糖尿病と腎障害(腎不全・ネフローゼ)

※糖尿病は平成 7年には 500万人を越えると言われている。

※食事療法:(1). 適正なエネルギー
      (2). 三栄養素の適正な補給
      (3). ヴィタミン・ミネラルの適正な補給

 (1). 適正なエネルギー
   目標体重は標準体重またはそれを若干下回る程度
   標準体重1kg当たり 25 〜 30Kcal (労働量に応じ増加・妊娠後半〜授乳中 30
    〜 35Kcal)

 (2). 三栄養素の適正な補給
   エネルギー量比:糖質 (60%)・蛋白質 (15 〜 20%)・脂肪 (20 〜 25%)
  ★1). まず摂取総カロリーを決める (25 〜 30*標準体重)
   2). 蛋白質の量とカロリー:蛋白質制限がある場合 (0.5 〜 0.6 〜 0.7 〜
                0.8g/kg)
                蛋白質制限がない場合 (1.0g/kg)
   3). 糖質は 125g 以上をとる(実際は糖尿病のコントロール状況から150 〜
     300g で始める)
   4). 残りを脂肪で補うが 3050g となる。
  ★食事繊維:4 〜 5g(レタス・トマト・キュウリ・キャベツ・麦ごはん)

※糖尿病性腎症(クレアチニンの逆数 (1/Cr) の変化は GFR 低下とよく相関する)
 糖尿病の経過が延長するに従って尿蛋白排泄は増加し、ネフローゼ症候群を呈する
 様になる。
 ★糖尿病性腎症の防止
  (1). 尿蛋白の把握・GFR 測定
  (2). 血圧の管理:カプトリル (12.5mg*3 /日) またはカルシウム拮抗剤
  (3). 尿蛋白の制限:ペルサンチン 150 〜 300mg/日
  (4). 低蛋白血症に対してアミノ酸製剤(アミノレバン-EN またはアミユー)は好
    ましい
    (腎不全に移行すればクレアチニンに注意して一日蛋白を 40g 以下 (0.5 〜
     0.7g/kg) に制限)
  (5). 血糖コントロール:高ければ中間型インシュリン(腎不全が出現すれば経口
    糖尿病薬は体内への蓄積を考えて適さない)
  (6). 浮腫:利尿剤にこだわらぬ程度に使用
  (7). 高尿酸血症:アロプリノールを 100mg 一日一回内服よりはじめる。
          ベンズブロマン・プロベネシッドは適さない。
  (8). その他:貧血対策・高リン血症対策

 ★糖尿病性腎症を発症し腎不全状態 (GFR < 20ml/min) を呈する場合
  (1). 腎不全状態 (GFR < 20ml/min) に応じた蛋白質制限
  (2). 蛋白質節約のためには糖質・エネルギーの制限は適当でない。蛋白質制限に
    応じたエネルギーを確保
  (3). 代謝性アシドーシスに対しては、適正な対策をする。








糖尿病 (NIDDM) と glucose toxity(平成 7/03/14・講演にて)

※血糖コントロールをちゃんとやれば合併症は押さえられる

※糖尿病の平均寿命は男:10才、女:15才若い

 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃               インシュリン分泌不全
 ┃   ┏━ 糖利用低下  ━┓/     ┃
血糖上昇−┃          ┃      ┃
 ┃   ┗━ 肝糖新生増加 ━┛\     ┃
 ┃               インシュリン抵抗性増大
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
 ★糖尿病 (NIDDM) と SU 剤:約100万人、糖尿病の 42% が治療中
  オイグルコン(ダオニール)とグリミクロン

  ◇SU 剤の作用 (FBS:140mg以上・HbA1c:7.0% 以上)
   (1). インシュリン分泌増加
   (2). β-Cell 機能改善
   (3). インシュリン作用の増強

  ◇SU 剤の問題点
   (1). 肥満者に使いにくい
   (2). 食後の高血糖に対応できぬ (glucose toxity に対して問題)
   (3). 低血糖の発生
   (4). だんだん効かなくなる

 ★α-グルコシダーゼ阻害剤(ベイスン・グルコバイ等)
   (1). SU 剤と併用(食後1 〜 2時間の血糖が 200mg 以上の時)
     FBS を余り下げない・食後血糖を 30 〜 40mg 下げる
     高インシュリン血症を来さない
 ★これからの糖尿病の治療

     ┏━━━━━━━━━ 糖尿病 ━━━━━━━━━━┓
    肥満なし         ┃           肥満あり
     ┃      α-グルコシダーゼ阻害剤     ┃
     ┃           ↓            ┃
インシュリン分泌増強薬 ━━→ 血糖の正常化 ←━━ インシュリン作用増強薬
 (グリメピリド)        ↑          (CS-O45)
                 ┃
              インシュリン
 ★糖尿病性末梢神経障害(糖尿病性神経症)の治療
  ◇鑑別診断をする
  ◇診察の要点:筋肉の萎縮・運動障害・発汗障害・深部腱反射・振動覚障害を特
         にみる(夏の様な汗をかきやすい時、足首にさわると渇いており
         、胸には玉の汗)
  ◇主症状:痛み・知覚障害・排尿障害・インポ・便秘・下痢・失調・大量早朝尿
       等
  ◇血糖の正常化が基本 (治療初期の痛みの悪化は一時的であることを認識させる)
  ◇薬物:キネダック (450mg/d)・ビタミン1.6.12・パルクス (5 〜10 を週 2
      回 4週間)
   鎮痛剤:NSAID(スリンダク・インフリー・インダシン)
   抗痙攣剤:アレビアチン (600 〜 900mg/d)・テグレトール (400 〜
         800/d)
   抗鬱薬:ルジオミール・トリプタノール
   抗精神薬:グラマリール

