Bartter(バーター症候群)

 傍糸球体の肥大・レニン上昇・アルドステロン上昇・アルカローシス・カリウム低下
 浮腫なし・血圧正常・アンギオテンシン上昇








原発性アルドステロン症

アルドステロン上昇・レニン低下・17-OHCS 低下・17-KS 低下・デキサメサゾン抑
制試験陰性・浮腫なし(血糖上昇・アルカローシス・アンギオテンシン低下)

※診断手順
 (1). 低カリウム血症を伴う高血圧、利尿剤で低カリウム血症を生じやすい
 (2). 尿中カリウム排泄量の増加(30mEq/日 以上)
 (3). 血中、尿中アルドステロン増加
 (4). 尿中 17-KS 、17-OHCS は正常
 (5). 血漿レニン低下、抑制の確認(フロセミド + 立位、カプトリル負荷試験)
 (6). 副腎の画像診断(CT・MRI・131-I-アルドステロールシンチ・副腎静脈造影 +
   サンプリング)
 (7). 亜型診断








クッシング症候群

※最近の画像診断の進歩で chanceoma として pre-Cushin g症候群が見られることが
 ある。
 コルチゾール上昇・17-OHCS 上昇・17-KS 上昇〜正常・カリウム低下・アルカロ
 ーシス・WBC 上昇・好酸球低下

※診断手順
 (1). スクリーニング
  1. 理学所見:多毛・中心性肥満・筋力低下
  2. 検査
   a. 深夜採血の血漿コルチゾール 10μg/dl 以上
   b. 就寝時デキサメサゾン 1mg 投与後の翌朝の血漿コルチゾール 5μg/dl 以上
 (2). 鑑別診断
  1. デキサメサゾン 1mg 、8mg 投与後の血漿コルチゾール、尿中 17-OHCS
  2. 血漿 ACTH
  3. メトピロン試験
 (3). 画像診断:CT・副腎シンチ・副腎静脈造影








褐色細胞腫

※大部分は片側副腎髄質 (chromophobe adenoma) 、10% が悪性、Sipple は常染色
 体優性、20% は副腎外性、10% 程度が家族性(このうち 80% が Sipple)
 カテコールアミン上昇・尿中 VMA 上昇・WBC 上昇・RBC 上昇・T-Ch 上昇・アン
 ギオテンシン上昇・蛋白尿・カリウム低下 (20%)
 ◇腫瘍が PTH を分泌すれば Ca 上昇・P 低下、CT を分泌すれば Ca 低下
 ◇セロトニン上昇・5-HIAA 上昇

※診断手順
 (1). 血中または尿中カテコラミン上昇
 (2). カテコラミン分泌刺激試験(グルカゴン1mg 静注)
 (3). カテコラミン分泌抑制試験(クロニジン 0.3mg 経口投与後 3時間目の血中カテ
   コラミンの変化)
 (4). 腹部 CT
 (5). 131-I-メタヨードベンジルグアニジン (MIBG) シンチ(特異性が高い)
 (6). 静脈血サンプリング(カテコラミン濃度)








続発性アルドステロン症

◇レニン低下:クッシング症候群・等質コルチコイド産性腫瘍・偽アルドステロン症
 DOCA 産性腫瘍・ステロイド過剰・腎実質疾患・11- (17-) ハイドロキシラーゼ欠
 乏症

◇レニン上昇:悪性高血圧症・腎血管性高血圧症・急性水腎症・レニン産性腫瘍・利尿
 剤投与中の本態性高血圧症・Na 喪失性腎疾患・偽性バーター症候群(長期利尿剤投
 与・長期下剤投与による慢性 K低下)








多発性内分泌腺腫症 (MEN)

全て常染色体優性遺伝
PPP (MEN I : Wermer) + PTA (MEN II : Sipple)
PPPTA (PPPTA =Pituitary ; Pancureas ; Parathyroid ; Thyroid ; Adrenal の順
で覚える)

◇中心は Parathyroid の病変 (ppPta)
副甲状腺機能亢進症:PTH 増加・高 Ca血症・低 P血症








甲状腺機能亢進症

◇糖尿病の合併
 耐糖能異常は 57% に認められる。
 腸管からの糖吸収の亢進・肝臓での糖新生の亢進
 型通りの食事療法を避けて、通常より多めのカロリーを与える。運動療法も注意を要
 す。
 インシュリン必要量は甲状腺機能亢進では増加。








副腎インシデンタローマ
 
(Incidentaloma・incidentally discover dadrenal mass)

※本症の 80% 位は良性で治療を必要としない。

◇頻度
 0.6 〜1.3% だが剖検で副腎腺腫の頻度 8.7% といわれ、今後 2.0% 位に増加。

◇腫瘍の種類
 副腎皮質腺腫 (67.9%)・副腎癌 (9.4%)・ganglioneuroma (9.4%)・褐色細胞腫
 (5.7%)・副腎嚢腫 (5.7%)・myelolipoma (1.9%)

◇スクリーニング検査
 血中カテコラミン(又は 24時間尿の VMA)、メタネフリン、血中コルチゾール
 ACTH 、血清 K の測定。
 デキサメサゾン抑制試験も望ましい。

※高血圧や低 K血症では血漿レニン活性やアルドステロンも測定。

◇手術適応
 副腎癌と機能性副腎皮質腺腫。但し良性と悪性の鑑別は容易でないので腫瘍の大きさ
 が最も重要視される。本邦では 3cm 未満は手術しない。また 5cm 以上を機能に関
 係なく手術に回す。4cm 前後は case by case である。
 (血中 DHEA-S 、尿中 17-KS の著増は参考になる)

◇ pre-Cushing 症候群:コルチゾール産生腫瘍でありながら、Cushing 症候群の症
 状を欠く副腎インシデンタローマ(Incidentaloma の12 〜 20%)

※高血圧・肥満・糖尿病のある例では手術適応を考える。








副腎の出血と石灰化

1. 副腎の出血(豊富な血液供給あり、出血しやすい。剖検で 0.14 〜1.1% 程度)
 a. 新生児期
  原因不明がおおいが、原因がある場合は分娩時外傷。症状は側腹部腫瘤・遅延性黄
  疸・貧血。両側大出血なら副腎不全。(鑑別は神経芽細胞腫とウィルムス腫瘍)
 b. 成人発症
  外傷によるものが 2/3 を占める。一方急性腹症や出血性ショックを起こすものの
  1/2 は褐色細胞腫。原因不明のいわゆる特発性副腎出血はきわめて稀である。

2. 副腎の石灰化
 a. 小児例
   神経芽細胞腫がもっとも多い。
 b. 成人例
   副腎嚢胞 > 副腎腺腫 > 副腎皮質癌 > 副腎出血
 c. 石灰化の頻度
   神経芽細胞腫 (85%) > 副腎嚢胞 (75%) > 副腎出血 (50%)> 副腎皮質癌 (40%)
   > 副腎腺腫 (14%)

※悪性のものでは中心部に斑状の石灰化。嚢胞では peripheral laminal eggshell
 calcification と表現される石灰化。








カルチノイド症候群

(1). 転移性肝腫大 (15.7%)・腹水・胸水
(2). 発作性皮膚潮紅(フラッシュ)(65.7%)
(3). 皮膚小血管拡張:ペラグラ様皮膚
(4). 右心弁膜障害:肺動脈弁狭窄・三尖弁閉鎖不全(線維性心内膜炎)(11.8%)
(5). 喘息様発作 (4.9%)
(6). 高セロトニン血症
(7). その他:下痢 (42.2%)・腹痛・腹鳴・浮腫

※発作性皮膚潮紅(フラッシュ)
(1). 定型的紫紅色潮紅(セロトニン潮紅)
   I期:顔面より始まり、数秒で前胸・上肢に広がる
  II期:潮紅完了状態で数分〜1時間以上継続
  III期:消退前に紫紅色または暗赤色になる
(2). 非定型的鮮紅色地図状潮紅
  発作時間は長く鮮紅色地図状潮紅の中心より消退








