡の全死亡に対する割合は 26 〜 28% で少なくとも有意
 に序々に増加しているとは言えない(H2:25.9・H3:27.0・H4:26.5・
 H5:26.8・H6:27.8・H7:26.8))。
 従って、この考えを井原市 37000人に適用すれば、日本の総人口を
 12700万人として一年間の悪性腫瘍の新たな罹病数は
  146人(50 x 3.7/12700 = 0.0146万人)
 となる。この結果は別の観点からみた推論 (前述) からも妥当な結果であ
 り、全国的にも悪性腫瘍の新しい発症率は 380 〜 410人/10万人/年と
 計算される。

その2). 悪性腫瘍の罹病率の推定 (大胆な仮定より、H9/2/27、鳥越)
 日本の悪性腫瘍死亡数では、その 98% 以上が 40歳以上の患者である。
 悪性腫瘍は 40 〜 79歳の間に集中し、80歳を越えると発症率も死亡率も
 低くなっている。
 ここで、40 〜 49、50 〜 59、60 〜 69、70 〜 79 に分けて考えるこ
 ととして、それぞれの悪性腫瘍の発症率は 2倍になると単純に決める時日
 本人の1/2 は悪性腫瘍に罹患する計算になるから、

 40 〜 49歳:1/32 = 3.1%
 50 〜 59歳:1/16 = 6.3%
 60 〜 69歳:1/8 = 12.5%
 70 〜 79歳:1/4 = 25.0%
 80歳以上 :3/32 = 9.1%
 (80以上は、日本では全人口の 56% が癌になり、28% が癌で死亡とい
 うことから逆算した) という、大まかな計算になる。

 これは、個人的に考えれば同級生100人を考える時、40歳代で約3人は癌
 になり、97人は癌を免れるという事になる。この内 1/2 が死ぬとしたら
 、50歳代では生き残った 98.5人(100 - 1.5) のうち約6人が癌になり、
 半分が死んで 95.5人が生き残る。つまり同様にすると以下の計算が成り
 立つ。

  癌にかかる人数 死ぬ人数 <生き残る人数/TD>
40 〜 49歳 約3人 1 〜 2人 98 〜 99人
50 〜 59歳 約6人 3人 95 〜 96人
60 〜 69歳 約12人 6人 89 〜 90人
70 〜 79歳 約22人 11人 78 〜 79人
80歳 以上 約13人 6 〜 7人 72 〜 73人

  合計 約56人 約28人  


 ※80歳になったばかりの時、同級生は何人生き残っているか?
  ●生き残る人数 = 100 - 約22 - 約26 = 約52人
 注意:ここで同級生100人が 80歳になったとき、何人残っているのかお
    おまかな計算をしたが 生き残る人数 = 約52人(= 100 - 約22 -
    約26) となった。ここで最後の数字を約26 としたのは、癌死亡の
    残りの 78人のうち、1/3 は 40 〜 79 までに、心・脳血管障害、
    その他で死ぬものと仮定した。
    (78 x 1/3 = 26)

 注意:80以上の悪性腫瘍罹患数がちと少ないようであるが、これは間違
    いではなく40歳 〜100歳の間で、国民の 32% が血管障害で死に
    、40% がその他で死ぬわけだから、80以上の悪性腫瘍の死亡数は
    6 〜 7人という計算になる。

 --------------------------------

★★因みに上記数値を人口にあてはめてはじき出した悪性腫瘍の新しい発症
  率は400人/10万人/年 程度となる。
★★アメリカで新たに癌に罹患する率は 1997年に 138万と予想されてい
  る。








井原の悪性腫瘍・癌集団検診

悪性腫瘍の (早期) 発見。 (4人に 1人は悪性腫瘍、その半分はそれで死亡)

<平成5年度死因別死亡状況> 井原市   (死亡数) (新患数) <健>
1位.   悪性新生物  98人

    井笠 = 350 - 360人
    井原 = 150人/年
      (推定新患数)

  検診での癌発見率 = 4 - 5%
          (6/150)
胃癌
肺癌
肝臓癌
膵臓癌
直腸癌
食道癌
乳癌
子宮癌
その他
17人 
15人 
12人 
9人 
4人 
?人 
3人 
1人 
37人 
(約40)
(約20)
(約15)
(約10)
(約10)
(約 6)
(約 5)
(約 4)
(約40)
 
3
1


0

0
2
 
2位. 心疾患 71人     
3位. 肺・気管支炎 50人     
4位. 脳血管疾患 48人     
5位. 不慮の事故 18人     


◇好発年齢:胃癌 (50-69-80)・肺癌 (60以上)・直腸癌 (50-79)・乳癌
      (40-49)・子宮癌 (30-70)・肝臓癌 (B・C肝炎後20年頃)・
      膵臓癌 (65以上)

◇集団検診における癌発見率 (検診を受けた人の何人に癌をみつけたか?)
 胃癌:180/105532 = 0.15% (スクリーニングから精検へ 3-5% をもっ
    てゆくのが理想)
 大腸癌:165/104001 = 0.17% (胃癌と比べかなりいい、罹患率に匹的
     ?)
 ※大腸癌の 50% は直腸癌
 ※大腸癌の 73% は無症状 (集団検診の発見率は 0.18%、うち早期癌は
  31.2%)
 ※何らかの症状を訴えた者の大腸癌患者のうち早期大腸癌は14.1%
 ※S状結腸癌はアルコールと関係あり (3 〜 5倍)
 ※大腸癌で便潜血反応が陽性だったものは 16.4%
  (秋田赤十字病院、1984/5 〜 1995/4)