※高血糖 → NO 低下 → 神経の虚血
  → 細い神経を障害:プレタール (シロスタゾール 200mg)

※メキシレチン (1.0 〜 1.2g/d) も有効と言われている。
 ◇心理的要因に対して:夜間の痛み増強(レンドルミン・ベンザリン)

※糖尿病性神経症について
 新しく診断された NIDDM の患者で糖尿病性神経症の発症について自然経過を調べ
 た。
 NIDDM の患者では初期診断時点で 8.3% に糖尿病性神経症をみとめた (非糖尿病対
 照群では 2.1%)、5年後では 16.7% に、10年後では 41.9% (非糖尿病対照群では
 5.8%) と糖尿病性神経症は飛躍的に増加した。またこれは低インシュリン血症 (高
 血糖症) のためであることがわかった。

※糖尿病性末梢神経障害と AR (アルドース還元酵素阻害剤)
 神経障害発生後間もない頃にはアルドース還元酵素阻害剤が有効とされる。
 (1). 生化学的変化
   高血糖 --> ソルビトール蓄積 (polyol pathwayの活性化) --> 細胞内ソルビ
   トール蓄積・細胞外グルコース増加 --> Na 依存性ミオイノシトール
   取り込みを抑制 --> Na-K-ATPase 活性低下 --> 神経機能を抑制
 (2). 病理組織学的変化
   末梢神経細胞、軸索系、シュワン細胞を基本的に障害。この変化と共に神経内
   血管、神経外膜小動脈の障害が修飾進展する (神経生検で細小血管閉塞や局所
   乏血等が見られる)。








糖尿病に特有の身体所見

 1. 白内障
 2. 外眼筋麻痺
 3. 耳下腺腫大
 4. 眼瞼キサントーマ
 5. インシュリンによる皮下脂肪萎縮または肥厚
 6. Dupytren拘縮
 7. 関節可動域の制限 (関節拘縮・指趾硬化・cheiroarthropathy) があると網膜症
  を合併している可能性が高い
 8. 硬化浮腫症 (scleredema・scleroedema):頚部から肩にかけて硬い
 9. 糖尿病性無力性膀胱による下腹部腫瘤
10. 糖尿病性水疱症 (bullosis diabeticorum) が下肢にある
11. 糖尿病性脂肪性類壊死 (necrobiosis lipoidica diabeticorum)
12. 下腿前面の糖尿病性皮膚症
13. 前脛骨および足背動脈の触診
14. アキレス腱の腱黄色腫
15. 足先の知覚障害
16. 足部壊疽の存在
17. 下肢腱反射の消失あるいは低下
18. 糖尿病性筋萎縮症とくに臀筋の萎縮
19. 手及び足の骨間筋萎縮、特に手の第一指と第二指の間の筋萎縮
20. 爪白癬症、足底白癬症
21. シャルコー関節








IDDM と NIDDM

  IDDM NIDDM
 発症年齢  小児・若年者  中年以後に多い
 発病様式  急性・亜急性  緩徐・しばしば無症状
 体型  やせ型  発症前、多くは肥満
 ketosis & ketoacidosis  起こりやすい  まれ
 血糖値の安定性  不安定  普通は安定
 家族歴  あり  濃厚
 ICA 、GAD 抗体  しばしば陽性  ふつう陰性
 特定の HLA との関連  あり  なし
 自己免疫疾患合併  しばしば  なし
 血中、尿中 C-ペプチド  きわめて低い  正常、低下または増加
 インシュリン治療  生存に不可欠  時に必要








軽度耐糖能異常 (IGT)

 ※DM に移行するのは、その 20 〜 30% と思われる

 ※肥満、高血圧、高 TG 血症は DM に移行する危険因子
  (1). 偽陽性の正常
  (2). 偽陰性の DM
  (3). DM への移行期
  (4). 肝疾患・内分泌疾患・薬物等による耐糖能異常:一部は DM に移行
  (5). 加齢による耐糖能異常:一部は DM に移行
  (6). その他:妊娠糖尿病、syndrome X 等








胃切除後耐糖能異常

 (1). 食物の胃からの排出と腸からの吸収が急速となり食直後の高血糖とインシュリ
   ンの過剰分泌が起こり、その後(食後 2 〜 3時間後)反応性低血糖が出現。

 (2). ブドウ糖負荷試験では急峻高血糖と呼ばれる特徴的な血糖曲線をえがく。

 (3). 糖尿病の患者に胃切除をすると、一般的には糖尿病が軽快する。

 (4). 胃切除後の食後高血糖防止には一回の食事量を減らして食事回数をふやすとか
   糖分の摂取量を減らしたり、アカルボース糖食後高血糖防止薬を使う。








インシュリノーマ (insulinoma) の診断

 ※血糖値に対する相対的なインシュリン高値が存在するかどうか?
  監視下で 24時間以内の絶食試験を行い、低血糖発作の出現を確認し、その際の
  血中インシュリン値 (μU/ml) と血糖値 (mg/dl) の比を算出する。
  血中インシュリン値 (μU/ml)/血糖値 (mg/dl) > 0.3 ではインシュリノーマが
  極めて疑わしい。(詐病との鑑別には C-ペプチドを測定)








