第29話:【原発レベル7大事故の恐怖】
【原発レベル7大事故の恐怖】

読者の皆様、ご機嫌いかがですか。今回はレベル7の最悪の大事故を起こした
福島第一原発をネタにして、筆者の想いを述べてみようと思います。まずは単
位と用語の説明からはじめます。

  (1)ベクレル(Bq):放射能の単位で「1秒間に1個の原子核が壊変している放
   射性物質」の量。通常は単位体積当たり(Bq/l)または単位重量当たり
   (Bq/kg)で表示して放射能の強さを表わす。
  (2)シーベルト(Sv):放射線が人体(生物)に及ぼす効果を表わす。平常時
   外部環境からヒトが1年間に浴びる放射線量は約1〜2mSv(ミリシーベルト
   である。継続した被曝を考えたとき100mSv以下では発癌リスクは確認さ
   れてない。疫学調査では100mSvを超えた時にがん死亡率が0.5%上がると
   いわれている。
  (3)放射性物質をホタルと考えると、ホタルの光りは放射線、そのホタルの
   集合を放射能と考えればいい。

1. 福島第一原発大事故とそれに関する『平成大本営(日本政府)』発表の大嘘
平成23年3月12日『平成大本営』発表。「日本の原発は3重4重5重に守られてい
ますので安全です。福島第一原発は地震と津波で電源を失いましたが制御棒が入
っており核分裂反応は完全に止まり大丈夫です。圧力容器は健全で放射線は漏れ
ていません」(嘘をつくな!! 2号機の圧力容器は底が壊れていたぞ)。
そしてその大丈夫なはずの原発に対してなぜか「圧力上昇を抑えるために放射
線を含んだガスを大気に放出しましたが問題ありません」という発表があり、そ
の舌の根も乾かぬうちに3月12日と14日にそれぞれ1号炉と3号炉の外枠の上半分
が水素爆発で吹き飛び(3号炉の黒煙は核爆発かも知れないと筆者は思ってい
るが)、大量の強烈な放射能が大気中に放出拡散した。
これに次ぐ平成大本営発表はさらに目茶苦茶。「風向計が壊れたので放射線の
拡散予想が出せません」・「原発を中心に20km以内は屋外退避、30km以内は屋内
退避」。「格納容器に傷がついたかもしれませんが冷やせば問題ありません。今
は冷却し続けることです」・「微量の放射線が漏れているかもしれませんが些細
な問題です。日本では通常でも大気からこれ以上の自然放射線を浴びていますし
日本とニューヨークを飛行するとこれ以上の被曝をします。また世界にはもっと
多くの自然被曝している地域があります」。
あっそう、次は「大丈夫です。多分大丈夫だと思う。大丈夫なんじゃないかな。
ま、ちょっと覚悟をしてくれ」なんてどこかで聞いたようなセリフを吐くのだろ
うなと思っていたら案の定「上水道が汚染しましたが“直ちに”健康被害はあり
ません(“直ちに”というのは官僚の責任逃れ用語で“24時間以内”ということ
らしい)」と来た。そうこうするうちにさらに原子炉および使用済み燃料の貯蔵
用水槽(1〜4号炉の全て)も水が足らなくなって過剰に発熱していることも判明
し、たたみかけて4号機の側面が吹っ飛び、2号機のあちこちに穴があいて常に放
射能を含んだ水蒸気が立ち上り続けた。つまり3月11日〜15日までのたった4日間
で福島第一原発はボロボロで、レベル7だったチェルノブイリ状態(昭和61年4月
26日ソ連チェルノブイリ原発4号基が大爆発。原発史上最悪の爆発とされている)
になってしまっていたのだ。
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さてここで児玉龍彦教授(東大先端科学技術センター教授・東大アイソトープ
センター長)がH23年7月27日に衆議院厚生労働委員会で、国の原発事故対応に満
身の怒りをこめて行った『放射線の健康への影響』(参考人の説明)の一部を紹
介しよう。丁度政府が「直ちには健康被害への影響ははありません」と繰り返し
呪文のように同じ言葉を繰り返していた頃の真実が明らかになった。
児玉教授曰く。