肺癌:125/282150 = 0.044%
子宮癌: 55/ 84791 = 0.067%
乳癌: 36/ 72847 = 0.049%








検診の死亡減少効果

一度も受けてない人の死亡リスクを 1 とすると、一度でも受けた人の死亡
リスクは
・子宮癌 (細胞診) :0.2
・胃癌 (胃レ線) :0.5 前後
・大腸癌 (便潜血反応) :0.67 (毎年)、0.8 前後 (隔年)
・乳癌 (医師の触診) :有効性は不明
・肺癌 (胸部レ線) :0.72








子宮癌 (H9/10/9 変更)

※1990年子宮体癌/子宮癌は 26.7% と増加 (1975年は 14.6% だった)

※子宮体癌のリスクを減らすファクター
  喫煙 (0.5)
  傾向避妊薬 (0.3 〜 0.5)

◇危険因子:既婚者・多産婦
 ※子宮体癌の危険因子:高血圧・糖尿病・肥満が指摘されている。
 ※子宮体癌の危険因子
  a. 分娩回数 0 (相対危険度 2 〜 3)
  b. 遅い閉経 (53 歳以降) (相対危険度 2.4)
  c. 肥満:21 〜 50 ポンドの過体重 (相対危険度 3)
       50ポンド以上の過体重 (相対危険度 10)
  d. 糖尿病の既往歴 (相対危険度 2.8)
  e. タモキシフェンの内服 (相対危険度 2 〜 3)
  f. 女性ホルモン単独使用 (相対危険度 4 〜 8)
  g. 複雑性異型内膜増殖症 (相対危険度 4 〜 8)

◇症状から:不正性器出血

◇客観的所見:貧血

◇検査・血液データ・確診:エコー・CT・膣鏡

※集団検診における癌発見率:0.067%

※子宮頚部癌の 69% に HPV (ヒトパピローマウイルス) 感染が認められる

※子宮頚部異形成の約 30% が癌化すると予想されている








胞状奇胎・絨毛癌に関して

※胞状奇胎は雄性発生で卵にその原因あり。
 1. 胞状奇胎は徐々に減少
  :出産 1000 当たり、2.70 (1974年) --> 1.86 (1993年)
   ・全胞状奇胎に対する部分胞状奇胎の割合は増加 (40% (1986年) -->
    50% (1993年)
   ・全胞状奇胎後の侵入胞状奇胎の発症率は 3.1% 〜 5.8% だが減少傾向
   ・部分胞状奇胎後の侵入胞状奇胎の発症率は 0.8% 位。 (動向不明)
   ・胞状奇胎は卵に異常が発生しやすい若年者や高年女性の妊娠に多い

 2. 絨毛癌の発生は極めて減少:1990年以降、対女性 100万人で 0.09 〜
   0.06。
絨毛癌と先行妊娠との関連 (1974 〜 1981 の病院単位集計と1992 〜
   1993 の人口単位集計との比較)
  イ. 胞状奇胎後の絨毛癌は 36.0% ---> 25.0% と減少
  ロ. 流産後の絨毛癌は 26.2% ---> 20.0% と減少
  ハ. 正期産後に発生した絨毛癌は 20.4% ---> 45.0% と増加

 3. 胞状奇胎・絨毛癌とう絨毛性疾患減少の理由。
  イ. 全妊娠数の減少 (?) :出生数減少から判断
  ロ. 超音波などで極めて早期からの異常妊娠の鑑別診断が容易になった
  ハ. 生活習慣や食事の欧米化 (?) :絨毛性疾患は文化的・衛生的に未発達
    の地域、栄養学的にアンバランスな低栄養地域、黄色人種・黒人に多
    い。
  ニ. 失敗の少ない避妊法の普及。









咽頭癌

 ※癌は殆ど扁平上皮癌
 ※違和感、長引く風邪様症状に注目
 ※咽頭癌患者は初診時、既に30〜80%に頚部リンパ節転移を認める。
 ※頚部リンパ節の取り扱い(一般に腫瘍リンパ節は比較的に硬く境界不明瞭
  で圧痛 (-))

 a.juglodigastric lymphnodes(内頚・顎二腹筋リンパ節)
  ・このリンパ節は上気道炎や扁桃炎で腫脹するcommon lymphnodesであ
   る。
  ・診察時、このリンパ節腫脹があれば入念に咽頭を診察する。
  ・鼻咽頭に炎症以外の特別な所見がなければ、咽頭の炎症所見が消退する
   まで経過観察

 b.upper deep cervical lymphnodes(上深頚リンパ節)
  ・側頚部〜後頚部リンパ節腫脹があり、扁桃に白苔が存在する時は、EBウ
   イルス感染も考慮。

 c.Rouviereリンパ節(咽頭後リンパ節、特に側方咽後リンパ節)
  頭頚部管腔癌におけるRouviereリンパ節(頭部軸位で上顎洞後部、環椎前
  部)への転移については、癌伸展の程度判定に有用なのでCTあるいはMRI
  で確認すべきである。(以下全stageを通じての転移の頻度)
  ・上咽頭癌: 80%
  ・中咽頭癌: 15%
  ・下咽頭癌: 25%
  ・口腔癌 : 3%(これらは全て進行癌)
  ・上顎癌 :4.7%(これらは全て進行癌)

 ○上咽頭癌(有病率:0.3〜0.4)
  ◇危険因子
   EBウイルスの関与、東南アジア系に多発、男:女=3:1
   30〜40歳代から発症。
  ◇症状から
   鼻閉、鼻汁(特に一側性)、耳閉感、鼻声、(頚部リンパ節腫大)
  ◇客観的所見:長引く風邪様症状
  ◇検査・血液データ・確診:鼻内および口内よりのファイバースコピー
   ※初診時頚部リンパ節転移は75%に認められる。