低血糖の鑑別

 1. 空腹時低血糖
  A. 薬剤
   a. インシュリン・SU 剤・アルコール
   b. ペンタミジン・キニジン
   c. サリチル酸・スルフォンアミド
   d. その他
  B. 重要臓器障害
   a. 肝疾患
   b. 心疾患
   c. 腎疾患
   d. 敗血症
   e. 栄養障害
  C. ホルモン欠乏症
   a. コルチゾール
   b. 成長ホルモン
   c. グルカゴン
   d. エピネフリン
  D. 非ラ氏島腫瘍
  E. 高インシュリン血症

 2. 食後低血糖
  A. 糖質代謝酵素先天的欠損
   a. ガラクトース血症
   b. 遺伝性果糖不耐症
  B. ダンピング症候群
  C. 自然発症性低血糖








栄養バランス

 ◇蛋白質:15% 、脂肪:20% 、炭水化物:65% を目安にする。








大豆の栄養成分とその効用

 (1). 脳卒中予防効果

 (2). 粥状動脈硬化の予防
   ○大豆蛋白中のグロブリンがコレステロールを吸着
   ○大豆中のシトステロールがコレステロールの吸収を阻害

 (3). 骨の保護:イソフラボノイドによる骨吸収抑制(骨粗鬆症がすくない)
        イソフラボノイドには女性ホルモン作用があるらしい。








緑茶カテキン・緑茶抽出物について

 (1). 抗腫瘍作用

 (2). 発癌抑制作用・転移抑制作用

 (3). 一杯のお茶には 0.1 〜 0.15g のカテキンが含まれており、癌死亡率の低い緑
   茶生産地では 1.0 〜 1.5g/日 のカテキンを摂取していると思われる(好みの緑
   茶を一日 10杯程飲めばいい)。








生活活動強度の区分(目安)

生活活動強度 活動動作 時間 日常生活の内容
I(軽い) 睡眠
座る
立つ
歩く
8
12
3
<1/TD>
 
軽い手作業・事務・談話・勉強
家事
通勤・買い物
II(中等度 睡眠
座る
立つ
歩く
8
7 〜 8
6 〜 7
2
 
事務・談話・読書・勉強
家事・接客・機械操作
通勤・買い物・仕事
III(やや重い) 睡眠
座る
立つ
歩く
筋運動
8
6
6
3
1
 
農業・漁業・建築
農業・漁業・建築
農業・漁業・建築
重い筋肉労働
IV(重い) 睡眠
座る
立つ
歩く
筋運動
8
4 〜 5
5 〜 6
4
2
 
 
農業・農耕
農業・農耕
激しいトレーニング・木材の運搬







血糖値に影響する薬剤

 A.通常血糖値を上昇させる薬剤
  1.サイアザイド系利尿剤
  2.糖質コルチコイド
  3.エストロゲン
  4.フェニトイン
  5.甲状腺ホルモン
  6.リチウム
  7.糖含有シロップ

 B.稀に血糖値を上昇させる薬剤
  1.カフェイン
  2.ニコチン
  3.NSAID
  4.フェノバルビタール
  5.シクロフォスファミド
  6.エタクリン酸
  7.Ca-blocker

 C.低血糖をおこす薬剤
  1.スルフォン酸アミド
   インシュリン分泌促進
  2.サリチル酸
   高投与量で糖新生の低下、遊離SU剤増加
  3.β-ブロッカー
   拮抗ホルモン作用低下
  4.蛋白同化ホルモン
   インシュリン感受性増強
  5.MAO阻害剤
   インシュリン分泌促進
  6.アルコール
   糖新生の低下
  7.クロニジン
   拮抗ホルモン作用低下
  8.プロベネシド
   SU剤腎排泄の抑制
  9.クロフィブレート
   糖新生の低下、SU剤腎排泄の抑制
  10.クロロキン
    遊離SU剤増加
  11.フェニルブタゾン
    遊離SU剤増加








劇症1型糖尿病診断基準(NIS 2004;4193:16)
下記1〜3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する
1. 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る
  (初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める)
2. 初診時の(随時)血糖値が288mg/dl(16.0mmol/l)以上であり、
  かつHbA1c値<8.5%である
3. 発症時の尿中Cペプチド<10μg/日、または空腹時血中Cペプチド<0.3ng/mlかつ
  グルカゴン負荷後(または食後2時間)血中Cペプチド<0.5ng/mlである
<参考所見>
A. 原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である
B. ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1〜2週間の症例
  も存在する
C. 約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リバーゼ、
  エラスターゼ1など)が上昇している
D. 約70%の症例で先行感染症状(発熱、上気道炎症状、消化器症状など)を認める
E. 妊娠に関連して発症することがある







糖尿病性眼筋麻痺の特徴(日内雑誌 2004;93:1552)
1. 急性発症、50歳以上の高齢者に多い
2. 一側の動眼神経、外転神経麻痺が多い
3. 瞳孔機能は保たれる傾向にある
4. 約半数例で発症前から眼窩内や眼周囲に痛みを伴う
5. DMの罹病期間・コントロール状態・眼底所見と相関しない
6. DM発見の契機となることがある
7. 四肢の多発ニューロパチーを合併している頻度が高い
8. 予後は比較的良好で3〜4か月以内にほぼ自然に回復







糖尿病性眼筋麻痺の主な鑑別疾患(日内雑誌 2004;93:1553)
1. 脳動脈瘤:内頸動脈・後交通動脈分岐郡
2. 脳幹梗塞、脳幹腫瘍
3. 内側縦束症候群(MLF症候群)
4. Fisher症候群、Bickerstaff型脳幹脳炎
5. Tolosa-Hunt症候群、眼窩内病変
6. 海綿静脈洞血栓症
7. 重症筋無力症
8. 甲状腺中毒性ミオパチー
9. 髄膜炎、癌性髄膜炎
10. その他