甲状腺疾患の診断

※一般外来の少なくとも 1/10 は何らかの甲状腺疾患を有する。
※その内13% は見逃してはいけない甲状腺疾患(中毒症・機能低下・癌)を持つ。
※検査ではトランスアミナーゼ・TTT・ZTT・ALP・CPK・LDH・尿糖・血糖・血沈・
 コレステロールに注意。(慢性肝炎と診断されていることもある)

A. 甲状腺の触診所見
 (1). 甲状腺腫あり
  1. 瀰満性甲状腺腫
   1). 硬い:橋本病・Basedow 病・亜急性甲状腺炎・甲状腺癌
   2). 軟らかい:単純性甲状腺腫・橋本病・Basedow 病・先天性甲状腺腫
          Refetoff 病
  2. 結節性甲状腺腫
   1). 硬い :甲状腺癌・亜急性甲状腺炎・甲状腺腺腫
   2). 軟らかい:甲状腺腺腫・甲状腺嚢腫・Plummmer 病・急性化膿性甲状腺炎
 (2). 甲状腺腫なし:クレチン病・甲状腺機能低下症(原発性・下垂体性・視床下部
   性)・甲状腺機能亢進症

B. 甲状腺機能検査のフローチャート
 (1). TSH 正常
  1. 遊離 T4 (fT4) 正常
   1). 遊離 T3 (fT3) 正常:正常・橋本病・甲状腺腫瘍
   2). 遊離 T3 (fT3) 低値:低T3症候群
   3). 遊離 T3 (fT3) 高値:解析不能(その他の手段で診断)
  2. 遊離 T4 (fT4) 異常:解析不能(その他の手段で診断)
 (2). TSH 低値
  1. 遊離 T4 (fT4) 低値
   ★ TRH 試験
     I. 無反応:下垂体性甲状腺機能低下症
    II. 遅延反応:視床下部性甲状腺機能低下症
  2. 遊離 T4 (fT4) 正常
   1). 遊離 T3 (fT3) 高値:T3-thyrotoxicosis
   2). 遊離 T3 (fT3) 正常:潜在性甲状腺機能亢進症((2) の 3. へ)
   3). 遊離 T3 (fT3) 低値:解析不能(その他の手段で診断)
  3. 遊離 T4 (fT4) 高値
   ★ TR-Ab 測定(TSH レセプター抗体)
   1). 陽性:Basedow 病
   2). 陰性:甲状腺シンチ・up take(ヨード-123)
     I. 瀰満性に高値:Basedow 病
    II. 正常ないし結節性に高値:Plummmer 病
    III. 低値:亜急性甲状腺炎・無痛性甲状腺炎
 (3). TSH 高値
  1. 遊離 T4 (fT4) 低値
   ★甲状腺抗体
   1). 陽性:橋本病・Basedow 病治療後
   2). 陰性:橋本病・特発性粘液水腫・甲状腺ホルモン合成障害
  2. 遊離 T4 (fT4) 正常:潜在性甲状腺機能亢進症((3) の 1. へ)
              測定上の干渉(抗マウス IgG抗体陽性)
  3. 遊離 T4 (fT4) 高値
   ★甲状腺機能亢進症状(?)
   1). あり
     αTSH サブユニット
     I. 高値:TSH 産生腫瘍
    II. 正常:甲状腺ホルモン不応症(下垂体型)
   2). なし

  1). 遊離 T3 (fT3) 高値
    抗 T3抗体・抗 T4抗体
     陽性:測定上の干渉
     陰性:甲状腺ホルモン不応症(全身型)
  2). 遊離 T3 (fT3) 低値:5'脱ヨード酵素欠損症

※甲状腺ホルモンのうち T4 は inter α-gl (TBG) に結合、ホルモン作用を示すため
 には遊離型ホルモンの存在が重要、fT4 は総 T4 の 0.02%〜0.03% 、fT3 は総 T3
 の 0.3% が遊離型となったもの。
 正常者では fT4 は 1〜2ng/dl 、fT3 は 3〜4pg/ml である。

C. 甲状腺機能亢進症
 (1). Basedow 病
 (2). Plummmer 病:甲状腺ホルモン産生 adenoma
 (3). Hashitoxicosis:TSH-RAb のうち刺激抗体陽性
 (4). 亜急性甲状腺炎:ウイルス感染による甲状腺組織破壊、Tg の大量流出、血沈亢
            進、ステロイド有効
 (5). 無痛性甲状腺炎:基礎疾患に橋本病が多い、ML や Plasmacytoma を念頭にお
           く無痛性・結節性甲状腺腫で亜急性甲状腺炎と同じ症状
 (6). T3-thyrotoxicosis
 (7). T4-thyrotoxicosis
 (8). iatrogenic:やせ薬
 (9). 胞状奇胎 (molar pregnancy ) および絨毛性腫瘍 (cholion epitheriioma
   malignum)
   HCG に TSH 様作用あり
(10). pheochromocytoma および Sipple syndrome:血中カテコラミン高値で甲状
    腺機能亢進症状を呈する。甲状腺ホルモンは正常

※甲状腺機能亢進症の補遺
 ◇糖尿病の合併
  耐糖能異常は 57% に認められる。
  腸管からの糖吸収の亢進・肝臓での糖新生の亢進
  型通りの食事療法を避けて、通常より多めのカロリーを与える。運動療法も注意を
  要す。
  インシュリン必要量は甲状腺機能亢進では増加。

※バセドウ病
 ◇バセドウ病の診断
  (1). 瀰満性甲状腺腫
  (2). 血中甲状腺ホルモン高値かつ高感度 TSH 低値
  (3). 甲状腺放射性ヨード摂取率高値(施設が限られる)
  (4). TR-Ab 陽性(未治療バセドウ病での陽性率 90% 、他疾患でも稀に陽性)
  (5). 特有な眼症状
 ◇抗甲状腺剤の投与法
  MMI または PTU を 6 〜 9錠から開始、甲状腺ホルモン・TSH・TR-Ab を指標に
  序々に減量
 ◇治療中止の判断
  通常 MMI・PTU を毎日または隔日一錠投与中に 6ヶ月以上甲状腺ホルモンが正常
  に維持されていれば中止を考慮する。

★指標
 1). 高感度 TSH :抗甲状腺剤中止後 1ヶ月の TSH が 1.2mU/l 以上であれば短期間
          の再発は少ない
 2). TR-Ab の正常化
 3). TS-Ab(甲状腺刺激抗体)の正常化(H8/3/30現在、保険未収採)
 4). T3 抑制試験の陽性化:古くからあり最も信頼性が高い
 5). サイログロブリンの正常化(TR-Ab 陽性例では意義は少ない、TR-Ab 陰性例
   で、抗サイログロブリン抗体陰性の時のみ意義あり)
 6). 甲状腺腫の縮小:あくまでも目安。

D. 甲状腺機能低下症
 (1). 原発性(一次性)甲状腺機能低下症:80% は橋本病由来甲状腺ホルモン
 (2). 下垂体性(二次性)甲状腺機能低下症
 (3). 視床下部性(三次性)甲状腺機能低下症
 (4). 甲状腺ホルモン不応症(全身型・下垂体型)

E. 炎症性甲状腺疾患
 (1). 急性化膿性甲状腺炎
 (2). 亜急性甲状腺炎
 (3). 橋本病(ML が発症することもある)
  1). Hashitoxicosis
  2). 粘液水腫:原発性(一次性)甲状腺機能低下症の 80% は橋本病由来
         この内、甲状腺腫を認めないものは特発性粘液水腫
  3). 無痛性甲状腺炎:橋本病+ウイルス感染と考えられる
  4). Overlapping syndrome:RA・Sjogren・SLE・Aortitis・Colitis
                ulcerosa
                Addison(Schmidt)との合併
  5). 出産後甲状腺機能異常症:母親に橋本病があると出産後母親の甲状腺機能が
                極端に変動