 ○中咽頭癌(有病率:0.4〜0.5)
  ◇危険因子
   口内の不衛生な人に多い傾向。男:女=4:1
  ◇症状から
   口狭部(中咽頭側壁)や中咽頭後壁の異物感、嚥下時の違和感
   口内炎にも注意(この時は軽度の痛みあり)
  ◇客観的所見
   肉眼で病巣観察可能。長引く風邪様症状
  ◇検査・血液データ・確診
   触診にてびらん、潰瘍、腫瘤部分周辺の硬結の有無を確認。
  ※初診時頚部リンパ節転移は40%に認められる。
  ※中咽頭側壁腫瘍は悪性リンパ腫(男:女=2:1)も考慮。

 ○下咽頭癌(有病率:0.3〜0.4)
  ◇危険因子
   喫煙、アルコール多飲。Plummer-Vinson症候群は下咽頭前癌状態で
   女性に多い。喉頭癌などに対する放射線治療後多年を経過して生じる
   radiationcancer
  ◇症状から
   咽頭喉頭違和感、咳・嚥下時違和感、軽度血痰 (唾液に血液を混じる) 。
  ◇客観的所見
   喉頭をつまみ左右に動かしてMoure症候のクリック、喉頭が下咽頭後壁
   と離れて動くかを確かめる。声帯運動の制限の有無を確認。
   梨状陥凹への唾液の貯留の有無を確かめる。
  ◇検査・血液データ・確診
   ファイバースコピーでの確認と生検。
   咽頭巻綿での下咽頭の擦過細胞診も有効。
   ※初診時頚部リンパ節転移は50%に認められる。
   ※梨状陥凹型は男性に多い(男性:74/80)
    輪状後部型は女性に多い(女性:25/26)







肺癌の発見
(「東京から肺癌をなくす会」での成績、ヘリカルCT導入前後の成績)

  導入前
(1975/9〜19 93/8)
導入後
(1993/9〜1998/4)
延べ受診者数 26338 8952
要精検者数 1331(5.1%) 814 (9.1%)
肺癌発見数 43 30
対10万比 163 335
部位別 : 肺門型 7 4
肺野型 36 26
組織型 : 腺 癌 21 19
扁平上皮癌 15 10
小細胞癌 5 1
大細胞癌 1 0
腺扁平上皮癌 1 0
病期別 : IA 18 (41.9%) 24 (80.0%)
IB 5 1
IIA 3 1
IIB 3 0
IIIA 8 2
IIIB 1 1
IV 5 1







腫瘍マーカーの臨床的意義

 1.CEA(CEA)
  (1).免疫グロブリンスーパーファミリー
  (2).本来の生理作用は不明。細胞間の接着分子
  (3).陽性
    肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、甲状腺髄様癌などの進行期やCEA産生細
    胞の肝転移で陽性
  (4).偽陽性
    慢性肝炎、慢性膵炎などの慢性炎症性疾患、甲状腺機能低下症、自己
    免疫疾患、閉塞性黄疸、腎不全、高齢者、喫煙者で異常高値

 2.CA19-9(CA19-9)
  (1).CA19-9は大腸癌細胞をマウスに免疫して作成したモノクローナル抗
    体NS19-9が認識するI型糖鎖抗原。
  (2).陽性
    膵癌、胆道系癌
  (3).偽陽性
    慢性肝炎、慢性膵炎、胆石症、胆嚢・胆道炎、閉塞性黄疸、糖尿病、
    慢性関節リウマチで軽度上昇
(4).日本人に約4〜10%いるフコシルトランスフェラーゼ欠いルイスA陰性
  者はルイスA糖鎖がつくれずCA19-9を産生できない。

 3.SCC(SCC)
  (1).子宮頚部扁平上皮癌から抽出された腫瘍関連抗原TA-4亜分画の一つ
  (2).陽性
    子宮頚癌、頭頚部、食道、肺、肛門などの扁平上皮癌
  (3).偽陽性
    乾癬などの皮膚疾患
  (4).治療効果判定や病状の追跡にすぐれている。特に遠隔部位の再発に敏
    感。

 4.SLX(SLX、syalyl*-i antigen)
  (1).F9 teratocarcinoma細胞を免疫原として作成したモノクローナル抗
    体が認識する胎児性抗原SSEA-1(stage specific antigen-1)を
    シアル化したもの。
  (2).陽性
    各種腺癌とくに肺腺癌、卵巣癌、膵臓癌などで高値。
  (3).偽陽性
    非癌良性疾患での偽陽性率は低く癌特異性は高い。

 5.NSE(NSE、neuron-specific enolase)
  (1).NSEは解糖系酵素エノラーゼで神経分泌細胞やAPUD-cellに存在
  (2).神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、肺小細胞癌、甲状腺髄様癌、褐色細胞
    腫瘍
  (3).NSE産生細胞の崩壊による逸脱上昇なので病期の推定が可能。
    また化学療法や放射線療法で腫瘍細胞が破壊されたときも上昇。

 6.CYFRA21-1(CYFRA21-1)
  (1).サイトケラチンは上皮細胞の骨格の中間径フィラメントを構成する蛋
    白の一種
  (2).CYFRA21-1はサイトケラチン19のフラグメントを認識する二つのモ
    ノクローナル抗体が特異的に認識する抗原
  (3).陽性
    肺、食道の扁平上皮癌
  (4).治療効果や経過観察にも有用。SCCより特異性が高い。

 7.Pro-GRP(Pro-GRP、Pro-gastrin-releasing peptide)
  (1).Pro-GRPはガストリン放出ペプチドGRPの前駆体
  (2).陽性
    肺小細胞癌に対してはNSEより特異性が高く、比較的早期から高い陽
    性率を示す。