糖原病
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,pp116-117)
グリコーゲン代謝に関与する酵素の先天的異常によって組織にグリコーゲンが
蓄積 する疾患をいう。主として肝または筋が障害されるが肝腫大、人形様顔貌、
低血糖、低身長が主徴で高尿酸血やアシドーシスを伴うこともある。8型が知られ
ている。
1. von Gierke病、糖原病I型
  グルコース-6-リン酸の脱リン過程の障害により肝腫大、腹満が生後数か月
  頃から目立つ。低血糖とそれに基づく痙攣が5才頃まで続き次第に改善する。
  皮下脂肪の沈着、アシドーシス、高尿酸血、出血傾向をみるが脾腫はない。
  知能障害も少ない。幼児期の低血糖を管理すれば予後はさほど悪くないが
  高尿酸血による腎障害、高脂血、狭心症などに注意を要する。
2. Pompe病、全身型糖原病、糖原病II型
  α-1、4-グルコシダーゼの先天的障害によるもので全身に病変が及び心、肝、
  筋肉、脾、腎、神経系、副腎、甲状腺などにグリコーゲンが蓄積するが高脂血
  や低血糖はない。乳児型は出生2か月以後に心、肝、舌の肥大、呼吸障害、筋力
  低下が現れる。半数に心雑音をききCPK、GOT、LDHが高値になるが尿中グルコシ
  ダーゼの定量とpHの低下で診断できる。平均寿命は5年で心不全などで死亡し
  やすい。小児型は四肢の脱力、筋萎縮などで発見され肝腫は著しくないことが
  ある。CPKアイソザイム異常で診断されるが心筋障害のため20才頃までに死亡
  しやすい。成人型は舌の肥大、筋力低下、筋萎縮などで壮年期以後に発見され
  肝、心の肥大を欠くが呼吸筋障害で呼吸不全に陥ることはある。
3. Forbes病、Cori病、糖原病III型
  amino-1、6-glucosidaseなどの欠損による。乳幼児期から肝腫大、低血糖、
  成長障害がみられるがI型に比して軽く筋力低下や心肥大もみないことが多い。
  予後もさはど悪くない。
4. Andersen病、糖原病IV型
  分枝酵素の欠損で肝、筋、腎、脾、腸、神経系などヘグリコーゲンが蓄積す
  る。発育の遅延があり肝脾腫、筋力低下で気づかれる。
  門脈高血圧、食道静脈瘤を伴った肝硬変として消化管出血、GOTやLDHの高度
  上昇がみられる。3才頃までに死亡しやすい。
5. McArdle病、糖原病V型
  骨格筋のglycogen phosphorylase活性の欠如による。小児期から筋の易疲労、
  運動時の有痛性硬直がみられるが休息で回復する。筋萎縮は大腿、肩に多く頚、
  上腕にもみられる。CPK、GOT、LDH、アルドラーゼ値が上昇し運動後にミオグロ
  ビン尿がみられる。運動を避ければ予後は悪くない。
6. Hers病、糖原病VI型
  肝phosphorylaseの異常により肝腫大、腹部膨満が著明になりコレステロール、
  中性脂肪、GOTが時に高値になる。低血糖や肝腫は欠くことが多い。
7. Tarui病、糖原病VII型
  垂井により報告された。骨格筋phosphofructokinaseの先天的異常によりV型
  と似た筋力低下がみられる。運動により筋の脱力、硬直、動悸が数分後に現れ
  休息を要する。ミオグロビン尿、CPK、GOT、LDHの軽度上昇をみとめるが予後は
  良好である。
8. 糖原病VIII型
  最も軽症の糖原病といわれ肝phosphorylase-kinaseの欠損による。
Y VI型とよく似て肝腫大以外にはほとんど症状がない。低血糖例も少なく年長に
  なれば肝腫も縮小するので予後は悪くない。







グルカゴノーマ・膵A細胞腫
(榎村・吉岡『病名・文献検索辞典』世界保健通信社.1985,1st ed.,p112)
膵A細胞から発生する腫瘍で多くの場合心窩部に疼痛のある腫瘤を触れしばしば
肝に転移する。腫瘍からグルカゴンが多量に産生され肝グリコーゲンが分解されて
血糖値が上昇する。糖負荷値にも異常があり血中のグルカゴンは40mg/dl(正常2mg)
と高くグルカゴンを負荷しても血糖や血中インスリンが増量しない。
慢性の皮膚エリテーマを伴うことも多い。多腺性ホルモン産性腫瘍の一分症とし
て見いだされることもあるが極めて希な疾患に属する。







HbA1cと血糖値の関係の目安(『Medical ASAHI』2005;No.2:67)
  1. 空腹時血糖値(mg/dl)= HbA1c×20 または ( HbA1c + 1)× 18
  2. 食後2時間血糖値(mg/dl)= HbA1c×26 または ( HbA1c + 1)× 22.5







ビグアナイド薬の禁忌(『Medical ASAHI』2005;No.2:67)
 1. 絶対禁忌
   1) 腎機能低下
   2) 低酸素血症(うっ血性心不全、心筋梗塞、呼吸器疾患)
   3) 肝機能障害(肝硬変、肝炎)
   4) 高齢者
   5) ミトコンドリアDNA異常による糖尿病
   6) アルコール多飲者
   7) 乳酸アシドーシスの既往
   8) 妊娠中、授乳期
   9) 小児
 2. 一時的禁忌
  10) 外科手術時
  11) 血管造影時、造影剤を使用する検査時
  12) 重大な身体的ストレス(重症感染など)
  13) 絶食時、脱水時
  14) 急性代謝失調(糖尿病性ケトアシドーシスなど)