F. 甲状腺腫瘍(転移癌はまれ)
 (1). 良性腫瘍
   殆ど adenoma 、殆どホルモン産生をしないが、Plummmer 病は甲状腺ホルモ   ン産生 adenoma
 (2). 悪性腫瘍
  a. 分化癌
   イ. 乳頭腺癌:若年にも発症、予後比較的良好、リンパ管性転移、石灰化(砂粒
          球)
   ロ. 濾胞腺癌:血行性転移(骨・脳・肺)
   ハ. 髄様癌:カルシトニン産生C細胞癌(Sipple:褐色細胞腫と併発)
  b. 未分化癌:予後極めて不良、30才以後

※悪性腫瘍の診断
 (1). X 線軟線撮影
 (2). エコー:良性・悪性の鑑別に有力(腫瘍内エコーの不均一像)
 (3). シンチ:99m-Tc(テクネシウム)と 201-Tl(タリウム)を行う、良性では両
       者共 cold lesion で、悪性では概ね 99m-Tc は cold 、201-Tl は
       hot になる。
 (4). 組織免疫学的診断:リンパ球系の悪性腫瘍の鑑別
 (5). 細胞診断:針生検

G. 先天性・遺伝性疾患
 (1). TBG 欠損症
 (2). 甲状腺ホルモン不応症
 (3). 先天性甲状腺蛋白欠損症








ホルモンよりみた甲状腺疾患の鑑別

その1).

FT4 FT3 TSH TRAb TGAb
・ バセドウ病
・ T3-thyrotoxicicosis
・ 一過性甲状腺中毒症 ↑→
・ 正常者
・ 橋本病(大部分)
・ 原発性甲状腺機能低下症
(及び橋本病に一部)
(TGAb:抗サイログロブリン抗体) (TRAb:TSH-レセプター抗体)

その2). 抗サイログロブリン抗体 (TGAb) と抗マイクロゾーム(甲状腺ペルオキシダー
    ゼ)抗体 (TPOAb) について
陽性率 TGAb TPOAb
・ 正常者 20.2% (19/94) 8.5% (8/94)
・ バセドウ病 78.3% (18/23) 100.0% (23/23)
・ 橋本病 87.5% (21/24) 95.8% (23/24)

※コメント
 a. 健常人で TGAb 陽性の人は橋本病である可能性はあるがそれらの全てが TPOAb
   陽性ではない。
 b. TGAb は補体結合性がなく、従って細胞障害性はないと考えられるが TPOAb は
   補体結合性を有しており細胞障害性を持っているとされる。(TPOAb は自己免
   疫機構による原因のバセドウ病と橋本病を診断)
 c. TPOAb は自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病も橋本病も)で100% 近い陽性を
   示すが他の自己免疫性疾患、SLE や RA でも 30% 位陽性となる。
 d. バセドウ病を除く自己免疫性甲状腺疾患で TGAb 陽性なら橋本病と確診できる。








低 T3・低 T4 症候群(低 T3症候群・低 T4症候群)

(1). 低 T3・低 T4症候群を来す疾患・病態
 1. 低栄養状態:絶食・神経性食欲不振症
 2. 全身疾患:発熱・敗血症・糖尿病・肝硬変・腎不全・急性心筋梗塞・悪性腫瘍
        妊娠中毒症
 3. 外科手術・熱傷・外傷
 4. 新生児
 5. 薬物:デキサメサゾン・プロピルチオウラシル・プロプラノロール・イオボダー
      ド・アミオダロン

(2). 低 T3・低 T4症候群の鑑別

T4 T3 トリヨードサイロニン TSH
原発性甲状腺機能低下症 - - - -
subclinical
軽症
中等〜重症
中枢性甲状腺機能低下症 ↓→
低 T3症候群
低 T4症候群 ↑→↓








血中 TBG (thyroxin binding globulin) 濃度の変動を来す病態

増加       減少   
(1)先天性 遺伝性 TBG 増加症 遺伝性 TBG 欠損(減少)症
(2). 後天性
 1. ホルモン
 
エストロゲン
(経口避妊薬も)
高エストロゲン状態
(妊娠・新生児)
エストロゲン産生腫瘍
胞状奇胎
 
アンドロゲン
蛋白同化ステロイド
糖質ステロイドの大量投与
 2. 薬剤 ペルフェナジン・ヘロイン L-アスパラギナーゼ
 3. 疾患 急性間欠性ポルフィリア
伝染性肝炎
骨髄腫
膠原病
甲状腺機能低下症
TBG 産生肝癌
重症疾患・栄養失調
ネフローゼ症候群
蛋白喪失性腸炎
肝硬変
先端巨大症(活動期)
甲状腺機能亢進症
クッシング症候群








骨粗鬆症の治療

(1). エストロダーム(エストロゲン製剤)
 1). エストロゲン療法の禁忌
  a. 絶対禁忌
   イ. 乳癌(既往者も含む)、子宮内膜症患者
   ロ. 血栓症、塞栓症の既往歴
   ハ. 体内水分貯留・浮腫のある者(心不全・腎疾患・肝疾患)
   ニ. 肝機能障害
   ホ. ポルフィリン血症
  b. 比較的禁忌
   イ. 未摘出の子宮筋腫、子宮内膜症の既往歴
   ロ. 高血圧症
   ハ. インシュリンが必要な糖尿病患者
   ニ. 原因不明の子宮出血
   ホ. 子宮内膜癌の既往者

(2). Ca の補充(3Aカルシウム(保険外・2,000円/2ヶ月))
  現在成人日本人のカルシウム所要量は 600mg/日 である。特に閉経以後の女性で
  はより多くの Ca の摂取により骨量減少の抑制が期待される。

(3). 活性型ビタミンD(1α, 25 (OH) 2D) の適応
 ※活性型ビタミンD は腸管 Ca 吸収を促進し、生体の Ca バランスを正に保ち血清
  Ca・P 濃度を上昇させる。
  イ. 退行期骨粗鬆症
  ロ. グルココルチコイドによる二次性骨粗鬆症
  ハ. 胃切除の骨病変

(4). Bisphosphonate (BP)
 ※破骨細胞性骨吸収抑制薬
  イ. 骨 Paget病
  ロ. 悪性腫瘍による高 Ca血症

(5). ビタミンK (Vit.K)
 ※作用の詳細は今だ明確でないが、大腿骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折患者でビタミン
  K1 、ビタミンK2 は低下している。







原発性甲状腺機能低下症の診断基準
(内科 1995;75:1591:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
1. 主要臨床症状
  無気力、顔面および全身浮腫、寒がり、動作緩慢、嗄声、皮膚乾燥、毛髪粗造、
  便秘、食欲減退、嗜眠などがみられる。
2. 診察時所見
  1.の諸症状ことに指圧痕を残さない浮腫(*)と深部腱反射(アキレスが最適)
  の弛緩相の遅延が特徴的であり、この両所見、ことに後者によってかなり確診される。
3. 一般検査
  一般検査では、総コレステロール、CPK、LDH、GOTなどの上昇、ECGにおける
  低電位差、胸部X線上心陰影の拡大、貧血などがみられる。
4. 診断確定のための検査
  TSH濃度20μU/ml以上、T4濃度4.0μg/dl以下(またはfT4:0.6ng/dl以下)
  によって診断は確定する。ただし病型を確定するためには二次的検査が必要である。
5. 原発性以外の甲状腺機能低下状態
  1. 〜3.が認められながら 4.を満足しない場合は他の機能低下状態も考えねばならない。
  TSHが高くない場合:中枢性低下症
  T4(fT4)が正常以上:Refetoff症候群
(*):本邦では典型的な粘液水腫(non-pitting edema)を示すことは比較的少なく、
多くの場合貧血などのため指圧痕が残る。