 8.DUPAN-2(DUPAN-2)
  (1).膵腺癌培養細胞を免疫原として作成したモノクローナル抗体で、これ
    が認識する抗原は腺癌特異的
  (2).陽性
    HCC、膵臓癌、胆道癌では70%、胃癌、大腸癌では30%の陽性率。

 9.CA-50(CA-50)
  (1).大腸癌細胞株Colo-205から作成されたモノクローナル抗体C-50によ
    り認識される糖鎖抗原でCA19-9に類似
  (2).陽性
  CA19-9が陽性になる膵臓癌や胆道癌では陽性。CA19-9を作れない
  ルイス陰性者でも陽性。
  (3).偽陽性
    偽陽性率がたかい。

10.SPAN-1(SPAN-1)
  (1).ヒト大腸癌細胞株SW-1990を免疫原として作成されたモノクローナ
    ル抗体が認識する糖鎖抗原でCA-50に類似。
  (2).陽性
    膵臓癌、胆道癌、HCCで高い陽性。胃癌、大腸癌では陽性率はやや低
    い。
  (3).偽陽性
    慢性肝炎や肝硬変で偽陽性率が高い。

11.NCC-ST-439(NCC-ST-439)
  (1).ヒト胃癌癌細胞株St-4を免疫原として作成されたモノクローナル抗
    体。
  (2).陽性
    胃癌、大腸癌などの消化器癌や乳癌、肺腺癌、卵巣癌などの種々の腺
    癌で陽性
  (3).偽陽性
    偽陽性率が低くNCC-ST-439が異常高値なら悪性腫瘍が存在する可能
    性が高い。

12.CA72-4(CA72-4)
  (1).乳癌の肝転移細胞膜成分を免疫原として作成されたモノクローナル抗
    体に反応する抗原(TAG72)を免疫原として作成した第二世代のモノ
    クローナル抗体CC49の両抗体で測定される。
  (2).陽性
    卵巣癌、胃癌、大腸癌
  (3).偽陽性
    偽陽性率は低い。

13.CA15-3(CA15-3)
  (1).ヒト乳汁脂肪球上ぼ糖蛋白に対するモノクローナル抗体とヒト乳癌肝
    転移巣の膜成分に対するモノクローナル抗体を用いて認識される糖蛋
    白
  (2).陽性
    乳癌。早期診断は不可能、特に肝、胸膜への転移で効率に陽性。
    治療効果とよく相関し経過観察に有用。卵巣癌の腫瘍マーカーとして
    も用いられる。
  (3).偽陽性
    炎症性疾患、妊娠、良性乳腺疾患
  (4).再発乳癌、転移乳癌のモニタリングんいはCEAより有用

14.CA125(CA125)
  (1).卵巣漿液性嚢胞腺癌の株化細胞を免疫原として作成されたモノクロー
    ナル抗体OC125の認識される抗原。
  (2).陽性
    上皮性卵巣癌、特に漿液性嚢胞腺癌で非常に高い陽性。
    子宮内膜症のマーカーでもある。
  (3).偽陽性
    漿膜由来の抗原であるため癌性、結核性、細菌性、胆汁性など原因の
    如何を問わず腹膜炎や胸膜炎で上昇。月経周期や妊娠で左右される。

15.AFP(α-FP)
  (1).分子量約7万の糖蛋白でα-gl位に泳動される胎児性蛋白
  (2).陽性
    HCC、卵黄嚢腫瘍の診断や治療効果判定に利用
  (3).偽陽性
    肝炎、肝硬変でもわずかに上昇

16.PIVKA-II(PIVKA-II、protein induced by vitamin K abscence or
        antogonist-II)
  (1).PIVKA-IIはビタミン-K欠乏時の特異的に産生される異常プロトロン
    ビン
  (2).陽性
    HCC特異的、α-FPとの組み合わせでHCCの診断率は上昇
  (3).注意
    閉塞性黄疸や肝内胆汁鬱滞併発症例で増加しヴィタミンK投与やワー
    ファリン投与で減少するので注意

17.PAP(PAP、prostatic acid phosphatase)
  (1).前立腺癌の診断、スクリーニング、治療効果判定、病勢把握に利用

18.PSA(PA、PSA、prostaticspecific antigeen)、γ-Sm
  (1).精巣と前立腺に特異的な抗原として分離されたカリクレイン様の糖蛋
    白
  (2).陽性
    前立腺癌。診断、経過観察、再発診断に利用
  (3).注意
    アンドロゲン除去療法の患者では、効果に関係なく下がることがあ
    る。
  (4).偽陽性
    前立腺肥大
  (5).γ-SmはPSAと同一蛋白で抗γ-Sm抗体は遊離型PSAのみを認識

19.β-HCG(β-HCG)
  (1).ヒト胎盤性ゴナドトロピンは糖蛋白ホルモンでα、βサブユニットか
    らなりβ-HCGがHCGの特徴部分
  (2).陽性
    妊婦、栄養膜腫瘍(胞状奇胎、絨毛癌など)、精巣腫瘍(非セミノー
    マ性腫瘍では60%以上の高値、セミノーマ性腫瘍では陽性率は低い)
    絨毛癌で100%、胎児性癌や奇形癌では60%程度の陽性。
  (3).極めて鋭敏な腫瘍マーカーで治療効果、再発のモニタリングに有用。

20.ICTP(ICTP、pyridinoline cross-linked carboxyterminal telo-
     peptide of type I procollagen)
  (1).type I collagenは骨組織の90%以上を占める蛋白でICTPは骨吸収の
    際、コラーゲンが破壊され血液中に放出される。
  (2).骨転移マーカーのうち骨吸収マーカーとして新しく注目
  (3).陽性
    乳癌の骨転移マーカー