糖尿病網膜症の分類(福田分類、日経メディカル 2005年5月号、p.82)
   1. 単純性
      AI:毛細血管瘤
      AII:点状・斑状網膜出血、硬性白斑
   2. 前増殖性
      BI:網膜表層出血、軟性白斑
   3. 増殖性
      BII:網膜新生血管        
     BIII:乳頭新生血管        
      BIV:硝子体出血
      BV:増殖組織、網膜剥離
   4. 停止性(6か月以上落ち着いている状態)
     AIII:新生血管を残す        
      AIV:硝子体出血を残す        
      AV:増殖組織を残す







糖尿病網膜症の分類(福田分類、日経メディカル 2005年5月号、p.82)
         尿蛋白  GFR(CCr)   病理学的特徴     提唱されている治療法
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 1.第1期    正常   正常    び慢性病変 なし〜軽度  血糖コントロール
(腎症前期)        時に高値
-----------------------------------------------------------------------------
 2.第2期* 微量アルブ 正常   び慢性病変 軽度〜中等  厳格な血糖コントロ
(早期腎症)  ミン尿  時に高値 結節性病変 ときに存在 ール・降圧治療**
-----------------------------------------------------------------------------
 3.第3期-A   持続性 ほぼ正常 び慢性病変 中等度    厳格な血糖コントロ
(顕性腎症前期)蛋白尿       結節性病変 多くは存在 ール・降圧・蛋白制限
-----------------------------------------------------------------------------
 4.第3期-B   持続性 低下***  び慢性病変 高度      降圧治療・低蛋白食
(顕性腎症後期)蛋白尿***      結節性病変 多くは存在 
-----------------------------------------------------------------------------
 5.第4期    持続性  著名低下                 降圧治療・低蛋白食・
(腎不全期)  蛋白尿  (Cr上昇)                 透析療法導入****
-----------------------------------------------------------------------------
 6.第5期          透析治療中                透析療法・腎移植
(透析療法期) 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
  注*)糖尿病性腎症早期診断基準(下記)を参照
  **)正常血圧者でも血圧上昇を認めることがある。また微量アルブミン尿に対して
    一部の降圧薬の有効性が報告されている。
  ***)持続性蛋白尿約1g/日以上、GFR(CCr)約60ml/分以下を目安とする。
 ****)透析療法導入に関しては、長期透析療法の適応基準を参照







糖尿病性腎症早期診断基準(厚生省、平成2年度、糖尿病調査研究報告書より)
  試験紙法などで尿蛋白陰性の糖尿病症例を対象とする
 1.腎症早期診断に必須である微量アルブミン尿の基準を下記のとおりにする。
  (1)スクリーニング
     来院時尿(随時尿)を用い、市販のスクリーニング用キットで測定する。
  (2)診断
     上記スクリーニングで陽性の場合、あるいは初めから時間尿を採取し、以下
    の基準に従う。
     ・夜間尿       10μg/分以上
     ・24時間尿      15μg/分以上
     ・昼間(安静時)尿  20μg/分以上
  (3)注意事項
   a.(1)(2)の両者とも、日差変動が大きいため、複数回の採尿を行い判定すること
   b.試験紙法で尿蛋白軽度陽性の場合でも、尿中アルブミン測定が望ましい。なお
    微量アルブミン尿の上限は、約200μg/分とされている。
   c.以下の場合は判定が紛らわしい場合があるので検査を避ける。
     ・高度の希釈尿
     ・妊娠中、月経中
     ・過激な運動後、過労、感冒など
 2.除外診断
  (1)非糖尿病性腎疾患
  (2)尿路系異常と感染症
  (3)うっ血性心不全
  (4)良性腎硬化症







糖尿病性腎症の食事療法指導基準(厚生省、平成5年度、糖尿病調査研究報告書より)
        総エネルギー  蛋白質   塩分   カリウム       備考
        (Cal/kg/日)   (g/kg/日)  (g/日)    (g/日)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 1.第1期     25〜30          制限せず 制限せず  糖尿病食を基本にし、
(腎症前期)                                血糖コントロールに
------------------------------------------------------努める。蛋白質の
 2.第2期     25〜30   1.0〜1.2 制限せず 制限せず    過剰摂取はよくない。
(早期腎症)  -----------------------------------------------------------------------------
 3.第3期-A    25〜30   0.8〜1.0  7〜8   制限せず
(顕性腎症前期)
-----------------------------------------------------------------------------
 4.第3期-B    30〜35   0.8〜1.0  7〜8   軽度制限  浮腫の程度、心不全
(顕性腎症後期)                            の有無から水分を
----------------------------------------------------適宜制限する。
 5.第4期      30〜35   0.6〜0.8  5〜7     1.5    
(腎不全期)  
-----------------------------------------------------------------------------
 6.第5期       HD:30〜35   1.0〜1.2        1.5     (*)食塩、水分は維持透析
(透析療法期)  CAPD:29〜34   1.1〜1.3  (*)   2.0〜2.5     患者の食事療法に準ず
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