3月15日に我々最初に午前9時頃、東海村(100km圏)で5μSvという線量を経
験しましてそれを第10条通報という文科省に直ちに報告しました。その後東京
(200km圏)で0.5μSvを超える線量が検出されました。これは一過性に下がり
ましたが、現在0.2μSv(筆者注:年間積算で1.6mSv線量)の高い値が続い
ています。この時は枝の長官が「さしあたって健康に問題ない」ということを
おっしゃいましたが、私は実際その時には大変なことになると思いました。
・・・(中略)・・・
東京電力と政府は、今回の福島原発の放射能の総量を発表していません。そ
こで私どもはアイソトープセンターのいろいろな知識を基に計算してみました。
すると熱量からの計算では広島型ウラン原爆の29.6個分に相当します。またウ
ラン換算では20個分のものが漏出していると考えられます。さらに恐るべきこ
とにはこれまでの知見によると。原爆による放射能残存量と原発からの放射線
の残存量は1年たって原爆が1/1000程度低下するのに、原発のからの放射線汚染
物は1/10程度にしか低下しない。つまり今回の事故で原爆数10個分に相当する
量と原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したということがまず考えられ
ます。(児玉龍彦教授は、このあと牛のエサの稲藁に大量の放射能が蓄積して
しまっていたのに政府の怠惰で、農家には全く周知されてないことを真剣に糾
弾した後で)「なぜ政府は放射線測定を全面的にやろうとしなかったのか。3
か月経ってそのようなことが全く行なわれていないこと」に満身の怒りを表明
します。
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それでもまだ『平成大本営』は嘘をつき情報を隠しつづけ「東北北関東の野菜
と魚は安全です」と発表した。しかし3月19日には茨城県のホウレン草と福島県
の牛乳(原発より30km超)に食品衛生法の規制を上回る放射線を検出。3月23日
には東京で飲料水から放射性ヨウ素が検出され、乳幼児の飲料制限が発表された。
また福島県産の葉菜の出荷制限がなされた。「レベル4程度です。想定内の事象
(事故とは言わない)です。皆様あわてないで冷静に対応して下さい」というが、
これが冷静でいられようか。
そしてついに馬脚が現れる。「汚染水がトレンチに溜まって溢れそうです」
・「先ほど“微量の”放射線(何が微量だ。合計1500億ベクレルもあった)を含
む汚染水を海へ投棄しました」。「レベル5です。スリーマイル島原発事故より
も軽い事象(事故とは言わない)です。無論チェルノブイリのようにはなりませ
ん」などなど・・・。全くよく言うよと言いたい。
かくのごとく原発の事故は最初から深刻であったが、『平成大本営』は嘘をつ
き真実を隠し続けて来た。3月24日には原発3号機内で作業していた3人がβ線に
被曝して皮膚をやけどをした。(プルトニウムはどこにいったんだろう。確か3
号機はMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合燃料)を使っていたはずだが)。3月
25日には朝日新聞はこの事故をレベル6(大事故)と判断して報道した。そして
ついに3月27日、福島第一原発2号機のタービン建屋の地下一階の深さ約1mの水た
まりから1000mSv(ミリシーベルト)を超える(針が振りきれてそれ以上測定で
きなかった)放射線量を検出。その水は1cc当たり通常の10万倍の2900万ベクレ
ルの放射能を示した。その近くの海水のヨウ素131の濃度は通常の1850倍であっ
た。さらに平成23年4月12日まで(原発大事故の1か月中)に排出・拡散した放射
線量はチェルノブイリ大惨事に匹適し、1時間あたり最大で1万テラベクレル(1
テラ=1兆)の放射性物質を放出していたと発表(合計36〜67京ベクレルの放出)
。国際原子力機関はレベル7に相当する大事故であることを示唆した。
ついに真実の一部は結局露呈したようだ。「これから事故処理に数10年〜100
年かかるでしょう」・「溶融した燃料 核物質が圧力容器の底に溜まっているよ
うです」。しかし「原発退避区域は10-20年住めないでしょう」と真実をつい言
ってしまった内閣参与が解雇された。こうしてみるとまだまだ『平成大本営』発
表は相変わらず続くのだろう。
このエッセイを執筆している間に(H23年7月25日頃)、とうとう全国牛肉の牛
肉から基準値を超える放射性セシウムが検出されたという。原因はセシウムが降
り積もった藁を牛の餌として知らず知らず与えていたらしい。これも全て嘘つき
政府・隠匿政府という破廉恥な体質が招いた人災だろう。