21.BFP(BFP、basic fetoprotein)
  (1).γ-gl分画に泳動される癌関連胎児性蛋白。
  (2).臓器特異性は低いがBFPは消化器癌をはじめ種々の癌組織中に存在す
    るため腫瘍マーカーとしては全体を見通せる位置に属する
  (3).陽性
    他の腫瘍マーカーより早期に検出、精巣や卵巣の早期癌での陽性率は
    50%。
    尿BFPは尿管癌や膀胱癌など尿路上皮の癌のスクリーニングに有用
  (4).偽陽性
    慢性肝炎(血清BFP)、膀胱炎(尿BFP)

22.シリアルTn抗原(STN、STN)
  (1).ムチン型糖鎖に属する癌関連性糖鎖抗原
  (2).陽性
    卵巣癌、胃癌、大腸癌、膵臓癌などの消化器癌で認められる。
    陽性患者は陰性患者と比較して予後不良の傾向
  (3).偽陽性
    良性疾患での偽陽性率は高くないが、肺結核など呼吸器系良性疾患で
    は陽性率は低いもののかなり高値を示す症例がある。

23.TPA(TPA、tissue polypeptide antigen)
  (1).種々の悪性腫瘍の細胞膜や細胞質内小胞体に存在する共通抗原として
    見いだされた。サイトケラチンに類似。
  (2).陽性
    非特異的腫瘍マーカーで肺癌、消化器癌、乳癌のマーカー尿中TPAは
    乳癌、肺癌、胃癌、大腸癌などでも上昇
  (3).臓器特異性に乏しいが、腫瘍量や病勢、病期と関連して増減するため
    治療効果のモニタリングや経過観察に有用

24.IAP(IAP、immunosuppressive acidic protein)
  (1).IAPは癌患者の腹水や血清中に見いだされる糖蛋白。
  (2).IAPは肝細胞、マクロファージ、顆粒球で産生され免疫機能を低下さ
    せる。
  (3).種々の癌の進行度や深達度、腫瘍の大きさと相関、転移や再発でも大
    きく増加、変動。
  (4).宿主の免疫能の指標としても有効。








各臓器における有用な腫瘍マーカー

  食道 大腸 卵巣 子宮 精巣 前立腺 膀胱
CEA      
CA19-9              
DUPAN-2                    
SPAN-1                    
CA-50                    
NCC-ST-439          
CA72-4              
SCC                    
NSE                        
SLX                  
Pro-GRF                        
CA125                  
  食道 大腸 卵巣 子宮 精巣 前立腺 膀胱
CA15-3                        
CYFRA21-1                    
PAP                        
PSA or γ-Sm                        
AFP                      
PIVKA-II                        
ICTP                        
β-HCG                        
STN                  
BFP        
TPA  
IAP            
  食道 大腸 卵巣 子宮 精巣 前立腺 膀胱









青年期(adolescents、13〜19歳)の頭頚部の新生物
  1. 頭頚部の悪性腫瘍
    1. 横紋筋肉腫
      ・眼窩内
      ・傍脳脊髄膜(Parameningeal)
      ・その他
    2. 軟部組織の肉腫(横紋筋肉腫を除く)
      ・滑膜肉腫(Synovial sarcoma)
      ・Fibrosarcoma
      ・Malignant peripheral nerve-Sheath tumor
      ・Ewing's sarcoma
      ・Primitive neuroectodermal tumor
  2. 耳下腺の良性腫瘍
    ・Pleomorphic adenoma
    ・Warthin's tumor(also called papHlary cystadenoma)
    ・Castleman's lymphoma
    (benign,localized,lymphoproliferative;hyaline vascular type)
  3. 耳下腺の悪性腫瘍
    ・Mucoepidermoid carcinoma
    ・Acinic-cell carcinoma
    ・悪性リンパ腫
    ・Salivary-gland lymphoma(a mucosa-associated lymphoma)
    ・ホジキンリンパ腫
    ・非ホジキンリンパ腫
    (・Castleman's lymphoma(plasma-cell variant))








若年者で脊椎の圧迫骨折を生じ得る新生物
  1. Benign
    ・Eosinophilic granuloma
    ・Aneurysmal bone cyst
    ・Giant-cell tumor
    ・Hemangioma
    ・Osteochondroma
    ・Osteoid osteoma
    ・Osteoblastoma
  2. Malignant
    1) Primary bone tumors
    ・Osteogenic sarcoma
    ・Ewing's sarcoma
    ・Non-Hodgkin's lymphoma
    2) Hematologic cancers with metastasis to bone
      or diffuse inflltration of bone marrow
    ・Non-Hodgkin's lymphoma
    ・Hodgkin's lymphoma
    ・Acute leukemia
    ・Neuroblastoma
    ・Rhabdomyosarcoma
    ・Primitive neuroectodermal tumor
    ・Germ-cell tumor
    ・Medulloblastoma
    ・Wilms' tumor