下垂体前葉機能低下症(下垂体機能低下症と同義)診断の手引き(1990年)
(内科 1995;75:1585:6月増大号『内科疾患の診断基準、病型分類・重症度』)
(1)主症候(ホルモン欠乏症候)および検査所見(注1)
(A)性腺刺激ホルモン(ゴナドトロビン)(LH、FSH)欠乏症
1. 症候
    無月経、性欲低下、陰毛・腋毛の脱落、性器萎縮、乳房萎縮、
    二次性徴の欠如(小児では男15歳以上、女13歳以上の場合)など。
2. 検査所見(年齢・性別により差がある)
   1) 血中ゴナドトロビンが高値でない。
   2) ゴナドトロピン分泌刺激試験(LHRH、Clomiphene、エストロジェン
     負荷など)で低ないし無反応(ただし、視床下部性のときは、LHRH
     (初回投与または脈波的連続)投与で正常反応を示すことがある)。
   3) 性ステロイドホルモン(エストラジオール、プロジェステロン、
     テストステロンなど)低値。
   4) ゴナドトロピン負荷で性ホルモン分泌反応がある。
(B)副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)欠乏症
   1. 症候
      全身倦怠感、食欲不振、意識消失(低血糖や低Na血症による)、低血圧など
   2. 検査所見
      1) 血中ACTH低値
      2) ACTH分泌刺激試験(metyrapone、インスリンなど負荷)で低ないし無反応(注2)
      3) 副腎皮質ホルモン(尿中17-OHCS、血中コルチゾルなど)低値
      4) 迅速ACTH負荷試験で副腎皮質ホルモンの分泌は低反応。ただしACTH
        連続負荷で反応がある。
(C)甲状腺刺激ホルモン(TSH)欠乏症
   1. 症候
      耐寒性低下、不活発、皮膚乾燥、脱毛など
   2. 検査所見
      1) 血中TSH低値(ただし、視床下部性ではイムノアッセイで正常ないし
        やや高値のことがある)。
      2) TSH分泌刺激試験(TRH負荷)で低ないし無反応(ただし、視床下部
        性では遅延反応などがある)。
      3) 甲状腺ホルモン検査(freeT4,freeT3 またはT4,T3,T3-Uなど)低値。
(D)成長ホルモン(GH)欠乏症(注3)
   1. 症候
      とくに小児で低血糖、低身長など
   2. 検査所見(注4)
      1) 血中GH低値。
      2) GH分泌刺激試験(インスリン、アルギニンなど負荷)で低ないし無反応。
      3) ソマトメジンC(IGF-I)低値。
(E)プロラクチン(PRL)欠乏症
   1. 症候
      乳汁分泌低下(産褥婦人)
   2. 検査所見
      1) 血中PRL低値(注5)。
      2) PRL分泌刺激試験(TRH負荷)で低ないし無反応。
      (注1)発病初期例や非定型例では症候が顕著でない場合があるので注意を要する。
      (注2)最近、医薬品として許可されたCRHがもっとも直接的なACTH分泌刺激薬で
          ある。視床下部性では正常ないし過剰反応を示すことがある。
          リジン-バソプレシンも用いうる。
      (注3)小児では下垂体性小人症診断の手引き(厚生省特定疾患下垂体機能障害
          調査研究班平成5年度総合事業報告書.1994)参照。
      (注4)甲状腺機能低下状態では、下垂体前葉ホルモン(とくにGH)分泌機能が
          低下することがある。
          GRH負荷によるGH分泌刺激試験で低反応となることも参考となるが、健常
          人でも低反応を示したり、視床下部性で正常反応を示すことがある。なお、
          尿中GHも参考となる。
      (注5)視床下部性下垂体機能低下症ではPRLが高値となることがある。
(2)除外規定
   下垂体前葉ホルモン分泌を低下させる薬剤の投与中は除く。
   ■[診断の基準]
     確実例(1)の(A)〜(E)のいずれかおよび(2)を満たすもの。
     なお、病型分類をすることが望ましい(注6)。
     (注6)病型分類
        a)原因による分類
          腫瘍、分娩時大出血(Sheehan症候群)、炎症、外傷、先天性、医原性、特発性など
        b)障害部位による分類
           1) 下垂体
           2) 視床下部(ただし1),2)両部位のこともある)
           3) その他
         c)ホルモン欠乏による分類
           1) 汎下垂体前葉機能低下症(全ホルモン欠乏)
           2) 部分的下垂体前葉機能低下症(2種類以上のホルモン欠乏)
           3) 下垂体前葉ホルモン単独欠損症(1種類のみのホルモン欠乏)







甲状腺クリーゼの診断基準(日内雑誌、88巻、12号、1999年、P2389)
  1.体温調節異常
     体温:37.2〜37.7                       5点
        37.8〜38.2                        10
        38.3〜38.8                        15
        38.9〜39.3                        20
        39.4〜39.9                        25
        40度以上                        30
  2.中枢神経症状
     なし                               0
     軽度(興奮)                          10
     中等度(譫妄、無症候性精神病、高度の嗜眠)     20
     高度(痙攣、昏睡)                      30
  3.胃腸・肝機能異常
     なし                                0
     中等度(下痢、嘔気/嘔吐、腹痛)             10
     高度(原因不明の黄疸)                   20
  4.心・血管異常
     a.頻脈:90〜109                        5
        100〜119                        10
        120〜129                        15
        130〜139                        20
        140以上                         25
     b.鬱血性心不全
        なし                            0
        軽度(下腿浮腫)                    5
        中等度(両肺下野でのラ音)             10
        高度(肺浮腫)                      15
     c.心房細動
        なし                            0
        あり                           10
  5.誘因の存在
     なし                               0
     あり                              10
 -------------------------------------------------------------------------
                                 合計:  点
  ※評価:
    ●45点以上は甲状腺クリーゼを強く疑う
    ●25-44点は切迫状態を疑う
    ●25点以下では可能性が低い







橋本病の新しい臨床診断基準(案)(NIS、No.3926(H11/7/24)、P42)
a)臨床所見
  1.びまん性甲状腺腫
  2.原発性甲状腺機能低下症
  ともに他にその原因が認められないもの
b)検査所見
  1.TgAb>=0.3U/mlおよび、またはTGHA>=100
  2.TPOAb>=3.0U/mlおよび、またはMCHA>=100
  3.細胞診でリンパ球浸潤および、または上皮細胞の好酸性変性を認める

1)橋本病
   a)の1つ以上に加えてb)の1つ以上を有するもの
    そのうちTgAb>=80U/mlのものは、狭義の橋本病の可能性は高い。
2)橋本病の疑い
   a)の1つ以上を有するもの、ただし甲状腺腫のみの場合は弾性硬ないし硬いもの
    そのうち甲状腺超音波で内部エコーの低下や不均一を認めるものは疑いが強い。