2. 原発大事故にどのように対処するか
今私たちは原発大事故に対して政府の対応が全くアテにならないことを知った。
それならばどうすればいいのか。以下は原発大事故をシミュレーションすること
で政府をアテにせずに自ら考えて行動する糧としたい。
なおこの項はその多くの記述や知見を高木仁三郎と渡辺美紀子氏の共著『食卓
にあがった放射能』(七つ森書館)から引用した。
ある日、日本のA原発でチェルノブイリ級(レベル7)のメルトダウン事故が発
生したとしよう。飛散した放射能は風速が4m/秒とすると7時間もあれば100kmを走
る。上空はもっと速いからいっそう短時間で放射能は届く。(チェルノブイリで
は1500km離れたスカンジナビアに届くのにわずか2.5日ほどしかかからなかった)。
さて事故原発から100km離れて住んでいるKさんを放射能雲が襲ってきた。この
雲には大量の希ガスや放射性ヨウ素ををはじめ殆どの放射性核種が含まれており、
事故からたかだか10時間しか経っていないから短寿命の放射線(半減期:ヨウ素
131:8日・ネプツニウム239:2.4日など)も多く含まれている。被曝はまず放射能
雲による直接の照射から始まる。100km離れたKさんの団地では、建物の遮蔽効果
を勘案しても、おそらく1mSv(1ミリシーベルト)前後の被曝となるだろう。この数
字は自然放射線の年間総量をわずか数時間で浴びるということだから、すでにい
ろいろな対策を講じなければならない線量である。気象条件によっては事態は何
倍・何十倍にもなる。何はともあれ風下を避けて逃げなければならない。このと
き交通混雑は必至でパニック状態になることは容易に想像される。
シミュレーションを続ける。仮にKさんが団地の部屋にずっと居続けたとしよ
う。屋内にいても空気の汚染に伴って呼吸を通じての体内被曝が次第に深刻にな
る。特にヨウ素131は空中に漂う微粒子(エアゾル)のかたちでやって来て、居
続ければ甲状腺の被曝だけで1000mSvを軽く越える。ヨウ素はハンカチを鼻・口に
あてて呼吸をすればある程度の遮蔽効果があるが、木綿のハンカチを8枚重ねにし
てやっと除去効果が90%程度という。ヨウ素にはヨウ化カリウムを被曝前に予め
服用すると効果があるが、通常はヨウ素剤の配置はなく、原発周辺では配置して
あっても被曝前に服用可能の状況になるかどうかは疑問である。Kさんは遠く離
れているのでヨウ素剤の備えはない。しかも他のセシウム・バリウムなどの微粒
子が吸気中に含まれていると肺の被曝も心配になる。こちらのほうも最初の数日
で200mSvに達するだろう。
さらにKさんが彼の団地に居続けたとしよう。放射能はやがて地表に降りてきて、
地表やあたり一帯の放射能汚染が進行する。ヨウ素131・132・135、テルル132、
セシウム134・136・137、バリウム140などといった放射性核種である。それによ
りまず問題になるのは地表の放射能が発するガンマ線からの外部被曝である。
  降り積もった放射能によって、Kさんのいる100km圏は次第に毎時1〜2mSv前後の
汚染地帯になってゆく。ちょうど1時間もいれば年間の線量限度に相当する線量を
受けてしまう強さだ。
そのうえに心配なのは、あたり一面の汚れのために生じる内部被曝である。さ
し当りの問題はチリ・ホコリの類である。放射能を強く含む粒子(ホット・パー
ティクル)が空気中に漂えば、吸いこんでしまうおそれが強い。ホット・パーテ
ィクルは肺に入って肺の被曝を増やす。傷口などがあるとそこから汚染が体内に
入る場合があるから要注意だ。
放射性の粒子・チリなどは衣服についたり頭髪の中に入りこんだりして被曝を
増す原因となる。こんな場合外出には帽子をかぶること、外出から帰ったらホコ
リをよく落とすこと、風呂に入り体を清潔に保つことなどが肝要だ。
以上のようなKさんをとりまく状況から結論すれば、やはり迅速避難をしなくて
は危ない。たった一日避難が遅くなっても地表汚染は続くから、できる限り早い
避難をすることでだいぶ被曝をさけられるだろう。仮にこのような条件下で100km
圏に一週間も留まっていたとすると、どのくらいの被曝になるだろうか。その一
週間の生活の仕方によっても大いに変わってくるのだが、計算の結果だけを示す
と、甲状腺被曝が3000〜4000mSv・全身被曝(主として外部被曝)が約100mSvとな
る。これはやっぱり驚くべき線量で、とくに甲状腺被曝については何らかの有効
な手をうたないと甲状腺機能低下などの障害や甲状腺癌に高い率でつながってい
くことになろう。全身線量としても一週間で自然放射線量の50〜100倍を浴びるこ
とになり、緊急避難を要するレベルだ。
しかも子供たちの被曝の問題が深刻だ。ここまでの計量では特別に子供のこと
を考えてこなかったが、甲状腺の大きさが小さい子供は呼吸量の少ないことを考
慮しても、ヨウ素の甲状腺内濃度が高くなり大人の2倍以上の線量となるだろう。
さらに地表汚染に伴う被曝も身長が低く汚れに近いところにいる子供たちの方が
大きくなる。外で遊びまわったりしてホコリを吸いこんだりすることも多いだろ
う。したがって子供の場合少なくとも大人の2倍を見こんでおかなくてはなるま
い。とりあえずの結論であるが、100km圏は本格的な原発事故の場合、至近距離で
あると考えて対処する必要がある。遠い存在と思えた原発は急に身近な存在にな
るのだ。そうだとすれば平時からきちんと事故対策を考えておかねばならない。
(それだけでなく原発そのものの存在の是非についても本気で考えなくてはなら
ない)。
以上原発の大事故の急性期(1週間程度)についてシミュレーションしたが、
危険な事態はさらに続く。
続いての心配の種は飲料水の汚染である。雨水の放射能汚染が河川を通して上
水道を汚染する。普通の浄水場ではヨウ素の汚染は半分程しか除去できない。そ
の他のセシウム(生殖腺に蓄積して不妊・ホルモン障害・赤ちゃんの重度障害を
引き起こす)やストロンチウム(骨に蓄積して白血病などの原因になる)のよう
な金属イオンとして水に溶けている放射能はいっそう除去しにくい。チェルノブ
イリの経験ではセシウムは地表下数センチの地層吸着が強く、意外に雨水--->河
川--->水道水の汚染が少なかった。しかし地層の構造・地下水(水系)の位置と
流れは様々に違い、特にヨウ素汚染には十分注意しておく必要がある。
次は食品汚染について。まずは原発直後から始まる風下のヨウ素とセシウム汚
染だ。ヨウ素やセシウムは空中から降ってきて葉っぱの上に積もる。葉物野菜や
牧草の汚染は最も直接的で素早い。風下の100km地点だとヨウ素は1平方メートル
あたり1億ベクレルを優に超え、セシウムは約500万ベクレルとされている。これ
は火山灰が降り積もるイメージだ。牧草の汚染があるので牛乳や乳製品汚染もす
ぐにはじまる(これは今回の福島原発事故でも既に経験しているのでわかり易い
)。葉物野菜や牛乳などのヨウ素やセシウム汚染(セシウムは半減期が長く牛肉
汚染も問題となる)の絶対的な対策は何もなく、洗えば大丈夫という明確な根拠
もなく、食べない・飲まないのが最善の防御手段だ。また政府発表の「毎日○○
kgを食べ続けない限り健康に影響のないレベルだ」という言説は信用しないほう
がいい。放射線には一切被曝してはならないというのが原則である。さらに厳密
にいえば放射性テルル・バリウム・ストロンチウム・プルトニウム(肺癌の原因)
・ルテニウム・ウラン・クリプトン・コバルト(肝臓癌の原因)などの汚染も問
題にしなければならないがこれらの安全基準値ははっきりせず短期・長期的な人
体への影響も諸説あって(御用学者の中には無害であることを主張するものもい
るし、むしろ微量なら人体に良いとさえ言い切る者もいる)詳述できない。もち
ろん一切被曝してはならないというのが原則であることに変わりはない。