肺癌の腫瘍マーカー(日医雑誌 2004;131:639-643)
組織型と進行度に比例はするが特異的なものはない。
1. CEA
  全体での陽性率は50%、腺癌では60%で異常に高い場合腺癌の可能性が
  高い。臨床病期I・II期の腺癌での陽性率は30%と低いので早期癌スクリー
  ニングには役立たない。腫瘍が完全に摘出されたら2W以内に正常化。
  多くの良性疾患での偽陽性を呈するが20ng/mlまでに止まる。
2. SLX
  肺癌、膵臓癌、卵巣癌で陽性率が高い。肺癌全体での陽性率は30%、腺癌
  では40~50%。臨床病期に相関する点でCEAより有用だが、III・IV期にしか
  多くは陽性にならない。早期癌スクリーニングには役立たず、治療効果判定
  や再発の目安。性差・年齢に関係ないが、DPB、気管支拡張症、COLD、肺線
  維症で上昇。
3. SYFRA
  肺癌全体での陽性率は50~60%。扁平上皮癌では60~80%でSCCより優れてい
  る。治療効果判定や経過観察に有用。手術侵襲や放射線療法の影響を受け
  ない。扁平上皮癌の独立した予後因子。
4. SCC
  肺癌、子宮頚癌、皮膚癌、食道癌、喉頭癌のマーカー。肺癌では扁平上皮
  癌で60%陽性と高い特異性を示す。ただしI・II期の陽性率は低い。採血手技
  による偽陽性のほか、腎機能障害、天疱瘡、アトピー性皮膚炎、上気道感染
  でも偽陽性を示す。
5. NSE
  神経芽細胞腫など神経由来の腫瘍で陽性。インシュリノーマ、甲状腺髄様
  癌、褐色細胞癌、ガストリノーマでも陽性。APUDの性格をもつ小細胞癌で高
  値を呈す。小細胞癌で60~80%の陽性率。非小細胞癌で20%。溶血検体で偽陽性
  に注意。
6. ProGRP
  小細胞癌にきわめて高い特異性あり。陽性率は65~75%。非小細胞癌での陽
  性率は5%以下。NSEと比較して限局型で高い傾向。
  100pg/mlを越えればまず小細胞癌の可能性が高い。ProGRP正常・NSEの小細
  胞癌もあるので注意。ProGRPは治療による完全寛解で正常化する。腎不全で
  Crが1.6mgを越えたら偽陽性を呈するので注意。

※肺癌のconbination assayについて
  1. 肺癌か否か。小細胞癌か非小細胞癌か--> CEA + CYFRA + ProGRP
  2. 腺癌を疑う時--> CEA + CYFRA + SLX
  3. 扁平上皮癌を疑う時--> CEA + CYFRA + SCC
  4. 小細胞癌を疑う時--> CEA + ProGRP + NSE







肛門腫瘍の分類(進藤勝久:外科 2003;65(7):814-818)
1.肛門管
  1) 良性上皮性腫瘍:直腸型腺腫、嚢胞腺腫、乳頭腫
  2) 悪性上皮性腫瘍
     2.1 腺癌および粘液癌;直腸型、肛門腺由来、痔瘻に合併。その他の管外型
     2.2 扁平上皮癌
     2.3 腺扁平上皮癌
     2.4 類基底細胞癌
     2.5 その他の癌;印環細胞癌、粘表皮癌、分類不能癌
  3) 悪性黒色腫
  4) 非上皮性腫瘍:横線筋肉肉腫、平滑筋肉腫、線雑肉腫、脂肪肉腫
  5) 腫瘍様病変:尖圭コンジローマ、肥厚肛門乳頭、肛門腺の貯留嚢胞
    粘膜下膿瘍、内痔核、線維性ポリープなど
  6) その他:Kaposi肉腫、リンパ腫など
2. 肛門周囲皮膚:皮膚腫瘍に準じる
  1) 乳房外Paget病
  2) Bowen病
  3) 有棘細胞癌
  4) 基底細胞上皮腫
  5) 悪性黒色腫







食道癌の危険因子(NEJM 2003;349:2242)
危険因子 扁平上皮癌 腺癌
タバコ ++(4~8倍) ++(2~4倍)
アルコール +++ -
バレット食道 -(no proven risk) ++++(8倍以上)
道逆流(1/W) - +++
肥満 - ++

危険因子 扁平上皮癌 腺癌
貧困 ++ -
アカラシア +++ -
腐食性食道損傷 ++++ -
胼胝形成
(Nonepidermolytic palmoplantar keratoderma)
++++ -
Plummer-Vinson syndrome ++++ -

危険因子 扁平上皮癌 腺癌
頭頚部の癌の既往 ++++ -
乳癌放射線治療の既往 +++ +++
非常に熱い飲料の多飲 +(2倍以下) -
β-blocker、抗コリン剤
アミノフィリン服用歴
- +-(conflicting







甲状腺機能異常のない甲状腺の孤発性結節(腫瘤)で癌を疑わせる臨床所見
(NEJM 2004;351:1765)
1. 甲状腺癌の可能性がかなり高い(high)場合
  1) 甲状腺髄様癌またはMENの家族歴あり
  2) (特にレボチロキシン(チラージンS)治療に伴って)腫瘤の増大が速いとき
  3) 非常に硬い(firm and hard)腫瘤
  4) 結節が周囲の組織と癒合している場合
  5) 声帯麻痺
  6) 局所のリンパ節腫脹
  7) 遠隔転移
2. 甲状腺癌の可能性が多少(moderate)ある
  1) 年齢が20歳より小さいか70歳より大きい
  2) 男性
  3) 頭頚部への放射線照射の既往あり
  4) 4cmを超える大きさ、または部分的にcystic
  5) 圧迫症状(嚥下障害、嗄声、声が出にくい、呼吸困難、咳ほか)がある