クッシング病診断の手引き(1990年)
  I.症候(注1、2)
   次の症候のいくつかがみられる
    1)満月様顔貌
    2)中心性肥満・buffalo hump
    3)高血圧
    4)月経異常
    5)赤紫色の皮膚伸展線条(幅5mm以上が多い)
    6)皮下溢血
    7)症瘡(にきび)
    8)多毛
    9)筋力低下
   10)浮腫
   11)糖尿
   12)骨粗鬆症(若・中年)
   13)色素沈着
   14)精神異常
   15)発育遅延(小児の場合)
   16)皮膚萎縮
 II.検査所見
    1)cortisolおよびACTH過剰分泌の証明
  @  a. 血中cortisolおよびACTHの増加および、または日内変動消失
  A  b. 尿中17-OHCSまたは遊離cortisolの増加
    2)cortisolおよびACTH過剰分泌に対する抑制試験の異常(注3)
    3)(参考)metyrapone投与により尿中17-OHCSまたはACTHおよび
         11-deoxycortisolは正常ないし過大反応を示す
    4)(参考)下垂体腫瘍の診断には画像診断(CTスキャン、MRI、レ線撮影など)
         が有用
III.除外規定
    1)異所性ACTH産生腫瘍によるクッシング症候群は除く
    2)CRH産生腫瘍によるものは除く
    3)原発性副腎疾患(過形成、腫瘍)によるクッシング症候群は除く
    4)ACTHまたは糖質コルナコイド投与によるものは除く
   ------------------------------------------------------------------
 注1)発病初期や非定型例では症候が顕著でない場合があるので注意を要する
 注2)症候はおおよそ頻度の高い順に並べているので、頻度の高い症候が多い程確実
    例と考えられる
 注3)方法としてNugent法(dexamethasone lmg 午後11時経口投与、翌朝8~9時の
    血中cortisol測定)およびLiddle法(dexamethasonel回 0.5mg、6時間ごとに
    8回経口投与。投与前より投与終了翌日まで尿中17-OHCSを測定)がある。
     判定には、短時間内、日内、日差変動を考慮するが、正常では、Nugent法で
   は血中cortisolが5μg/ml以下に、Liddle法では尿中17-OHCSが3mg/日(2mg/g
   クレアチニン)以下になる。標準用量で正常に抑制されても臨床的になおクッ
   シング病が疑わしい時は、さらに少量のdexamethasone(Nugent法では0.5mg、
   Liddle法では1.5mg/日・3分割3日間、0.5mg/日・4分割4日間)投与を行い、抑
   制された時には本症が否定的となる。
[診断の基準]
  確実例 I. II.及びIII.を満たすもの







先端巨大症および下垂体性巨人症診断の手引き(1990年)
  I.主症候(注1)
    先端部肥大として次のいずれかの症候がある
   1)手足の容積の増大
   2)先端巨大症様頗貌(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出)
   3)巨大舌
 II.検査所見
   1. 成長ホルモン値
    1)空腹時およびブドウ糖負荷後の血中成長ホルモン億がともに10ng/ml以上
    2)血中成長ホルモン値10ng/ml以下の場合には次の各項のうち2つ以上を満
      たす。
 @   a. ブドウ糖75g(50~100g)経口負荷で抑制されない
 A   b. 夜間睡眠中の分泌増加が欠如している
    Bc. TRHまたはLH-RHに反応して増加する
    Cd. L-dopaまたはbromocriptineに対する増加反応がみられない
    3)(参考)尿中成長ホルモン高値(ただし腎障害のない場合)
   2. 血中ソマトメジンC(IGF-I)高値
III.副症候および参考所見
   1)頭痛
   2)視野障害
   3)発汗
   4)トルコ鞍の拡大および破壊
   5)CTスキャンまたはMRIで下垂体腺腫を認める
   6)heel padの肥厚(注2)
   7)手指末節骨X線像における花キャベツ様肥大
   8)糖尿
   9)高血圧
 注1)発病初期例や非定型例では症候が顕著でない場合があるので注意を要する。
 注2)heel padは22mm以上(Koh KB. et al:Br J Radiol 43:119.1970)。
[診断の基準]
  確実例 TIおよびIIを満たすもの
  疑い例 TIを満たし、かつIIIのうち2項目以上を満たすもの







SIADHの診断法(日内雑誌 2002;91:89)
T A. 主症候
    1. 倦怠感、食欲低下がある。
    2. 脱水の所見を認めない。
 UB. 検査所見
    1. 低ナトリウム血痕:血清ナトリウム濃度は135mg/lを下回る。
    2. 血漿バゾプレシン:血清ナトリウムが135mEq/l未満で、血紫バゾプレシン
     値が測定感度以上である。
    3. 低浸透圧血症:血漿浸透圧は270mOsm/kgを下回る。
    4. 高張尿:尿浸透圧は300mOsm/kgを上回る。
    5. ナトリウム利尿の持続:尿中ナトリウム濃度は20mEq/l以上である。
    6. 腎機能正常:血清クレアチニンは1.2mg/dl以下である。
    7. 副腎皮質機能正常:血清コルチゾールは6μg/dl以上である。
 UC. 参考所見
    1. 原疾患(表2)の診断が確定していることが診断上の参考となる。
    2. 血漿レニン活性は5ng/ml/h以下であることが多い。
    3. 血清尿酸値は5mg/dl以下であることが多い。
    4. 水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善す
     る。
    5. 尿中アクアポリン-2排泄は300fmol/mgクレアチニン以上であることが多い
      (基準値100〜200fmol/mgクレアチニン)。
 [診断基準]
   1)確実例:Bで1.〜7.の所見があり、かつ脱水の所見を認めないもの。
   2)疑い例:Bで1.〜7.の所見があるが、軽度の脱水の所見を認める。
     (平成13年度厚生労働省間脳下垂体機能障害調査研究斑報告書)







SIADHの治療指針(日内雑誌 2002;91:90)
  次のいずれか(組み合わせも含む)の治療法を選択する。
    1. 原疾患の治療を行う。
    2. 食塩を経口的または非経口的に1日200mEq以上投与する。
    3. 1日の給水分摂取量を体重1Kg当り15〜20mlに制限する。
    4. デメクロサイクリンを1日600〜1200mgを経口投与する。
    5. フロセミドを随時10〜20mgを静脈内に投与し、尿中ナいJウム排泄量に相
     当する2.5%食塩水を投与する。その際、橋中心髄鞘溶解を防止するため
     1日の血清ナトリウム濃度上昇は10mEq/l以下とする。
    5. 特に高齢者で血清ナトリウム濃度が上昇しがたい症例ではフロリネフを
     1日0.1mg投与する。
     (平成13年度厚生労働省間脳下垂体機能障害調査研究斑報告書)







副甲状腺機能亢進症の分類(日内雑誌 2002;91:1188)
  1. 原発性
    1)散発型
      ・腺腫(88%)
      ・過形成(7.4%)
      ・癌(4.3%):欧米と比べて高い
    2)遺伝型
      ・多発性内分泌腺腫症(MEN-I型では90%に副甲状腺機能亢進を生ず)
      ・家族性副甲状腺機能亢進症
       ・下顎腫瘍合併家族性副甲状腺機能亢進症
  2. 家族性低Ca尿性高Ca血症
  3. 異所性PTH産生腫瘍
  4. 続発性
    1)慢性腎不全
    2)ビタミンD作用の低下
    3)腎からのCa喪失







副甲状腺機能低下症の分類(日内雑誌 2002;91:1191)
  1. PTH分泌不全
    1)副甲状腺の臓器発生の異常
      ・DiGeorge症候群
      ・感音性難聴・腎異形成を伴う家族性副甲状腺機能低下症
      ・Kenny-Caffey症候群
      ・X染色体劣性
    2)副甲状腺組織の2次的破壊
      ・特発性副甲状腺機能低下症(自己免疫性副甲状腺炎)
         欧米においては成人発症の約20%にHAM症候群を合併
      ・自己免疫性多内分泌不全症I型
         (HAM(hypoparathyroid-Addison-Monilialis)症候群)
      ・術後性、放射線、浸潤性疾患など
    3)Ca感受性の異常
      ・Ca感知受容体遺伝子異常
      ・低Mg血症
    4)PTH遺伝子の異常
  2. PTH作用不全
    ・偽性副甲状腺機能低下症