糖尿病とそれに関連する耐糖能低下*の成因分類(JDS 1999)
  I.1型(β細胞の破壊、通常は絶対的インスリン欠乏に至る)
     A.自己免疫性
     B.特発性
  II.2型(インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で
      それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある)
VIII.その他の特定の機序、疾患によるもの
     A.遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
     (1)膵β細胞機能にかかわる遺伝子**
         インスリン遺伝子(異常インスリン症、異常プロインスリン症)
         HNF-4α遺伝子(MODYl)
         グルコキナーゼ遺伝子(MODY2)
         HNF-1α遺伝子(MODY3)
         IPF-1遺伝子(MODY4)
         HNF-1β遺伝子(MODY5)
         ミトコンドリアDNA(MIDD)
         アミリン遺伝子
         その他
     (2)インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常
         インスリン受容体遺伝子
         (A型インスリン抵抗性症候群、妖精症、Rabson-Mendenhall症候群
          ほか)
         その他
     B.他の疾患、条件に伴うもの
     (1)膵外分泌疾患
         膵炎、外傷/膵摘出術、腫瘍、ヘモクロマトーシス、その他
     (2)内分泌疾患
         クッシング症候群、先端肥大症、褐色細胞腫、グルカゴノーマ、
        アルドステロン症、甲状腺機能亢進症、ソマトスタチノーマ、その他
     (3)肝疾患***
         慢性肝炎、肝硬変、その他
     (4)薬剤や化学物質によるもの
         グルココルチコイド、インターフェロン、その他
     (5)感染症
         先天性風疹、サイトメガロウイルス、Epstein-Barrウイルス、
        Coxsackieウイルス、Mumpsウイルス、その他
     (6)免疫機序によるまれな病態
         インスリン受容体抗体、Stiffman症帳群、インスリン自己免疫症候
        群、その他
     (7)その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
         Down症候群、Prader−Willi症候群、Turner症候群、Klinefelter
       症候群、Werner症候群、Wolfram症候群、セルロプラスミン佃下症、
       脂肪萎縮性糖尿病、筋強直性ジストロフイー
       その他
  IV.妊娠糖尿病(GDM)
       ---------------------------------------------------
  (*)一部には、糖尿病特有の合併症を来すかどうかが確認されていないものも含まれ
   る。
 (**)ADA(1997)やWHO(1998)の分類ではBの(1)〜(7)と同列に扱われている。
(***)ADA(1997)やWHO(1998)の分類では取り上げられていない。







糖尿病の診断手順(JDS、1999)
 A.臨床診断
  1.空腹時血糖値≧126mg/dl、75gOGTT2時間値≧200mg/dl、随時血糖値≧200mg/dl
    のいずれか(静脈血漿値)が、別の日に行った検査で2回以上確認できれば糖尿
    病と診断してよい*。これらの基準値を超えても、1回の検査だけの場合は糖尿
    病型と呼ぶ。
  2.糖尿病型を示し、かつ次のいずれかの条件がみたされた場合は、1回だけの検査
    でも糖尿病と診断できる。
  @   a.糖尿病の典型症状(口渇、多飲、多尿、体重減少)の存在
     Ab.HbA1c≧6.5%**
      c.確実な糖尿病網膜症の存在
  3.過去において上記1.ないし2.がみたされたことがあり、それが病歴などで
    確認できれば、糖尿病と診断するか、その疑いを持って対応する。
  4.以上の条件によって、糖尿病の判定が困難な場合には、患者を追跡し、時期を
    おいて再検査する。
  5.糖尿病の臨床診断に当たっては、糖尿病の有無のみならず、分類(成因、代謝
    異常の程度)、合併症などについても把握するように努める。
 B.疫学調査
   糖尿病の頻度推定を目的とする場合は、1回の検査だけによる「糖尿病型」の判
  定を「糖尿病」と読み替えてもよい。なるべく75gOGTT2時間値≧200mg/dlの基準を
  用いる。
C.検診   
   糖尿病を見逃さないことが重要である。スクリーニングには血糖値の指標のみな
  らず、家族歴、肥満などの臨床情報も参考にする。
    ---------------------------------------------------------
 (*)ストレスのない状態での高血糖の確認が必要である。
   1回目と2回目の検査法は同じである必要はない。1回目の判定が随時血糖値≧200mg
   /dlで行われた場合は、2回目は他の方法によることが望ましい。1回目の検査で空
   腹時血糖値が126〜139mg/dlの場合には2回目にはOGTTを行うことを推奨する。
(**)日本糖尿病学会グリコヘモグロビン標準化委員会の標準検体で補正した値







糖尿病性神経障害の分類と徴候
 A.びまん性対称性神経障害
   1.感覚連動神経障害ー自発痛、異常知覚、知覚鈍麻、脱力、腱反射低下・消失
   2.自律神経障害ー無自覚性低血糖、起立性低血圧、胃無力症、便通異常、排尿
           障害、発汗異常、インポテンツ
 B.単一神経障害
   1.脳神経麻頼ー動眼神経麻痺、額面神経麻痺、外転神経麻痺
   2.体幹および四肢の神経麻痺−尺骨神経麻痺、腓骨神経麻痺
   3.糖尿病性筋萎縮症−大腿四頭筋、腸腰筋、内転筋群の筋力低下・筋萎縮・筋痛
 C.その他