性腺外胚細胞腫瘍について(NIS、No.3993(H12/11/4)、P96)
  胚細胞腫瘍は主として男女の性腺(卵巣、精巣)に発生するが、原始生殖細胞が
 発生・分化過程で迷入し、種々の臓器、縦隔、後腹膜、頭蓋内などで腫瘍化するこ
 とによって、多彩な組織型を有する腫瘍が発生する。体幹に中軸上に発生する傾向
 にあり、特に発生頻度が高い部位は縦隔で、なかでも縦隔の前方に発生する頻度が
 高く全縦隔嚢腫、腫瘍の15%を性腺外胚細胞腫瘍が占めているといわれる。またこれ
 らの腫瘍は胸腺とも関係し、性腺外胚細胞と胚細胞のpotentialを有している胸腺
 細胞に由来して発生するといわれている。
1.性腺外胚細胞腫瘍の種類
  a.未分化胚細胞腫:未熟な胚細胞に類似
  b.絨毛癌:体外胚細胞組織を模倣
    1)男性の性腺外絨毛癌は成人の性腺外胚細胞腫瘍の典型的な悪性腫瘍の一つ
      縦隔(48.6%)>後腹膜(24.8%)>腹腔臓器(11%)>骨盤内臓器(5.5%)
      >頭蓋内(7.3%)>肺(2.8%)(以上全109例、Fineら)
  c.卵黄嚢腫瘍:体外胚細胞組織を模倣
  d.多胎芽腫:胎生初期像を模倣
  e.胎芽性癌(胎児性癌):胎生初期像を模倣
  f.奇形腫:様々な成熟段階の体組織への分化像を示す
    1)小児の奇形腫:性腺外に64%も分布
      仙尾部(44.8%)>卵巣(30%)>縦隔(6.9%)>睾丸(5.9%)
      >後腹膜(3.5%)>頚部(3.5%)>頭蓋内(2.9%)>頭部(1.7%)
      >腹部(0.7%)>腹膜(0.4%)(以上全578例、Gonzalezら)
  g.カルチノイド:
  h.甲状腺カルチノイド:
  i.その他
2.特徴
  a.子どもの悪性腫瘍のうち悪性の胚細胞腫瘍は約3%で、そのなかで3歳未満の小児
   の多くは性腺外胚細胞腫瘍か睾丸腫瘍
  b.Kleinfelter症候群は性腺外胚細胞腫瘍が発生しやすいといわれている。
  c.性腺外胚細胞腫瘍の予後では、mature cystic teratoma と seminoma は予後は
   よい。非seminomaの縦隔悪性胚細胞腫瘍は性腺性胚細胞腫瘍と同一形態を示し
   ながらも化学療法への反応が悪い。
  d.性腺外胚細胞腫瘍の治療上の特徴は、手術療法の他シスプラチンを基礎とした
   多剤併用療法が高い奏功率をもつことである。手術を行わないで化学療法を実
   施した場合の complete responce rates は縦隔の非seminoma性胚細胞腫瘍では
   9/13(69.2%)でseminoma では6/9(66.7%)であったという。また後腹膜発生した
   胚細胞腫瘍でも complete responce rates は14/16(87.5%)で、発生部位と関係
   なく化学療法が奏功する。
  e.未熟奇形腫では化学療法で再発した場合でも放射線治療が著効する。
  f.本腫瘍では、特異的腫瘍マーカーが存在するので、診断や経過観察に有効で、
   時には放射線療法を加えた集学的治療で治癒可能な腫瘍である。







癌の主要部位別平成6年罹患率および平成11年死亡率(人口10万対)
                                      (NIS、No.4062(H14/3/2)、P114)

           平成6年罹患率         平成11年死亡率
   部位     男性      女性       男性     女性
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  全部位    416.3     299.4       286.5     179.1
------------------------------------------------------------------------------
咽頭       7.7      3.2        5.7      2.1
食道       15.2      3.1        13.8      2.4
胃         107.9     54.1       53.4      27.9
     -----------------------------------------------------------------
 25〜29歳    2.7      4.0        0.5      1.2
 30〜34歳    7.7      9.5        1.6      2.1
 35〜39歳    18.0     17.4        4.2      4.5
     -----------------------------------------------------------------
結腸        50.3      35.6       19.3      17.8
直腸・肛門    27.1     15.6        12.5      7.3
肝         37.8      13.8       38.3      16.1
胆道        11.9      14.0       11.0      12.7
     -----------------------------------------------------------------
(胆嚢)                        3.6      6.5
(胆管)                        7.4      6.2
     -----------------------------------------------------------------
膵臓       14.9      11.2       16.6      13.2
喉頭        4.5       0.3        1.5      0.1
肺・気管支   61.0      22.0       61.8      22.2
皮膚        3.4      4.5         0.8      0.7
乳房                44.0        0.1      13.9
子宮               26.5               8.0
卵巣                9.5               6.4
前立腺      18.1              11.4
膀胱       13.0      4.3        5.4      2.3
腎・尿路      9.0      4.1        5.0      2.6
脳・神経系     2.5      2.1        1.4      1.0
甲状腺       1.9      8.7        0.7      1.4
白血病       5.6      4.2        6.3      4.4
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膵癌の早期発見への提言(NIS、No.4069(H14/4/20)、P23)
  A. ハイリスク群の設定を下記のごとく行う
    1. 60歳以上で下記の人
     1)新たに糖尿病と診断された人、2回以上耐糖能異常を指摘された
       患者、糖尿病のコントロールが急速に悪化した人
     2)慢性膵炎、膵石症、膵石灰化を有する患者
     3)胆石、胆嚢壁肥厚、胆摘出術後患者、胆管拡張患者
     4)都市住民で、癌家族歴がある喫煙家、大酒家、コーヒー愛飲家
    2. 検診などで膵アミラーゼ、膵リバーゼ、エラスターゼのいずれかが
     高値で下記の人
     1)CA19-9が正常上限を超える人
     2)CA19-9が正常範囲内でも、前年に比し2倍以上になった人
     3)高CEA血症の人
    3. 膵胆管合流異常のある人、膵二分症、膵嚢胞を有する人、膵画像検査
     で何らかの異常を指摘された人
  B. 膵精密検査を下記の順序で行う
     1)精密超音波、MRCP、X線CT
     2)ERCPおよび純粋膵液細胞診(可能ならば遺伝子検査)
       以上で、細胞診(遺伝子)の異常および膵管分枝異常、腫瘡像が
      疑わしいが明確でない時、さらに下記を行う
     3)超音波内視鏡、膵管内視鏡、膵管内超音波、血管造影のいずれか
       単〜複数組み合わせ
     4)組織生検(超音波ガイド下、内視鏡的、超音波内視鏡下吸引法)