3. 最低限の備え・井原市民(出部町民)はどうすればいいのか
緊急時の備えとして福井県の「小浜市民の会」では次のような準備を呼びかけ
ている。大いに参考になるはずだ。(1)ポリバケツ・水筒・保存食(汚染前の水と
食糧の確保)、(2)雨合羽(ビニール製・帽子付き)、ビニールシート(顔面を覆
う)、(3)ガーゼマスク、(4)ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)、(5)小さな懐中電灯、
(6)小型トランジスタラジオ、(7)できれば放射能検出器。これにつけ加えるとす
れば、何よりも迅速な避難と体や衣服の汚れ(加えて車の汚れなど)を極力落と
すことが大切だと思う。
余計なことだが「井原はどの程度ヤバイか」という質問に筆者なりに考えて
みる。まず愛媛県の伊方原発が大チョンボしたら井原市民は手も足もでないだろ
う。MOX燃料を使ってるからウラン・プルトニウム・放射性ヨウ素・放射性セシ
ウムをはじめ放射性核種の全てがあっと言う間に襲ってくる。逃げようたって逃
げるところは風上の外国へ高飛びすることのみ。しかしこの選択肢は現実的には
無い。元凶が近すぎるし風向きはぴったりだし、逃げる前・高飛び前に大方の被
曝は済んでしまっているはずだ。パニックになるより運を天に任せて家の中でマ
スクしてビニールシートをかぶってじっと引きこもっているのが一番いいかもし
れないと思う(クーラーは使えないから夏場はちょっときつい)。もちろん仕事
はお休み、学校は休校にする。買い物もダメ。そのために備えていろんな缶詰や
保存食や水を買い占めておくことだ。当然ではあるが第一番に守るべきは子ども
たちと30歳以下の青年たちだ。
あと井原近辺の原発は佐賀県の玄海・熊本の川内・島根原発がある。全て同じ
ような状況で風向き次第だろう。つまりヤバイことに何の変わりもない。さらな
る要注意は福井県の若狭湾原発銀座だ。ここの高速増殖炉「もんじゅ」が逝った
ら、多分日本中がオシマイになるだろう。日本は旧与党と経済産業省(旧通産省)
と財界(特に電力業界・マスコミ・電通をはじめとする広告宣伝業界)と御用学
者(信念を曲げて権力に迎合して利を追求するエセ学者)というオッチョコチョ
イどもの原発利権のお陰で滅亡の危機に瀕しているのだ。