主な原発性副腎不全疾患とその病因(日内雑誌 2002;91:1174)
  1. 先天性
     1) 先天性副腎過形成症:
         P450c21(21-水酸化酵素)欠損症
         P450cll(11β一水酸化酵素)欠損症
         3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素欠損症
         P450c17(17α−水酸化酵素)欠損症
         リポイド過形成症
           ・StAR異常症
           ・P450scc(デスモラーゼ)欠損症
     2) 先天性副腎低形成症
       ・Cytomegalic type:X-連鎖性(DAX-1)
       ・Miniature type :常染色体劣性
                 SF-1
     3) 先天性低アルドステロン症: P450ald(CMO I & II)欠損症
     4) ペリオキシゾーム病
       ・Zellweger症候群:70−kDペリオキシゾーム膜タンパク異常
       ・副腎白質ジストロフィー(X-連鎖):ALD膜移送タンパク異常
     5) 家族性ACTH不応症:ACTH受容体変異(幾つかの症例)
     6) Triple-A(Allgrove's)症候群:ALADIN

  2. 後天性
     1) アジソン病
       自己免疫性疾患(孤発例、多腺性内分泌疾患 I & II)、AIRE-1
               CTLA-4遺伝子
     2) 副腎破壊
       出血、嚢胞、血栓、外傷、感染、Waterhouse-Friedrichsen症候群
      腫瘍、転移
     3) 医原性
       抗生物質・抗真菌剤による副作用、ステロイド抑制剤、クルココル
      チコイド治療、両側副腎摘除







Preclinicalクッシング症候群(日内雑誌 2002;91:1275)
[疾患概念]
   副腎腫瘍からのコルチゾールの自律的分泌がCushing症候群に特徴的な症候を示す
  までには至らない状態をPreclinical Cushing症候群という。(グルココルチコイド
  抵抗症を除く)
[診断基準]
  1. 副腎腫瘍の存在(副腎偶発腫)
  2. 臨床症状:Cushing症候群の特徴的な身体徴候の欠和(注1)
  3. 検査所見
     1)血中コルチゾールの基礎値(早朝時)が正常範囲内(注2)
     2)コルチゾール分泌の自律性(注3)
     3)ACTH分泌の抑制(注4)
     4)副腎シンチグラフイーでの患側の取り込みと健側の抑制
     5)日内リズムの消失
     6)血中DHEA-S値の低値(注5)
     7)副腎腫瘍摘出後、一過性の副腎不全症状があった場合、あるいは付着皮質
      組織の萎縮を認めた場合

      ○検査所見の判定:1)2)は必須、さらに3)〜6)のうち1つ以上の所見、
       あるいは7)があるとき陽性と判定する。
   ● 1、2、および3の検査所見の陽性をもって本症と診断する。
  注1:高血圧、全身性肥満、耐糖能異常はCushing症候群に特徴的所見とは見なさな
    い。
  注2:2回以上の測定が望ましく、常に高値の例は本症と見なさない。
  注3:overnightデキサメサソン抑制試験の場合:スクリーニンクに1mgの抑制試験を
    行い、血中コルチゾール値3μg/dl以上の場合本疾患の可能性が考えられる。
    ついで、8mgの抑制試験を行い、その時の血中コルチゾール値が1μg/dl以上の
    場合本疾患を考える。
  注4:ACTH基礎値が正常以下(<10pg/ml)あるいはACTH分泌刺激試験の低反応
  注5:年齢および性別を考慮した基準値以下の場合、低値と判断する。
[副腎性Preclinical Cushing症候群の取扱いのめやす]
  本症と診断され、検査所見の1)2)(デキサメサゾン抑制試験)に加えて3)〜6)
 の2項目以上を満たし、高血圧、全身性肥満、耐糖能異常のいずれかを有する例は副腎
 腫瘍の摘出を考慮する。その他の場合も慎重なる経過観察を行う。

付帯事項:1)腫瘍経が5cm以上の場合、5cm未満でも増大傾向のあるものは摘出術を行う。
     2)稀ではあるが、Preclinical Cushing症候群の副腎腫瘍摘出術後、糖質コ
       ルチコイド補償療法を必要とする例があるので注意を要する。







Cushing病(下垂体からACTHが過剰に分泌される)診断の手引き(日内雑誌 2002;91:1272)
 1. 主徴候(次の症候のいくつかがみられる)
   1)中心性肥満および満月様顔貌
   2)高血圧
   3)紫染色の皮膚伸展線条(幅5mm以上が多い)
   4)皮下溢血
   5)座瘡
   6)多毛
   7)浮腫
   8)月経異常
   9)筋力低下
  10)精神異常
  11)色素沈着
  12)糖尿
  13)発育遅延(小児の場合)
 2.検査所見
   1)コルチゾルおよびACTHの過剰分泌の証明
     a.血中コルチゾルおよびACTHの増加および、または日内変動消失
     b.尿中17-OHCSまたは遊離コルチゾルの増加
   2)コルチゾルおよびACTH過剰分泌に対する抑制試験の異常

 (注)迅速法としてNugent法(dexamethasonelmg午後11時1回経口投与、翌朝8〜9時
    の血中コルチゾル測定)および標準法としてLiddle法(dexamethsonel回
    0.5mg、6時間ごとに8回経口投与。尿中17-OHCSを投与前より投与終了翌日まで
    測定)がある。
     判定には短時間内、日内、日差変動を考慮するが、正常ではNugent法では、
    血中コルチゾルが5μg/dl以下に、Liddle法では尿中17-OHCSが3mg/日(2mg/g/
    クレアチニン)以下になる。標準用量で正常に抑制されても臨床的になお
    Cushing病が凝わしいときは、より少量のdexamethasone(Nugent法では0.5mg、
    Liddle法では1.5mg/日・3分割3日間、0.5mg/日・4分割4日間)投与により抑制
    が十分でなく正常と鑑別しうることがある。
   3)<参考>metylapone投与により尿中17-OHCSまたは血中ACTHおよび11-deoxyco-
    ltisolは正常ないし過大反応を示す。
 3.除外規定
   1)下垂体以外のACTH産生腫瘍によるものは除く
   2)CRF産生腫瘍によるものは除く
   3)原発性副腎疾患(過形成、腫瘍)によるものは除く
   4)ACTHまたは糖質コルチコイド投与によるものは除く

【診断基準】
 確実例:1.2の各項を満たすもの。
 疑い例:1の各項のうちいくつかと3の各項を満たす






クッシング症候群(副腎性) (日内雑誌 2002;91:1273)
  ※クッシング症候群は異所性ACTH産生腫瘍、異所性CRH産生腫瘍などのACTH依存性
   のクッシング症候群と、副腎腺腫・副腎癌・副腎結節性過形成、ACTH非依存性大
   結節性過形成、原発性副腎皮質小結節性過形成などのACTH非依存性クッシング症
   候群がある。
【診断基準】
 1.症候(注1、2)
  次の症候のいくつかがみられる
  ・満月様顔貌
  ・高血圧
  ・中心性肥満・buffalo hump
  ・月経異常
  ・伸展性皮膚線条(赤紫色)
  ・皮下溢血
  ・筋力低下
  ・ざ瘡(にきび)
  ・多毛
  ・浮腫
  ・糖尿
  ・骨粗髭症(若・中年)
  ・精神障害
  ・色素沈着
  ・成長遅延(小児)
 2.検査所見
  (1)コルチゾール過剰分泌の証明
     1)血中コルチゾール濃度の増加および、または日内変動消失
     2)尿中17-OHCSまたは遊離コルチゾール排泄の増加
  (2)ACTH分泌抑制の証明
     1)血中ACTHの基礎値が低値(通常は測定感度以下)
     2)CRH試験などのACTH分泌刺激試験に対し、血中ACTH濃度は増加反応を示
      さず低値のままである。
  (3)デキサメサゾン抑制試験でコルチゾール分泌が抑制されない(注4)
  (4)メチラボン試験で尿中17-OHCSまたは血中11-デオキシコルチゾールの
      増加反応がみられない。
  (5)画像診断による副腎病変の証明
    1)副腎の超音波検査、CT、MRI、で副腎の腫癌や腫大を認める。
    2)副腎部に131I-アドステロールの集積増加を認める。
 3.除外規定(鑑別診断)
  (1)クッシンク病によるものは除く
  (2)異所性ACTH産生腫瘍または異所性CRH産生腫瘍によるものは除く
  (3)ACTHまたは糖質コルチコイドの投与によるもは除く