胆嚢癌の超音波診断(日本超音波学会、案、1999)
A)隆起あるいは腫瘤性病変
            形状          表面            内部エコー
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1. ポリープ病変(有茎性の20mm以内の小隆起)
  ・胆嚢癌   類円形〜不整形    平滑〜不整     均一整でやや低エコー
         有茎〜亜有茎
   ---------------------------------------------------------------------
  ・腺腫    類円形          平滑〜やや不整   均一整でやや低エコー
         有茎〜亜有茎
   ---------------------------------------------------------------------
  ・過形成性  乳頭状〜分葉状   不規則不整     均一整でやや低エコー
   ポリープ  亜有茎
   ---------------------------------------------------------------------
  ・コレステ  類円形あるいは     桑実状の規則的  小さい強いエコー斑の存在
   ロールP    分葉状        凹凸〜不整
         有茎〜亜有茎
   ---------------------------------------------------------------------
2. 隆起あるいは腫瘤様病変
  ・胆嚢癌  亜有茎〜広基性隆起   乳頭状〜不整  均一整でやや低エコー
        あるいは丘状低隆起               あるいは高エコーで不整
                                    低エコーの混在
   ---------------------------------------------------------------------
  ・腺筋腫症  広基性隆起
   (限局型) あるいは類円形腫瘤     平滑      微小無エコー域の散在コメット様
                                    エコーの存在
   ---------------------------------------------------------------------
  ・デブリ   腫瘤様〜不定形    平滑〜不整       均一やや低エコーに微細
         体位による変化                  高エコーの存在
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B)肥厚性病変
1. 限局性肥厚
  ・胆嚢癌     不整        均一低エコーあるいは一部不整形低エコーの混在
  ・腺筋腫症   平滑〜不整    微小無エコー域あるいはコメット様エコーの存在
  (限局型、文節型)
   ---------------------------------------------------------------------
2. びまん性肥厚
  ・胆嚢癌    平滑〜不整    全体低エコーあるいは小不整形低エコーの散在
  ・慢性胆嚢癌   平滑       比較的均一な高〜低エコーの混在
  ・コレステ   平滑〜不整    全体高エコーあるいは高エコー斑の存在
    ローシス
  ・腺筋腫症    平滑       全体高エコーで内部に微小無エコー域あるいは
   (びまん性)             コメット様エコーの存在
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喉頭癌:全悪性腫瘍の3%、95%以上は喫煙者
  1. 種類と原因
  喉頭癌の最大の原因は喫煙(次に誤嚥・誤飲が続く)。喫煙者/非喫煙者の
  死亡比は喉頭癌:32.5、肺癌:4.45と肺癌の約7倍。「喫煙者で40歳以上の男性、
   1週間以上続く嗄声」では喉頭癌を強く疑う。
  1) 声門上型
  2) 声門型(声門癌)
   ・我が国で一番多い
  3) 声門下型
  2. 嗄声
  1) 声門上型
   ・喉頭蓋、披裂喉頭蓋ヒダ、仮声帯に発生する癌で初期は無症状。GFなど
    で偶然発見されることが多い。
   ・声門型(声門癌)と比べてリンパ節転移の頻度が高く予後が悪い。
   ・癌が進行すると「のどの違和感、異物感」などの不定愁訴とともに喉頭
    蓋や仮声帯の腫脹のため独特の”こもった声”を聴覚印象として感じる。
  2) 声門型(声門癌)
   ・我が国で一番多い
   ・早期に嗄声が生ずる。”金属性の”、”硬い”嗄声でこれらは隆起性病
    変や凹凸不整の粘膜病変に由来する。
   ・嗄声がさらに進行している場合は声帯固定となっており、ここまでくる
    と血痰や呼吸困難を訴え、放射線単独の治療は不可能で喉頭全摘などが
    必要になる。
  3) 声門下型
   ・上記2つと比べて発生頻度は極めて少ない。
   ・声帯に癌の浸潤が及ぶまでは嗄声などの症状が発現しないため進行癌と
    して発見されることが多い。
   ・気管傍リンパ節転移が早期に出現するため予後不良。
  3. 良性の声帯病変について
   ・声帯の酷使-->小児声帯結節、成人声帯結節(謡人結節)
   ・声帯ポリープ:”だみ声”
   ・ポリープ様声帯(ラインケ浮腫):喫煙者で野太い(低温の”だみ声”)
    が特徴的。声帯全体にわたって浮腫状に腫脹。患者の多くは喫煙者。
   ・声帯上皮化形成(声帯白板症)
    「前癌病変」。喫煙などで喉頭に慢性的な炎症がおこると、声帯粘膜の
    血管拡張や浮腫を来し、結合組織の増生や粘膜の限局的肥厚につながり、
    肉眼的には声帯(仮声帯や咽頭粘膜にもまれに見られる)表面の白色病変
    としてみられる。禁煙で自然治癒することがある。嗄声の特徴は声門癌と
    同じ。
    (以上、日本医師会雑誌 2010;139:845-847(喉頭がんと声)より)