4. おわりにあたって
福島第一原発は壊滅したがまだ第二原発もある。また国内には54基の原発があ
って通常33基程度が四六時中稼働している。いつ地震や津波に襲われるかもしれ
ないのに。しかも原発にはまだまだ大きな問題が残っている。甘蔗珠恵子氏は著
書『まだ、まにあうのなら』に、以下のように書いている(36〜37ページ)。

原子力発電というものは、もし幸いにも、大事故を起こさなかった場合でも、
なお重要な問題が残されているのです。
原子炉を動かすと必ず出てくるのが、放射性廃棄物(核のゴミといわれてい
るものです)。
原子力発電所1基が1年間動くと、死の灰が1t、プルトニウムが250kgたまり
ます。これは広島型原爆の1000倍の死の灰と、長崎型原爆の50発分のプルトニ
ウムです(プルトニウムは原水爆の材料となるもので、猛毒をもった放射性物
質)。
原子力発電所の中で働く人の作業着、手袋、スリッパ、ねじまわしのような
道具類、部品、蛍光灯のカケラ等々、そんなものすべて放射能に汚染されてい
ますので、すべてドラム缶に詰めるのです。作業者のふき取った死の灰、服に
ついた死の灰は水で洗い流し、フィルターで死の灰を”一定量”だけ除き、そ
のまま海へ捨てるのです。まだ放射能が残っている水を常時海に流しているの
です。
発電所の中では、当然のことながら、空気中にも死の灰が飛び散っているの
で、この空気も、フィルターで”一定量”の死の灰だけとり除いてから、毎日
エントツから外に出ます。どの原発のエントツからも放射能が出ているわけで
す。付近の住民は知っているのでしょうか。
このフィルターもまたドラム缶に詰められ、発電所の敷地内に山積みされて
います。
このドラム缶が原子炉1基につき、少なくとも一年間500〜600本たまります。

この他にも原発は事故を起こさなくても難題山積である。これらドラム缶(核
のゴミ)の貯蔵の問題・老朽化原子炉(巨大な高濃度放射性物質に匹敵)の廃炉
の問題・核燃料再処理工場の問題(燃料として使えるウランとプルトニウムを分
離したあとのストロンチウム90などの高濃度放射性物質である死の灰の処分をど
うするか。さらに再処理工場からは膨大な放射能がエントツから排出されている)
・放射性廃棄物埋設施設の問題(地震に対する安全性も将来への影響も何も全然
わかってない)などであり、その大きな問題のなかにさらに様々な危険と困難が
包含されているのだ。
だから筆者は「日本のような大地震国には原発は1基さえ要らない。電力は
他の手段で十分にまかなえるし、原発利権なぞ潰してしまわなければならない。
それに日本中のもともとが贅沢すぎるんだ」と常々思っているが読者の皆様はど
う判断されるだろうか。

             ・伊方原発事故のシミュレーション
             ・島根原発事故のシミュレーション
             ・高速増殖炉もんじゅ事故のシミュレーション
平成23年7月30日 鳥越恵治郎