(注1)発病初期例や非定型例では症候が著明ではない場合があるので注意を要する。
(注2)症候はおよそ頻度の高い順に並べてあるので、頻度の高い症候が多いほど診断
    は確実と考えられる。
(注3)デキサメサゾン(Dex)抑制試験の方法:Nugent法(迅速法)ではDex lmgを
    午後11時に1国投与し、翌朝8〜9時の血中コルチゾールを測定する。Liddle法
    (標準法)では、Dex l回0.5mgを6時間ごとに8回経口投与(2mg法)、あるいは
    1回2mgを6時間ごとに8回経口投与し(8mg法)、投与前より投与終了翌日まで
    尿中17-OHCSを測定する。本症候群ではNugent法で血中コルチゾールが5μg/dl
    以下に抑制されない。Liddle法では2mg法、8mg法のいずれでも尿中17-OHCSが
    3mg/日以下にならない。

※診断基準(間脳下垂体機能障害調査研究班1990年度Cushing病診断の手引きを基に作成)
 確実例:1、2および3を満たすもの







バゾプレシン分泌低下症(尿崩症)の原疾患 (日内雑誌 2002;91:1289)
  1. 特発性
  2. 家族性
  3. 続発性:視床下部一下垂体系の器質的障害
       リンパ球性漏斗下垂体後葉炎
       胚芽腫
       頭蓋咽頭腫
       奇形腫
       下垂体腺腫
       転移性腫瘍
       白血病
       リンパ腫
       その他の腫瘍
       サルコイドーシス
       ランゲル八ンス細胞組織球症
       結核
       脳炎
       脳出血
       外傷・手術







高プロラクチン(PRL)血症をきたす病態 (日内雑誌 2002;91:1296)
  1.薬物服用(代表的な薬剤を挙げる)
   1)抗潰瘍剤・制吐剤(metoclopramjde、domperidone、sulpiride等)
   2)降圧剤(reserpine、α-methyldopa等)
   3)向精神薬(phenothiazine、haloperidol、imipramine等)
   4)エストロゲン製剤(経口避妊薬等)
  2.原発性甲状腺機能低下症
  3.視床下部・下垂体茎病変
   1)機能性
   2)器質性
    (1)腫瘍(頭蓋咽頭腫・胚細胞腫・非機能性腫瘍など)
    (2)炎症肉芽(下垂体炎・サルコイドーシス・ランゲルハンス細胞組織球症
       など)
    (3)血管障害(出血・梗塞)
    (4)外傷
  4.下垂体病変
   1)PRL産生腺腫
   2)その他のホルモン産生腺腫
  5.稀な病変
   1)異所性PRL産生腫瘍
   2)慢性腎不全
   3)胸壁疾恵(外傷、火傷、湿疹など)







原発性アルドステロン症の診断基準(日内雑誌 2002;91:1283)
 A. 原発性アルドステロン症の各種病型に共通して認められる所見
   1.高血圧
   2.−般臨床検査:尿中K排泄亢進、低K血症、高Na血症、代謝性アルカローシス
   3.内分泌検査:低レニン血症、高アルドステロン血症(PACが14.0ng/dl以上かつ
          PRAが1.0ng/ml/時未満)、血漿コルチゾールが正常または尿中
          17-OHCS排泄量が正常
   (2は必ずしも満たす必要はない)
 B.病型に特徴的な所見
   1.アルドステロン産生腺腫(APA)
    1)血漿アルドステロンが日内変動を示す
    2)腹部CT、MRI、副腎造影などでの腺腫の証明
      (微小腺腫の場合には必ずしも必要ない)
    3)副腎静脈採血で患側のアルドステロン/コルチゾール比の高値
   2.副腎癌(adrenalcarcinoma)
    1)腹部CT、MRlで大きな腫瘍のことが多く、副腎造影で辺緑不整で、血管に
      富む腫瘍であることが多い
    2)確定診断は病理所見による
   3.副腎球状層過形成による特発性アルドステロン症(IHA)
    1)血漿アルドステロンが日内変動がみられないことが多い
    2)腹部CT MRl、副腎造影などでの過形成が認められ、通常両側の副腎静脈
      採血で両側のアルドステロン/コルチゾール比の高値
    3)副腎アドステロールシンチグラムで通常両側への取り込みあり
    4)dexamethasonel.5mg/日、2週間投与により血奨アルドステロンが3.7ng/dl
      以上に抑制されない
    5)副腎生検
   4.グルココルチコイド奏効性アルドステロン症(GRA)
    1)腹部CT、MRl、副腎造影などでの過形成が認められ、通常両側の副腎静脈
      採血で両側のアルドステロン/コルチゾール比の高値
    2)副腎アドステロールシンチグラムで通常両側への取り込みあり
    3)dexamethasone2mg/日、2週間投与により血漿アルドステロンが3.7ng/dl
      以下に抑制される







くる病/骨軟化症の原因疾患(NIS 2005;4259:92)
 1. ビタミンD作用障害
   ・ビタミンD欠乏
   ・未熟児、低栄養
   ・慢性腎不全
   ・ビタミンD依存症I型
     (25-水酸化ビタミンD-1α-水酸化酵素遺伝子異常)
   ・ビタミンD依存症II型
     (ビタミンD受容体遺伝子異常)
 2.低リン血症
   ・染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症(PHEX* 遺伝子異常)
     (X-linked hypophosphatemic rickets/osteomalacia ; XLH)
      (*) phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases
        on the X-Chromosome
   ・常染色体優性低リン血症性くる病/骨軟化症(FGF23遺伝子異常)
     (autosomal dominant hypophosphatemic rickets/osteomalacia ; ADHR)
   ・腫瘍性くる病/骨軟化症
     (tumor-induced rickets/osteomalacia ; TIO)
   ・Fanconi症候群など
 3.その他
   ・低フォスファターゼ症
     (アルカリフォスファターゼ遺伝子異常)
   ・薬剤性など







鉱質コルチコイド過剰症(日内雑誌 2006;95:902)
  1. 原発性鉱質コルチコイド過剰
   1) 原発性アルドステロン症(Primary aldosteronism)
     アルドステロン産生腺腫(Aldosterone-producing adenoma, APA)
     特発性アルドステロン症(Idiopathic hyperadosteronism, IHA)
     副腎皮質癌
     糖質コルチコイド奏効性アルドステロン症
        (Glucocorticoid-remediable aldosteronism, GRA)
   2) DOC産生腫瘍
   3) 先天性副腎皮質過形成
      11β水酸化酵素欠損症
     17α水酸化酵素欠損症
  2. 鉱質コルチコイド作用冗進
   1) Apparent mineralocorticoid excess(AME)
   2) Liddle症候群
      上皮型Naチヤネル(ENaC)β subunit. γsubunit変異
   3) 偽性アルドステロン症(Pseudoaldosteronism)
     甘草の摂取、グリチルリチン製剤の使用
  3. 続発性アルドステロン症(Secondary hyperaldosteronism)
   1) 腎血管性高血圧症
      粥状動脈硬化、線維筋性異形成、血栓、先天性
   2) 悪性高血圧症
   3) レニン産生腫瘍
   4) 妊娠またはエストロゲン治療
   5) Bartter症候群(type I〜IV)、 Gitelman症候群
   6) 有効循環皿渠量減少に対する代償機序
      食塩制限
      脱水または利尿薬投与
      低蛋白血症(ネフローゼ症候群、肝硬変)
      心不全