糖尿病性神経障害(distal symmetric polyneuropathy)の簡易診断基準1998
 A.必須項目
   以下の2項目を満たす。
     1.糖尿病が存在する。
     2.糖尿病性神経障害以外の末梢神経障害を否定しうる。
 B.条件項目
   以下の3項目のうち2項目以上を満たす場合を“神経障害あり”とする。
     1.糖尿病性神経障害に基づくと思われる自覚症状
     2.両側アキレス腱反射の低下あるいは消失
     3.両側内踝振動覚低下(128音叉にて10秒未満)
 C.注意事項
     1.糖尿病性神経障害に基づくと思われる自覚症状とは
        1)両側性
        2)足趾先及び足裏の「しびれ」「疼痛」「感覚低下」「感
         覚異常」のうち何れかの症状(冷感は取らない)を訴える。
       上記の2項目を満たす。上肢の症状はとらない。
     2.アキレス腱反射の検査は膝立位で検討する。
     3.特に、脊椎症の合併に注意する。
     4.高齢対象者については十分考慮する。
 D.参考項目
     以下の参考項目のいずれかを満たす場合は、条件項目を満たさなくても
    “神経障害あり”とする。
     1.神経伝導検査で2つ以上の神経でそれぞれ1項目以上の検査項目(伝導
      速度、振幅、潜時)の異常を認める。
     2.臨床的に明らかな糖尿病性神経障害がある。自律神経機能検査で異常を
      確認することが望ましい。







糖尿病性自律神経障害と問題点
  1.無自覚性低血糖ー重症低血糖
  2.心血管系
    ・無痛性心筋梗塞一突然死、急性心筋梗塞の診断の遅延
    ・起立性低血圧ー心室細動、心筋梗塞、脳梗塞、
    ・低血糖発作の誤認
    ・動静脈シヤントの調節不全一下肢潰瘍
  3.消化器系
    ・胃無力症一胃部膨満感、嘔気、困難な血糖コントロール
    ・便秘・下痢一不安定な食欲
  4.泌尿器系
    ・無力性膀胱一尿路感染症、高窒素血症
    ・インポテンツ、逆行性射精一不妊







糖尿病網膜症の内科的管理
●血糖管理(網膜症の有無による段階的血糖管理)
  1)網膜症の有無にかかわらずHbA1cが高い(HbA1c8.0%以上)場合
      とりあえずHbA1c8.0%まで速やかに下げる
  2)網膜症なし〜単純性網膜症、かつ未治療期間(推定)/血糖コントロール不良
    期間2年以内;目標値
      空腹時血糖<140mg/dl、食後血糖<200mg/dl、HbA1c:5.5〜6.5%、速やかに
     目標値に近づける。
  3)前増殖期〜増殖期網膜症、または未治療期間(推定)/血糖コントロール不良
    期間5年以上;目標値
      HbA1c:7.0%、眼底網膜検査を行いながら、HbA1c8.0%から7.0%まで、6カ月
     以上かけ緩やかに下げる。
      ・平均血糖値降下速度:-10mg/dl/月
      ・HbA1c降下速度:最大-0.5%/月
●血圧管理
  1)降庄目標:収縮期<130mmHg、拡張期<85mmHg
  2)第一選択降圧剤:ACE阻害剤、長時間作用型Ca拮抗薬、α-遮断薬
●眼底網膜検査
  1)網膜症の初回スクリーニングは、糖尿病発症後5年以内に行う。
    ルーティンに年1回
  2)急速な血糖コントロール改善が予想される場合には、1〜2カ月に一回。
    網膜症発症後は必要に応じて検査
●その他
  1)体重:BMI=20〜24
  2)血清脂質
     管理目標値:総コレステロール140〜200mg/dl、中性脂肪<120mg/dl、
           HDLコレステロール≧40mg/d1
  3)生活習慣の改善:
     ・食事:総脂肪は総エネルギーの25%、飽和脂肪酸10%以下
     ・運動:1週間に少なくとも3〜5回、一回最低30分間
     ・禁煙、節酒







糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と非ケトン性高浸透圧性昏睡(HONK)の鑑別
       糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) 非ケトン性高浸透圧性昏睡(HONK)
-------------------------------------------------------------------------------
糖尿病タイプ    1型糖尿病                  2型糖尿病
発症年齢      若年                     高齢
前駆症状      多飲、多尿、消化器症状         特異的なものなし
身体異常      脱水、アセトン臭、Kussmaul大呼吸   脱水、アセトン臭なし、
                                   痙攣・振戦等の神経学的所見
-------------------------------------------------------------------------------
検査所見
 ・尿ケトン体   陽性〜強陽性            陰性〜弱陽性
 ・血糖値     300〜1000mg/dl           600〜1500mg/dl
 ・浸透圧     >300mOsm/L            >350mOsm/L
 ・Na       正常〜軽度低下           >150mEq/L
 ・PH       <7.3                  7.3〜7.4
 ・BUN       上昇                 著明に上昇
 ・K        軽度高値、治療後低下       軽度高値、治療後低下
-------------------------------------------------------------------------------
その他の特徴    反復傾向あり           改善後は血糖コントロ
                                ール良好