低アルドステロン症の分類(日内雑誌 2006;95:903)
  1. 高レニン性(原発性)選択的低アルドステロン症
   1) 先天性:副腎皮質酵素欠損
     Aldosterone synthase(CMO type I, type II)欠損症
   2) 後天性:副腎皮質疾患
     自己免疫(Addison病など)、副腎結核、悪性腫瘍の転移
   3) 薬剤性:
     o,p-DDD(ミトタン)、ヘパリン、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体
      括抗薬、アルドステロン括抗薬、トリメトプリム、リチウム、シクロ
      スポリン
   4) 偽性低アルドステロン症I型
     常染色体性優性:鉱質コルチコイド受容体変異
     常染色体性劣性:上皮型Naチヤネル(ENaC)
     変異
  2. 低レニン性(続発性)選択的低アルドステロン症
   1) 代謝性疾患:
     糖尿病、痛風
   2) 一次性・二次性腎疾患:
     慢性間質性腎炎、慢性糸球体腎炎、腎硬化症、Sjogren症候群、
      SLE、AIDS、多発性骨髄腫、腎アミロイドーシス
   3) 薬剤性:
     NSAIDs、β遮断薬
   4) 偽性低アルドステロン症II型
     WNKl、WNK4変異




◎成長ホルモン(GH)の異常を来す疾患・病態(H18.10、日本医師会雑誌別冊『最新臨床検査のABC』S224より)
 1. 高値を示す病態
  1) 先端巨大症、下垂体性巨人症
  2) GH-RH産生腫瘍、異所性GH産生腫瘍(稀)
  3) 慢性腎不全
  4) 肝疾患の−部
  5) 神経性食思不振などの低栄養患者
  6) GH投与時
  7) GH不応性症候群(Laron型低身長症)
 2. 低値または分泌刺激試験で低反応を示す病態
  1) 下垂体前葉機能低下症
  2) GH単独欠摸症
  3) GH分泌不全性低身長症(分泌刺激試験をして診断する)
  4) 肥満、甲状腺機能低下症、糖質コルチコイドの過剰、向中枢神経薬の服用
   など







◎原発無月経の分類(内科2007増大号、Vol.99、No.6、p.1326)
 1. 正常ゴナドトロビン性(ゴナドトロビン値正常のもの)
  子宮性無月経
   1) Rokitanski症候群(子宮・膣欠損)
   2)その他の子宮・膣欠損症
 2. 高ゴナドトロピン性(ゴナドトロビン値高値のもの)
  a. 卵巣形成障害
   1) pure gonadal dysgenesis(46XXまたは46XYのもの)
   2) mixed gonadal dysgenesis(46XX/46XY)
   3) Turner症候群(45XOおよびモザイク)
  b. 精巣女性化症候群(46XY)
  c. 卵巣のゴナドトロビン感受性障害(ゴナドトロビン抵抗性卵巣)(46XX)
  d. 二次性卵巣機能欠落(46XX)
 3. 低ゴナドトロビン性(ゴナドトロビン値低値のもの)
  a. 性成熟の遅延
    遅発思春期
  b. 下垂体機能障害
   1) 先天性ゴナドトロビン欠損症(Kallmann症候群)
   2) 二次性下垂体機能障害
  c. 視床下部機能障害
   1) 視床下部性原発性無月経
   2) Marfan症候群
   3) Frohlich症候群
   4) Laurence-Moon-Biedle症候群
  d. 内分泌系の異常に伴うもの
   1) 先天性副腎過形成(副腎性器症候群)
   2) 甲状腺機能低下症
  e. 全身的・精神的原因によるもの
 4. みせかけの無月経(潜伏月経)
   1) 処女膜閉鎖症
   2) 膣閉鎖・膣欠損
   3) 膣中隔
   4) 頸管閉鎖症







◎続発無月経の分類(内科2007増大号、Vol.99、No.6、p.1327)
 1. 生理的無月経
  a. 妊娠
  b. 産褥、 授乳
  c. 閉経
 2. 病的無月経
  a. 子宮性無月経
   1) 炎症性子宮性無月経
   2) 外傷性子宮性無月経
  b. 卵巣性無月経
   1) 早発閉経
   2) ゴナドトロピン抵抗性卵巣
   3) 多嚢胞性卵巣症候群
  c. 下垂体性無月経
   1) Sheehan症候群
   2) 下垂体腫瘍、 supracellar tumor
   3) empty sella syndrome
   4) 二次的下垂体機能低下
  d. 視床下部性無月経
   1) 視床下部機能障害
   2) 神経性食欲不振症
   3) 医原性(薬物性)無月経
   4) 心因性無月経
   5) 乳汁漏出無月経症候群の一部
   6) 全身疾患、 内分泌疾患に伴うもの
  e. プロラクチン関連疾患







◎性腺機能異常のまとめ(内科2007増大号、Vol.99、No.6、p.1341)
 性腺疾患は,思春期早発症と思春期遅発症とに分類される.思春期早発症は,
 とくに小児期に重要であり,思春期遅発症は,小児期から成人にいたるまでの
 患者において遭遇する疾患である.性腺疾患の多くはあまり生命にかかわる疾
 病ではないことや,患者自身あるいは親が異常であると気づかないことから,
 診断されないまま放置されている症例が少なからずみられる.したがって,他
 の理由で受診した際に,常にその存在を疑い除外する姿勢が重要となる.二次
 性徴が年齢不相応に早期に出現していたり,あるいは思春期年齢にいたって
 二次性徴がみられないことが性腺疾患の存在を疑うきっかけとなる.
 男児において,(1) 9歳未満で精巣,陰茎,陰嚢などの明らかな発育が起こ
 っていたり,(2) 10歳未満で陰毛の発生,(3) 11歳未満で腋毛,ひげの発生や
 声変わりがみられたりする場合,女児で,(1) 7歳6か月未満で乳房発育が起こ
 っていたり,(2) 8歳未満で陰毛発生,または小陰唇色素沈着などの外陰部早
 熟,あるいは腋毛発生,(3) 10歳6か月未満で初経がみられた場合には思春期
 早発症が疑える.その他,成長の加速(年間成長率の増加),骨成熟の進展が
 みられたりする.
 思春期早発症は性ホルモンの過剰による二次性徴の早期出現であるが,その
 成因にはゴナドトロピン依存性(中枢性)のものとそうでないもの(仮性)が
 ある.中枢性では二次性徴は,男児では精巣,陰茎の発育→陰毛→ひげ,声変
 わり,女児では乳房肥大→陰毛→初経といった順序で現れる.仮性性早熟症で
 はこの順序で現れないことがある.とくにMcCune-Albright症候群では,カフェ
 オレ斑,線維性骨異形成がみられる.
 一方,(1) 男児において14歳までにTanner Stage B2(睾丸容積4mlあるいは長
 径が25mm)に達していない場合,女児では13.5歳までにTanner Stage G2(乳
 房のbudding)に達していない場合,(2) いったん二次性徴が出現しても5年以
 内に完了しない場合には,思春期遅発症が疑われる.その他,低ゴナドトロピ
 ン性性腺機能低下症は,新生児期では停留精巣,小陰茎が発見の契機となる.
 停留精巣は50%程度の患者で,また小陰茎も約30%の患者でみられる.小児期〜
 成人では,思春期発来の欠如,二次性徴の発達不全で診断されることが多い.
 性腺機能低下症の大部分は体質性思春期遅発症によるが,男児に多くみられ両
 親のどちらかが遅発症の既往を有する.遅発症の診断では,永続性性腺機能低
 下症といわゆる体質性遅発症(これは除外診断によってなされる)を鑑別する
 ことが重要である。