糖尿病病態の鑑別(糖尿病性ケトアシドーシスと高浸透圧性非ケトン性高血糖性昏睡)
         糖尿病性ケトアシドーシス        高浸透圧性非ケトン性高血糖性昏睡
 -----------------------------------------------------------------------------
・糖尿病病態   インスリン依存型・不安定型     インスリン非依存型・安定型
 -----------------------------------------------------------------------------
・発症前の    インスリン注射の中止・減量     降庄利尿薬、グルココルチコイド
 既往、誘因   インスリン抵抗性の増大       免疫抑制薬、脱水、急性感染症
           感染、心身のストレス         熱傷、肝障害、腎障害
 -----------------------------------------------------------------------------
・発症年齢    若年者(多くは30歳以下)       高齢者(多くは50歳以上)
 -----------------------------------------------------------------------------
・前駆症状   激しい口渇、多飲、多尿        明確かつ特異的なものに乏しい、
        体重減少、甚だしい全身倦怠       倦怠感、頭痛、胃場症状
        胃場症状(悪心、嘔吐、腹痛)
 -----------------------------------------------------------------------------
・理学的所見  脱水(+++)、発汗(-)           脱水(+++)、アセトン臭(-)、呼吸
        アセトン臭、呼吸刺激、頻脈       障害、刺激(-)、循環虚脱(++)
        Kussmaul大呼吸、血圧低下       神経学的所見に富む(痙攣、振戦)
        神経学的所見に乏しい
 -----------------------------------------------------------------------------
・血液所見
  ケトン体  (+)〜(+++)、通常4mM以上       (-)〜(+)
  HCO3     15mEq/l未満              20mEq/lを越える
  pH      7.3未満                   7.3〜7.4
  Na     通常140mEq/l未満            通常150mEq/lを越える
  K      初期上昇、末期低下           やや増加傾向
  Cl     低下することが多い           (正常時に上昇)
  FFA     著明に増加                ほぼ正常
  BUN     増加                    著明に増加
  浸透圧   300〜400mOsm/l            330mOsm/lを越える
  血糖    250〜1000mg/dl             600〜1500mg/dl
 -----------------------------------------------------------------------------
・鏡別を要   脳血管障害、脳幹部出血       脳血管障害、低血糖
  する疾患  低血糖、代謝性アシドー        けいれんを伴う疾患
        シス、急性胃場障害、
        肝膵疾患、急性呼吸障害
 -----------------------------------------------------------------------------
・注意すべき  急性胃拡張、腎不全          急性胃拡張、動静脈血栓、心不全
 合併症(治  低K血症、脳浮腫             低血圧、脳浮腫、腎不全
 療経過中に  急性感染症
 起こり得る
 もの)
-----------------------------------------------------------------------------
・備考     反復することがまれでは         回復後、糖尿病はよくコントロール
         ない                     されることが多い







高浸透圧性非ケトン性高血糖性昏睡の主な誘因
 1. 薬剤:ステロイド薬、利尿薬、輸液、高カロリー栄養
 2. 感染:腎尿路感染、呼吸器感染、膿瘍、敗血症、ウイルス感染
 3. 脱水:下痢、嘔吐、水分制限
 4. 手術:胸・腹部手術、脳手術
 5. 腎疾患:腎不全、腹膜潅流、血液透析
 6. 血糖コントロール不良:食事の乱れ、薬剤中止
 7. 中枢神経疾患:脳卒中、脳腫瘍
 8. 消化器疾患:急性膵炎、消化管出血
 9. 妊娠異常:胎児死亡、流産
10. 内分泌疾患:尿崩症、甲状腺疾患
11. 循環障害:心筋梗塞、心不全







小児*および乳児の低血糖の主な原因(NEJM 2001;345:1835)
 1. Decreased production of glucose
   1)Decreased release of glucose from the liver
    ・Glycogen synthase deficiency
    ・Glucose-6-Phosphatase deficiency(glycogenosis typeIa or Ib)
    ・Amylo-1,6-glucosidase deficiency(glycogenosis type III)
    ・Galactose-1-Phosphate uridylyltransferase deficiency(galactosemia)
    ・Fructose-1-Phosphate aldolase defiency(fluctosemia)
   2)Interruption of Cori and alanine cycles
    ・Pyruvatecarboxylase deficiency
    ・Phosphoenolpyruvate carboxykinase deficiency
    ・Fructose-1,6-diphosphatase deficiency
   3)Impaired conversion of glycerol into glucose(glycerokinase deficiency)
 2. Increased use of impaired conservation of glucose(decreased availability
     of alternativer fuels)
   1)Impaired oxidation of fatty acids
    ・Carnitine acyltransferase I deficiency
    ・Carnitine deficiency
    ・Long-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase deficiency
    ・Medium-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase deficiency
    ・Multiple acyl-coenzyme A dehydrogenase deficiency
   2)Impaired synthesis of use of ketones
    ・Hydroxymethylglutaryl coenzyme A lyase deficiency
    ・β-ketothiolase deficiency
    ・Growth hormone deficiency(?)
    ・Cortisol defidency(?)
   3)Decreasedfitstores
    ・Prematurity
    ・Malnutrition
 3. Decreased production and increased use of glucose
    ・Hyperinsulinism
    ・Exposure to ethanol
    ・Exposure to salicylates(?)

 小児*:Leucine-sensitive hypoglycemia and ketotic hypoglycemia should not
     be considered disease entities.Sensitivity to leucine is the result
     of hyperinsulinism. So-Called ketotic hypoglycemia is a self-
     limiting,age related physiologic process caused by the high glucose
     requirement of the brain in infants and young children.







BOT(basal supported oral therapy)による外来インスリン療法
 1. Decreased production of glucose
           (Medical Tribune 2010.6.24より)
  1. BOTの対象となるのは、経口血糖降下薬による治療でHbA1cが7.5%を切れない
  2型糖尿病患者。
  2. BOT導入後の経口血糖降下薬は原則そのまま維持するが、SU剤を極量使用して
  いたケースでは半分くらいに減らす。
  3. 持効型インスリン(グラルギン)は4単位から開始し、効果不足なら2単位ずつ
  増やしつつ、半年聞くらいかけてFBS(空腹時血糖)値110mg/dL以下を目指す。
  4. BOT開始後半年間経過してHbA1c7.0%以下が達成できない場合は、BOTを維持し
  つつ、起速効型インスリンを3回の食事のどれか1回(それでもコントロール
  が悪ければ次いで2回と)追加投与するbasal-plus法に移行する。
  5. BOTでの持効型インスリンの注射時間は、1日のうちいつでもよいので、患者が
  毎回同じ時間に注射できる時間を選んで構わない。